急な資金不足を防ぐ!運転資金の基礎知識と確保のためのアクションプラン

本記事は2025/09/24に更新しております。
急な資金不足を防ぐ!運転資金の基礎知識と確保のためのアクションプラン
運転資金管理は、中小企業が事業活動を継続するためのカギです。決算書で利益が出ていても、資金繰りが悪化すれば「黒字倒産」に陥ることもあります。この記事では、運転資金の基礎から具体的な計算方法、不足する原因をみていきましょう。資金不足に冷静に対処するためのアクションプランまでしっかりと紹介するため、しっかりと理解して、万一の場合に備えましょう。

01

そもそも運転資金とは?会社の血液を正しく理解する

運転資金とは、会社が日々事業を維持するために必要なお金です。会社を運営するためには、商品・材料の仕入に加えて、オフィスや店舗の家賃、従業員への給与、水道光熱費などもかかります。こうした費用を賄うのが運転資金です。

運転資金の定義:事業を日々回していくために必要な「つなぎ資金」

運転資金は、事業を継続するための「つなぎ資金」と言い換えることもできます。

事業活動では、まずは仕入をしなければなりません。売上に先行して費用がかかる点がポイントです。仕入れた商品が販売されるまでは、お金になりません。商品を販売しても、入金はその場ではなく後日であることが一般的です。販売して数か月後の入金となる場合も少なくありません。

このように、仕入から売上の回収までには時間がかかります。しかし、その間にも会社は存続しなければなりません。

この期間を食いつなぐために不可欠なものが、十分な運転資金です。

運転資金が必要になる具体的なタイミングと項目

運転資金で賄う費用には、次のものが挙げられます。

・材料・商品仕入費用
・製造・加工費用
・給与・人件費
・広告宣伝費
・家賃
・水道光熱費 など

利益を出すためには、まず支出が必要です。売掛金が多くあるといっても、入金のタイミングによっては、それを仕入の支払いに充てられない場合も多くあります。

つまり、売上が入金されなくても、会社を維持できるだけの運転資金を確保する必要があるのです。

運転資金の主な種類:平常時と増加時

運転資金は、次の3つに分類できます。

・経常運転資金
・増加運転資金
・季節運転資金

経常運転資金とは、常に必要な運転資金です。季節や業績を問わず必要な資金で、一般的に「運転資金」と呼ばれているものが該当します。

増加運転資金とは、売上の増加や事業の拡大に伴ってかかる運転資金です。商品を多く売るために仕入費用を増やす、製造にかかる外注費を増やす、という場合に必要な資金が該当します。

季節運転資金とは、毎年特定の時期に必要となる運転資金です。冷暖房器具や熱中症対策の作業着など、季節的な要因で必要となるものが該当します。

夏や冬の賞与も、季節運転資金に含まれます。

運転資金と設備資金の決定的な違い

会社の運営で必要な資金には、運転資金のほかに「設備資金」もあります。

運転資金は、日々の事業運営のために短期的に使う資金です。一方、設備資金は長期にわたって使うものを購入するための資金です。設備資金の具体的な使い道には次のものがあります。

・機械装置
・設備
・土地
・建物
・車両
・システム
・Webサイト など

金融機関による融資でも、運転資金と設備資金は別扱いです。設備資金を運転資金に流用してはなりません。

こうしたことから、運転資金と設備資金を混同しないようにしましょう。

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02

自社に必要な運転資金額はいくら?把握するための2つの計算方法

十分な運転資金を確保するためには、自社に必要な運転資金の額を知る必要があります。以下では、必要な運転資金額を考える2つの方法を紹介します。

計算方法1:在高方式 - 貸借対照表から計算する

在高方式における運転資金は、次の計算式で求められます。

必要運転資金 = 売上債権+ 棚卸資産 - 仕入債務

売上債権とは、売り上げてはいるもののまだ入金されていない、売掛金や受取手形などです。貸借対照表の左側の「資産の部」に記載されています。

棚卸資産とは在庫のことで、商品のほか材料・仕掛品・半製品なども含みます。貸借対照表の「資産の部」にて確認しましょう。

仕入債務とは、仕入れているもののまだ支払っていない、買掛金や支払手形などが該当します。貸借対照表の右側の「負債の部」に記載されています。

この方法では、「将来的に入金される予定の金額」と「近い将来出ていく予定の金額」の差を求めます。売上債権の金額がすべて入金されたとしたら、仕入債務を除いた分は給与や家賃など、会社の維持に使えるはずです。

こうした考え方から、ある時点における運転資金をざっくりと計算できます。

計算方法2:一般的な考え方に状況を加味して計算 - より柔軟に見積もる

運転資金について「何か月分の月商が必要か」と考える方法もあります。

一般的には、運転資金は月商の3~6か月分が必要といわれています。しかし、適切な運転資金の額は業種やビジネスモデルによって異なります。

例えば飲食店は、材料を仕入れてから顧客に提供するまでのスパンが短い業種です。仕入から売上回収までのタイムラグが少なく、回収した売上を次の仕入に使いやすいため、つなぎの資金が少なくても経営しやすいでしょう。

