医師の診断をサポート!AI医療の最新技術と活用事例をわかりやすく解説

本記事は2025/09/16に更新しております。
医師の診断をサポート!AI医療の最新技術と活用事例をわかりやすく解説
AIは医師の診断をサポートするなど、医療分野でも様々な用途で活用されています。AIの優れた技術を活用することで、より良い医療の提供を実現できます。

一方で、AIは、医師にとって代わるものではありません。良質な医療を提供し続けるためには、AIを医療に活用するメリット、デメリットを把握したうえで、AIを活用する相乗効果を狙うことが重要です。

本記事では、AIの最新技術と活用事例、メリットとデメリットを解説します。

01

AI医療とは? ~医師の新たな「目」や「耳」となる技術~

AI医療は、AIを活用して、医療の質を向上させる技術です。特に、以下に挙げるAIの強みを活かして「診断支援」の分野において重要な役割を果たしつつあります。

【AIの強み】
・単純で繰り返しの作業が得意
・数万や数十万件といった膨大なデータから、人間では見つけにくいパターンや兆候を検出可能

近年では、画像や音声データにおいても、AIを活用できます。

AIは、それ自身で病気を診断することはできません。しかし、医師が下す診断の精度を高め、短時間で適切な判断を行える、高度な支援ツールとして活用されています。医師の新たな「目」や「耳」となる技術といえるでしょう。

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02

なぜAIは診断を支援できるのか? ~機械学習・深層学習の仕組み~

診断支援AIは、なぜ画像やデータから病変を見つけたり、リスクを予測したりできるのでしょうか?これはAIの根幹的な技術である、ディープラーニング(深層学習)の仕組みによって実現できます。

ディープラーニングは、人間が学習する仕組みを模したものです。以下の表で示す点のようなものを「ノード」と呼び、人間の脳における神経細胞(ニューロン)に相当します。入力された情報により、どのような経路をたどるか変わる仕組みです。

ディープラーニングは、学習データからコンピューターが着目する項目(特徴量)を見つけ出し、パターンやルールの発見につなげます。新たな文字や画像、音声が提示されると、コンピューターは、どのグループに属するかを判別し、アウトプットを出すという仕組みです。

これにより、「ただ画像を提示しただけで、病変の有無や疑いがある箇所を提示できる」「文章や会話で得た情報をもとに、可能性の高い病名を提示できる」といった、診断支援機能を実現しています。

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03

【分野別】ここまで進んだ!AI診断支援の最新技術

ここからは実用化が進んでいる、あるいは臨床応用が期待されるAI診断支援技術を4つ紹介します。技術の概要や対応できる項目をご確認ください。

画像診断支援AI

画像診断を支援するのは、AIの代表的な活用分野です。あらかじめ正常な画像と異常な画像を学ぶ「教師あり学習」でトレーニングしたAIを用いて、CTやX線、MRIなどで撮影した画像を判別する仕組みです。AIは、以下のように、さまざまな診断を支援する目的で活用されています。

画像の種類 主な用途
レントゲン、CT、MRI 肺結節や脳動脈瘤などの検出、臓器セグメンテーション
内視鏡の画像 ポリープ、早期がんなどの検出や鑑別の支援
眼底画像 糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、緑内障などのスクリーニング支援
病理画像 がん細胞の検出や分類の支援、予後の予測

診断アルゴリズム・予測モデル

AIは、画像の活用以外にも、さまざまな診断の支援に役立っています。心電図の解析は、ひとつの例に挙げられます。疾病に特徴的な心電図をいち早く検出することで迅速な治療につなげ、患者の命を守ります。

AIは、将来どのような疾患にかかるリスクがあるかも提示できます。健康診断の結果をもとに、数年以内に生活習慣病にかかる可能性を数値で提示。生活習慣の改善によるリスクの低下も可視化できます。患者に向けて適切なアドバイスを行うことができるでしょう。

自然言語処理技術の応用

AIが備える自然言語処理技術を活用することで、音声を文章の形で「見える化」できます。人間らしい文章も作成できるでしょう。以下の項目で、診療業務の負担軽減に役立ちます。

