法令改正にも対応!正しい固定資産台帳の作成・管理方法を徹底解説

本記事は2025/09/16に更新しております。
法令改正にも対応!正しい固定資産台帳の作成・管理方法を徹底解説
固定資産台帳は、企業が保有する固定資産の情報を一覧にし、減価償却の状況などを管理する帳簿です。資産の実態把握に欠かせず、税務申告の際にも必要となります。 本記事では、固定資産台帳の基本から、作成・管理のポイントをわかりやすく解説します。

01

固定資産台帳とは? - なぜ経理にとって「超」重要なのか?

固定資産台帳は、建物や設備など事業で使用する減価償却資産ごとに取得価額や償却状況を記録・管理する帳簿で、固定資産税の申告や財務諸表の作成にも欠かせません。
法人税法や地方税法などで作成・保存が義務付けられている帳簿書類に位置付けられ、不備があると税額の計算に影響が出るため、追徴課税や粉飾決算の疑義などにつながる恐れがあります。

導入に関するお問合せ 資料請求

02

これだけは押さえる!固定資産台帳の必須記載項目【完全ガイド】

実は、固定資産台帳には明確な記載ルールがありません。
ここでは、税務申告や会計処理を正しく行うために一般的に必要とされる記載項目を紹介します。

資産の基本情報

まず、資産の基本情報として以下の項目を記録しましょう。

・資産の管理番号
・資産の名称
・取得年月日
・取得価額(付随費用含む)
・設置場所
・管理部門 など
一つひとつに管理番号を割り振っておくと、PCやキャビネットなど同一種類の資産が複数ある場合でも処分や移動について正しく追跡しやすくなります。

減価償却に関する情報

次に、減価償却に関する項目は以下のとおりです。

・事業供用開始日
・耐用年数
・償却方法(定額法/定率法など)
・償却率
・期首帳簿価額
・当期減価償却費
・減価償却累計額
・期末帳簿価額 など
減価償却費は費用として計上し、決算書の内容や税金の計算にも大きく影響するため、これらはいずれも重要な項目といえます。

異動に関する情報

続いて、資産の移動や処分に関する以下のような情報も記載します。

・除却年月日
・売却年月日
・売却価額
・移動履歴 など

その他の情報

そのほか、固定資産台帳には以下の項目も記載するとよいでしょう。

・勘定科目・補助科目
・保険情報
・修繕履歴 など
とくに資産の修繕は内容によって会計処理が変わってくるため、記録を残しておくことをおすすめします。
導入に関するお問合せ 資料請求

03

【ステップ解説】ゼロから始める!正確な固定資産台帳の作成手順

ここからは固定資産台帳を新規作成する手順を紹介します。既存台帳を根本的に見直す際も、こちらの手順で進めましょう。

Step1:対象となる「固定資産」をすべて洗い出す

まずは、社内にある固定資産をもれなく洗い出します。
固定資産とは、一般的には「使用可能期間1年以上かつ取得価額10万円以上」の機械や備品などを指します。土地・建物・車両・備品など有形資産だけでなく、ソフトウエアといった無形資産も対象です。

Step2:正しい「取得価額」を算定する

固定資産の取得価額は、購入代金だけでなく運送費や設置費などの付随費用も含めて算定します。
また、取得価額に消費税を含めるか否かについては、事業者の経理方法により、税込経理なら含める、税抜経理では含めないこととなります。

適切な「耐用年数」を決定する

固定資産の耐用年数は国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」を参考にします。 なお、中古資産については残りの使用可能期間を見積もって耐用年数としますが、見積もりが難しい場合には以下の式で算定しましょう。

1 法定耐用年数の全部を経過した資産

その法定耐用年数の20パーセントに相当する年数

2 法定耐用年数の一部を経過した資産

その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20パーセントに相当する年数を加えた年数

Step4:「償却方法」を選択し、償却額を計算する

償却方法は主に定額法と定率法の2種類があります。

・定額法:毎年一定額を減価償却費として費用に計上
・定率法:毎年一定の割合で減価償却。減価償却費は初年度が最も高く、その後低減していく

また、取得価額が10万円未満かつ使用可能期間が1年未満の資産は経費(消耗品費)として処理します。
そのほか取得価額が10万円以上20万円未満の資産なら、耐用年数に関係なく3年で償却する方法も採用できます。

Step5:決定した情報を「台帳」に正確に記帳する

Step4までに決定した情報を、Excelや会計ソフトなど台帳として使うツールにもれなく入力していきましょう。管理番号をラベルにして各資産に貼っておくと、台帳と現物の照合や棚卸しがスムーズになります。

導入に関するお問合せ 資料請求

04

【法改正・実務対応】固定資産台帳管理の最新トピック

さて、ここからは固定資産台帳の管理にも影響を与える近年の法改正や制度変更などを紹介します。対応のポイントを押さえておきましょう。

電子帳簿保存法への対応:台帳の電子保存は可能?