しかし不動産業や建築業の場合は、売上自体は高額になりやすいものの、仕入計上から入金までの期間は長くなりがちです。土地の仕入や材料費も高額になりやすいため、運転資金を多めに確保しておく必要があります。

変動費と固定費の割合によっても、必要な運転資金の額は変わります。変動費は売上に伴って変動する費用、固定費は売上に関係なくかかる費用です。運転資金に影響を与えやすい固定費には家賃があります。オフィスの家賃が高い、複数の店舗物件を借りているという場合は固定費もより多くかかるため、運転資金も多く必要です。

逆に、家賃のかからない持ち家を自宅兼事務所としている場合は、物件を借りている場合よりも少ない運転資金での経営ができます。

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03

適正な運転資金額を見極める際の注意点

必要な運転資金は、業種や成長フェーズ、取引サイトなどによって変わります。季節や時期が影響を及ぼす場合もあるでしょう。会社の業績が変動することで、必要な運転資金も変わります。

一度求めた運転資金額を定期的に見直したり、実際にかかった運転資金と比較したりすることで、より実態に近い運転資金額を把握できるでしょう。

紹介した計算方法を鵜呑みにせず、自社の状況を考慮しながら考えることが大切です。

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なぜ運転資金は不足するのか?資金ショートを招く6つの主な原因

運転資金が不足する状況には、いくつかのパターンがあります。資金ショートの6つの原因を知って、早期発見や予防に努めましょう。

原因1:売上の急減 / 予期せぬ売掛金の回収遅延・貸し倒れ

入ってくるお金が少なくなると、資金はショートしやすくなります。以前より売上が減少してきたら、早めに手を打たなければなりません。

売掛金が予定通り入金されないことも、ショートの原因の1つです。例えば、売掛金を仕入代金の支払いに充てるつもりだった場合、期日通りに入金されなければ支払いができません。現金の残高があっても、支払った分は減ってしまいます。入金が滞っている取引先が大口であるほど、ショートしてしまう可能性は高まるでしょう。

原因2:過剰な在庫の滞留

在庫が多くなりすぎることも、資金ショートの原因の1つです。売れ行きの悪い商品や使っていない材料、多く残る仕掛品などがある場合は注意が必要です。

仕入れたら代金を支払わなければなりません。適切に仕入れているにもかかわらず、在庫が多く残っているということは、仕入を売上にうまく変換できていないことを意味します。

原因3:仕入代金の支払いサイト短縮 / 販売代金の回収サイト長期化

支払サイトや回収サイトの関係で、資金のショートが起こる場合もあります。

仕入代金の支払いサイトが短ければ、仕入れたものが売れないうちに支払期日が到来することもあるでしょう。そのため、支払いに必要な資金が不足してしまう場合があります。

販売代金の回収サイトが長い場合は、売上が入金されるまで時間がかかります。資金不足となる恐れがあるほか、代金が貸し倒れとなるリスクもあります。

原因4:急激な売上増加に伴う「増加運転資金」の手当て不足

特に注意が必要なのは、売上が急激に増加したタイミングです。

売上が増加すると仕入も増加するため、支払う金額が大きくなります。資金繰りがうまくいかず、支払いに充てる資金が不足する場合も少なくありません。資金ショートとは程遠い状況のように思えますが、嬉しい悲鳴が危険信号となるケースです。

原因5:赤字経営による自己資金(内部留保)の減少

資金が十分にあった会社でも、赤字であれば資金がショートする恐れがあります。

赤字が続けば、仕入や経費は自己資金から支払わざるを得なくなります。こうした状態を放置すると、資金が尽きてショートしてしまいます。「利益が多く出ているから」「内部留保が多くあるから」と安心せず、日頃から収支や残高を把握しておかなければなりません。

原因6:トラブルや自然災害による計画外のキャッシュアウト

予期せぬ出費によって資金難に陥ることも、ショートを招く原因の1つです。

例えば、機械設備が故障した、自然災害によって社屋が損害を被ったという場合が考えられます。修理や買い替え、建て直しなどに多額の資金が必要になると、運転資金が圧迫され、ショートしてしまう恐れがあります。

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【実践編】急な資金不足を未然に防ぐ!運転資金確保のためのアクションプラン

運転資金の確保は、経営状況を管理する財務担当者が主体となって取り組む必要があります。具体的な行動計画を、6つのアクションに分けて紹介します。

アクション1:【現状把握】資金繰り表の作成と継続的なモニタリング

資金不足を防止するためには、資金の状況をつかむことが大切です。まずは資金繰り表を作成し、現状を踏まえて将来の資金収支を予測しましょう。

資金繰り表を作成することで、資金不足の兆候を早期につかめます。少なくとも月次での更新を行い、可能であれば週次で更新しましょう。

アクション2:【入口管理】売上債権(売掛金)の管理強化と早期回収

資金不足に陥らないためには、売上債権の確実な回収が必要です。

既存の得意先に対しては、抜け漏れや遅延のないように請求します。期日に入金がない場合に備えて、連絡方法や督促フローを決めておくとスムーズです。必要に応じて回収サイト短縮の交渉をするとよいでしょう。