・医師と患者の会話を認識して、電子カルテのドラフトを作成する
・AIによる問診を行う。患者の症状に応じて質問内容を変更し、診断に役立つ情報を引き出す

ゲノム医療におけるAI活用

AIは、ゲノム医療における診断や治療法、医薬品の開発でも活用されています。以下はその一例です。

・希少疾患の創薬標的分子を予測できるAIを開発し、治療法の開拓に資する
・患者の遺伝子情報と臨床情報を組み合わせ、AIを用いて解析し、最適な治療薬の選択モデルを探索する
・生成AIを活用して、がん細胞に対する活性を最大化する遺伝子配列を探索する
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04

【診療科別】実際の医療現場におけるAI活用事例

AIは、さまざまな医療の現場で活用されています。ここからはAIを活用した5つの例を解説します。

放射線科:胸部CT・X線写真における肺結節の検出AI

胸部のCT画像・X線写真から肺結節を見つけることは、画像診断AIの研究や開発が進んでいる分野のひとつです。肺結節の中には、肺がんが隠れている場合があり、肺がん検診などでの利用が見込まれています。これまでに、以下の結果が得られています。

・CT画像を対象とした肺結節検出の検出感度は61.61%~98.10%、症例あたりの偽陽性の個数は0.125~32
・胸部X線写真を対象とした肺結節検出の検出感度は67.3%
・放射線科医12名がAIを使用した場合、平均の検出感度は5.2%上昇し、1枚あたりの偽陽性数は0.02減少

眼科:AI搭載眼底カメラによるスクリーニング

眼科は、AIを活用しやすい診療科です。糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症の患者の眼を眼底カメラで確認し、NPA(無潅流領域)の範囲を知ることは、重症度の判定や新生血管の発症リスクを知るうえで重要です。しかし造影剤を使う必要があるため手間を要するほか、アレルギーのリスクもあります。

この課題を克服する目的で、AIを活用してNPAを推定する研究が行われ、以下の成果を得ました。

・虚血性眼疾患80例のうち、74眼についてNPAの面積を正しく推定できた
・10視神経乳頭サイズ分のNPAの感度は83.3~87.0%、特異度79.3%~85.7%
・30視神経乳頭サイズ分のNPAの感度・特異度は、ともに80%を超えた
AIの活用により、造影剤を使わずに済むことをメリットと感じる方も多いでしょう。

循環器内科:AIを用いた心電図解析ソフトウェアによる不整脈検出支援

AIは循環器内科でも活用されています。A病院ではパッチ型ホルター心電計で取得した心電図の波形100例について、AIを用いた「長時間心電図解析ソフトウェア」を用いて解析する研究を行いました。非弁膜症性心房細動(AF)のスクリーニングは、主な目的の一つです。

解析により、以下の結果が得られました。

・AFの検出感度は100%、特異度は68.9%
・24時間以内に50%がAFの診断に至る。6日目までにほぼ前例(96%)がAFと診断できる
AFの偽陽性が23例とやや多いものの、AFの見落としはありませんでした。

泌尿器科:AIによる膀胱内視鏡診断支援

AIは、泌尿器科の分野でも活用されています。膀胱内視鏡の画像からAIを用いて診断を支援することは、代表的な例の一つです。

国立研究開発法人産業技術総合研究所は、2024年7月12日に、膀胱内視鏡診断支援AIを開発したことを公表しました。感度は94.3%、特異度は99.4%、正解率は98.3%です。いずれも、泌尿器科勤務経験5年以上の専門医8名による平均値を上回りました。

膀胱内視鏡診断支援AIは、泌尿器科専門医による診断の力強い味方となるでしょう。

消化器内科:大腸AI内視鏡によるポリープ検出支援

胃カメラや大腸カメラで得た画像の解析も、AIが用いられる用途の一つです。ポリープなど病変の発見が主な目的です。

Bクリニックでは2020年に、大腸AI内視鏡によるポリープ検出の後ろ向き研究を行いました。腺腫検出率はAIを用いた50人で56%、AIを用いない50人で48%となりました。有意差は確認できなかったものの、AIの活用による検出率の上昇が示唆されました。