固定資産台帳も電子帳簿保存法の対象で、モニター・説明書等の備付けやダウンロードへの応諾といった要件を満たせば電子保存が可能です。

ただしスキャナ保存は対象外です。台帳を最初から紙で作成した場合は、紙のまま保存しても構いません。

インボイス制度開始後の取得価額算定

インボイス制度の経過措置期間中(~2026年9月)に免税事業者から機械や備品を購入した場合、消費税額の80%相当額について仕入税額控除を適用できます。

一方、残りの20%については、資産の取得価格に算入することになります(税抜経理の場合)。

中小企業向けの税制優遇措置と台帳

中小企業投資促進税制や経営強化税制を利用するには、期日までに資産を「取得」するだけでなく「指定事業の用に供すること」が要件です。

固定資産台帳には事業の用に供した日を必ず記録し、後から確認できるようにしておきましょう。

リース会計基準の変更(上場企業など)

2027年度から新リース会計基準が適用となり、該当企業は資産計上することとなるリース資産の範囲が拡大します。

リース物品については「リース管理台帳」を設け、固定資産台帳とは別で管理するほうが安心といえるでしょう。
導入に関するお問合せ 資料請求

05

固定資産台帳を「正しく」「効率的に」管理し続ける方法

固定資産台帳は作成して終わりではなく、常に最新かつ正確な状態の維持が重要です。ここでは、台帳を適切に管理するポイントを紹介します。

Excel(スプレッドシート)管理のコツと限界

Excelでも関数や入力規則の活用により、計算の効率化やミスの防止を期待できます。ただし、資産の増加とともにシートの管理も煩雑になりがちです。

また関数や入力規則を多用すると属人化リスクや数式破損の見逃しリスクが高まる点には注意が必要です。

会計ソフトの固定資産管理機能をフル活用する

多くの会計ソフトには減価償却費を自動計算し、仕訳まで連動させる便利な機能が備わっており、固定資産税の申告書作成もよりスムーズになるでしょう。

資産の異動も比較的容易に処理でき、最新の情報を保ちやすいといえます。

固定資産管理システムの導入検討

資産数が多い企業や、バーコード等を使った現物管理との連携、複雑なリース資産の管理が必要な場合は、固定資産管理に特化したシステムの導入が効果的です。 会計ソフトでは対応しきれない現物管理や棚卸しの効率化を期待できます。

ただし、会計や税務関連の機能については、基本的には会計システム等との連携が必要です。

定期的な「現物確認(棚卸し)」との連携を徹底する

固定資産台帳の記載情報と実際の資産が一致しているか、最低でも年に1回は棚卸しをして確認しましょう。

台帳を棚卸しリストとして使用し、棚卸しの結果をまた台帳へ反映するサイクルを確立すると、帳簿や税務申告の正確性を保ちやすくなります。
導入に関するお問合せ 資料請求

06

固定資産台帳に関する「よくある疑問」を解決!Q&A

ここでは、とくに中小企業の経理担当者が抱きがちな疑問にQ&A形式でお答えします。台帳を適切に運営する参考としてください。

Q1:10万円未満の備品はどう管理すればいい?

取得価額が10万円未満の備品は、減価償却ではなく、購入した年度に全額を経費(損金)として処理します。固定資産台帳には原則記載不要ですが、社内管理上は一覧表などで記録しておくと安心です。

Q2:中古で買った資産の耐用年数は?

先述のとおり、中古資産については残りの使用可能期間を見積もって耐用年数としますが、見積もりが難しい場合には以下の「簡便法」にて算定します。

1 法定耐用年数の全部を経過した資産
その法定耐用年数の20パーセントに相当する年数
2 法定耐用年数の一部を経過した資産
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20パーセントに相当する年数を加えた年数

Q3:ソフトウエアのバージョンアップ費用は資産計上する?

バージョンアップによって新機能の追加や性能の向上があった場合、バージョンアップ費用は固定資産の取得価額に加算します。
一方、バージョンアップが障害の除去や現状維持にとどまる内容なら、修繕費として当期の経費に計上しましょう。

Q4:除却・売却した資産は台帳から消してもいい?

除却や売却にともなう会計処理を適切に行ったうえ、固定資産台帳で該当資産を除売却済みのステータスにしましょう。このとき、処分の事実と日付がわかる記録(書類など)を残しておくと、損金経理の根拠として安心です。

Q5:償却が終わった資産はどうする?

耐用年数を過ぎて減価償却が終わった資産は、帳簿上の価値がなくなっただけであり、引き続き使用しても問題ありません。ただし、台帳から削除はせず、適切な管理を継続しましょう。また修繕費や維持費は今後も経費として処理できます。

導入に関するお問合せ 資料請求

07

まとめ

固定資産台帳は、事業で使用する資産の状況を把握し、会計・税務処理を正確に行ううえで欠かせない帳簿です。各資産の取得価額や耐用年数といった情報に加え、棚卸しや異動履歴の反映も重要です。
会計ソフトや専用システムなど、資産数や必要な機能に応じたツールを選定し、台帳と実物の資産の適切な管理を継続できる環境を整えましょう。
導入に関するお問合せ 資料請求

08

Slopebaseとは

バックオフィス業務の
支出管理を支援する、
支出管理クラウド

Slopebase スロープベース

※バックオフィス業務とは経理や総務、人事、法務、財務などといった直接顧客と対峙することの無い社内向け業務全般を行う職種や業務のこと

導入に関するお問合せ 資料請求

この記事を書いた人

紗冬えいみ
金融ライター・Webマーケター。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP保有。証券会社、公認会計士・税理士事務所での実務経験を持ち、個人の資産形成や、法人・個人の記帳代行、決算書や申告書の作成補助に携わる。ライター転身後は知識と経験を活かして投資・資産形成や経理の基礎に関する記事を多く執筆。紙媒体も含めて年間200記事以上を手がける。
梶本卓哉(公認会計士、税理士)
監修
梶本卓哉(公認会計士、税理士)

早稲田大学卒業後、関東信越国税局採用。税務大学校を首席卒業(金時計)し、税務署法人課税部門にて法人税、消費税等の税務調査に従事。複雑困難事案の事績により署長顕彰。大手監査法人に転職後、製造業や不動産業をはじめ様々な業種の上場会社監査やIPO監査に従事。その後、中央官庁勤務を経て大手証券会社の引受審査部・公開引受部にてIPO業務に従事。現在は主に法人の税務顧問を務めており、スタートアップ支援に強みを有する。

人気記事

カテゴリ