新規の取引先に対しては、取引開始前の審査や限度額の設定により、与信管理を徹底することが大切です。

アクション3:【在庫管理】棚卸資産(在庫)の圧縮と適正化

棚卸資産の適切な管理によって、過剰な在庫を抱えることがなくなります。理想的な在庫管理には、在庫を重要度別に3グループに分けて管理する「ABC分析」が有効です。

在庫の回転率を計算することで、仕入が売上に転換されるまでの期間を把握できます。動きの少ない在庫や定価での販売が難しい在庫は、セールや廃棄などによって処分しましょう。

アクション4:【出口管理】仕入債務(買掛金)の支払いサイト見直し・交渉

資金管理の中で、支払いに関する見直しが必要な場合もあります。必要に応じて、余裕を持って支払うためのサイト延長や、より効率的な支払方法への変更などの交渉をしましょう。

こうした変更によって、仕入先の負担や不都合が生じる場合もあります。

相手の希望や意見もしっかりと受け止め、双方にとって利益のある提案を柔軟に行うことで、良好な関係を保ちながら変更に応じてもらえるでしょう。

アクション5:【支出抑制】不要不急なコスト削減の徹底

支出の内容を見直すことも、資金不足を防止するためには重要です。不要不急のコストは削減し、資金のキープに注力しましょう。

コストの削減には、売上とは関係なくかかる固定費から取り組むことをおすすめします。例えば、家賃の安い物件にオフィスを移転する、電気やガスは料金の安い会社と契約するといった方法があります。

接待交際費の削減や残業時間を減らすことによる残業代の削減なども、効果的なコストカットの方法です。

アクション6:【資金調達】多様な資金調達手段の確保と準備

資金不足に備えて、資金調達の手段を確保することも大切です。

日頃から金融機関とコミュニケーションを取り、透明性のある財務情報を提供することで、信頼関係を構築しましょう。融資が必要となったときに、話をスムーズに進めやすくなります。

万一の事態に備えて、融資や補助金、ファクタリングといったさまざまな情報を収集しておきましょう。

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財務担当者が押さえておくべき運転資金管理の心構え

以下では、日々の業務において、運転資金管理を効果的に行うための心構えやポイントを紹介します。

常に「キャッシュ・イズ・キング」の意識を持つ

売上債権や固定資産がいくらあっても、キャッシュが尽きれば企業は倒産してしまいます。日々の運転に必要なキャッシュは常に確保し、大きな出費の際もキャッシュをしっかり管理する意識が不可欠です。

関連部署との連携を密にする

資金繰りは、営業部門や製造部門なども無関係ではありません。多くの場合、取引条件や価格については営業が交渉します。材料の仕入を製造部門で行うことも多いでしょう。

こうした関連部署と綿密に連携し、採算や収益についての意識をそろえておくことが大切です。

定期的な財務状況の分析と経営層へのレポーティング・提言

資金繰りやキャッシュフローについて日常的に管理し、状況を分析しましょう。資金不足の兆候や異変の早期発見につながります。

必要に応じて、経営層への報告や提言を行い、今後の方針について検討しましょう。

必要に応じて外部専門家(税理士、中小企業診断士、コンサルタント)に相談する勇気

社内だけで解決しようとせず、外部の専門家の力を借りることも有効です。

税理士や中小企業診断士、コンサルタントなどに相談することで、問題のスムーズな解決が望めます。社内だけで持つことの難しい、客観的な視点からのアドバイスも受けられるでしょう。

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まとめ

事業活動を維持するために必要な運転資金は、会社の状況によって異なります。必要な額を把握し、資金不足に陥らないように管理しましょう。資金不足は、売上の減少や赤字経営、突発的なトラブルのほか、売上の増加によって起こることもあります。資金繰り表を作成して日々動く資金を管理し、問題が起きたら迅速かつ的確に対処することが大切です。

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この記事を書いた人

福島彩香
地元中小企業において、経理・総務担当として2年間勤務し、在職中に独学で簿記2級を取得。一人の部署であり、日々の仕訳から決算業務、入退社管理や補助金申請書類作成など幅広い業務を経験。出産を機に退職し、ライター業を開始するかたわら、家族の経営する小さな会社の経理業務も行う。経理や数字に苦手意識のある方にも読みやすい記事の執筆を心掛けている。 
梶本卓哉(公認会計士、税理士)
監修
梶本卓哉(公認会計士、税理士)

早稲田大学卒業後、関東信越国税局採用。税務大学校を首席卒業(金時計)し、税務署法人課税部門にて法人税、消費税等の税務調査に従事。複雑困難事案の事績により署長顕彰。大手監査法人に転職後、製造業や不動産業をはじめ様々な業種の上場会社監査やIPO監査に従事。その後、中央官庁勤務を経て大手証券会社の引受審査部・公開引受部にてIPO業務に従事。現在は主に法人の税務顧問を務めており、スタートアップ支援に強みを有する。

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