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05

AI診断支援導入のメリットと、医師が留意すべき点

ここまで解説したとおり、AIによる診断支援は医療の現場で役立つレベルに到達しています。一方で、AIのメリットを最大限に引き出すためには、留意しておきたいポイントがあります。ここからはAIを診断の支援に導入するメリットと、導入にあたり留意すべき点を解説します。

AI診断支援導入のメリット

医療機関がAI診断支援を導入することで、以下のメリットを得られます。

・診断精度の向上と見逃しリスクの低減
・診断や読影、カルテに記入する時間の短縮と業務負担の軽減
・適切な診断と治療を行えることによる、早期治療と患者の満足度向上、増患の実現
・医療の均てん化への貢献
・教育やトレーニングツールとしての活用

AI診断支援の導入がもたらすメリットは、医療従事者の負担軽減にとどまりません。

患者の満足度向上、医療機関の増患による収益率の向上、地方でも高水準の医療を受けられる、効率的かつ効果的な教育の実現など、様々な方面にメリットをもたらします。

AI診断支援の活用において留意すべき点

医療機関がAI診断支援を活用する場合、最終的な診断を下せるのは医師のみです。そもそもAIが導き出す結果までのプロセスはブラックボックスなため、明確な根拠をAI自身が説明できない場合もあります。またAIを用いたシステムのなかには、学習させたデータが偏っている場合もあります。

すべてのケースにおいて、AIが適切な判断を出せるとは限りません。

このようなAIの限界を把握したうえで、診断のアドバイザーとして用いることがおすすめです。
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06

AIと医師の協働による未来の医療

AIの技術はこれからもますます進化します。医療分野でもより正確に、そしてより幅広い業務で活用されるでしょう。「いつかは医師の仕事がなくなるのではないか?」と思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。本記事のテーマとなっている「診断支援」に限った場合でも、以下のように医師ならではの業務は残ります。

・医師自身、また学会で共有された知識や経験を踏まえた診断
・患者の体質やライフスタイルを考慮した、治療方針の決定
・患者自身の納得を得られる、ていねいな説明
・未知の状況に直面した際の適切な対応
・より良い診断や治療方法の探究

AIによる診断だけで、高い満足度は得られません。医師が対面でていねいに患者に説明することこそ、満足度の高い医療を提供するポイントです。この点で、医師の果たす役割は大きなものがあります。

AIは「間違いを減らす」アドバイザーと考え、最終的には医師の判断で診断することが重要となります。

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07

まとめ

AIは、診断を助ける情報を提供する点で強い味方ですが、情報を得るひとつの手段に過ぎません。「見逃しをなくす」「適切な問診など、必要な情報を効率的に得る」目的で活用していくべきでしょう。
AIを上手に活用することで業務の負担を減らしながら、患者の満足度も向上できます。
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08

Slopebaseとは

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支出管理を支援する、
支出管理クラウド

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※バックオフィス業務とは経理や総務、人事、法務、財務などといった直接顧客と対峙することの無い社内向け業務全般を行う職種や業務のこと

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この記事を書いた人

稗田恵一 
大学ではAIの基盤となるニューラルネットワークについて学び、その後、IT業界14年、設備管理業務2年の経験を有する。うち10年間は会計・人事・給与業務のパッケージ企業において、企業向けのカスタマーサポートやシステム提案業務、自社のシステム管理業務に携わる。2017年より執筆業務を始め、BtoBの分野を中心に多数執筆。記事のわかりやすさには定評がある。 
田中雅人(ITコンサルタント
監修
田中雅人(ITコンサルタント

ソフトウェアメーカー取締役、IT上場企業の取締役を経て、現在、合同会社アンプラグド代表。これまでに、Webサイト制作、大規模システム開発、ECサイト構築、SEM、CRM、等のWebマーケティングなど、IT戦略全般のコンサルティングを30年以上実施。現在は、大手上場企業から中小企業まで、IT全般のコンサルティングを行っているかたわらWebマーケティングに関するeラーニングの講師、コラム執筆なども実施。

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