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【診療科別】実際の医療現場におけるAI活用事例
AIは、さまざまな医療の現場で活用されています。ここからはAIを活用した5つの例を解説します。
放射線科:胸部CT・X線写真における肺結節の検出AI
胸部のCT画像・X線写真から肺結節を見つけることは、画像診断AIの研究や開発が進んでいる分野のひとつです。肺結節の中には、肺がんが隠れている場合があり、肺がん検診などでの利用が見込まれています。これまでに、以下の結果が得られています。
・CT画像を対象とした肺結節検出の検出感度は61.61%~98.10%、症例あたりの偽陽性の個数は0.125~32
・胸部X線写真を対象とした肺結節検出の検出感度は67.3%
・放射線科医12名がAIを使用した場合、平均の検出感度は5.2%上昇し、1枚あたりの偽陽性数は0.02減少
眼科:AI搭載眼底カメラによるスクリーニング
眼科は、AIを活用しやすい診療科です。糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症の患者の眼を眼底カメラで確認し、NPA(無潅流領域)の範囲を知ることは、重症度の判定や新生血管の発症リスクを知るうえで重要です。しかし造影剤を使う必要があるため手間を要するほか、アレルギーのリスクもあります。
この課題を克服する目的で、AIを活用してNPAを推定する研究が行われ、以下の成果を得ました。
・虚血性眼疾患80例のうち、74眼についてNPAの面積を正しく推定できた
・10視神経乳頭サイズ分のNPAの感度は83.3~87.0%、特異度79.3%~85.7%
・30視神経乳頭サイズ分のNPAの感度・特異度は、ともに80%を超えた
AIの活用により、造影剤を使わずに済むことをメリットと感じる方も多いでしょう。
循環器内科:AIを用いた心電図解析ソフトウェアによる不整脈検出支援
AIは循環器内科でも活用されています。A病院ではパッチ型ホルター心電計で取得した心電図の波形100例について、AIを用いた「長時間心電図解析ソフトウェア」を用いて解析する研究を行いました。非弁膜症性心房細動(AF)のスクリーニングは、主な目的の一つです。
解析により、以下の結果が得られました。
・AFの検出感度は100%、特異度は68.9%
・24時間以内に50%がAFの診断に至る。6日目までにほぼ前例(96%)がAFと診断できる
AFの偽陽性が23例とやや多いものの、AFの見落としはありませんでした。
泌尿器科:AIによる膀胱内視鏡診断支援
AIは、泌尿器科の分野でも活用されています。膀胱内視鏡の画像からAIを用いて診断を支援することは、代表的な例の一つです。
国立研究開発法人産業技術総合研究所は、2024年7月12日に、膀胱内視鏡診断支援AIを開発したことを公表しました。感度は94.3%、特異度は99.4%、正解率は98.3%です。いずれも、泌尿器科勤務経験5年以上の専門医8名による平均値を上回りました。
膀胱内視鏡診断支援AIは、泌尿器科専門医による診断の力強い味方となるでしょう。
消化器内科:大腸AI内視鏡によるポリープ検出支援
胃カメラや大腸カメラで得た画像の解析も、AIが用いられる用途の一つです。ポリープなど病変の発見が主な目的です。
Bクリニックでは2020年に、大腸AI内視鏡によるポリープ検出の後ろ向き研究を行いました。腺腫検出率はAIを用いた50人で56%、AIを用いない50人で48%となりました。有意差は確認できなかったものの、AIの活用による検出率の上昇が示唆されました。