生産性向上に直結!業務効率化を実現する具体的なフレームワーク

本記事は2025/07/31に更新しております。
生産性向上に直結!業務効率化を実現する具体的なフレームワーク
業務効率化は、多くの企業にとって重要な課題です。しかし、単に作業時間を短縮したり、コストを削減したりするだけでは、持続的な成長という本質的な目標達成はできません。目指すべきは、業務効率化の先にある生産性向上です。
本記事では、自社の生産性を本質的に高め、競争力を強化していくための具体的な方法と、実践に役立つフレームワークについて解説します。

01

「業務効率化」の達成だけでは不十分?その先の「生産性向上」が重要な理由

まずは、業務効率化と生産性向上の違いを明確にし、生産性向上がなぜ中小企業にとって重要なのかをみていきましょう。

業務効率化

主に時間・労力・コストなどのインプットを削減することに焦点を当てます。例えば、会議時間の短縮やRPAによる手作業の自動化などがこれに該当します。目的は、「ムダをなくすこと」であり、生産性向上のための重要なステップです。

生産性向上

より少ないインプットで、より大きな成果・付加価値であるアウトプットを生み出すことを目指します。生産性向上とは、インプットを維持しつつアウトプットの量や質を高める状態、もしくは、効率化で削減した少ないインプットで従来と同等以上にアウトプットする状態です。目的は、成果を最大化することです。

では、効率化で終わらず、生産性向上を目指すことがなぜ不可欠なのでしょうか。その理由をひとつずつ確認していきます。

1.リソースの制約と成長機会の創出

経営資源が限られる中小企業にとって、少ないリソースで最大の成果を上げることは経営戦略上の最重要課題です。但し、効率化でリソースの浪費を抑えただけでは、現状維持に留まる可能性があります。生産性向上によって生み出された余力を、新商品開発、新規市場開拓、従業員教育といった未来への投資に振り向けることで、企業は成長軌道に乗れます。
例えば、月間10時間の余力が生まれたら、市場調査や顧客ヒアリング、新たなニーズを発掘などの行動に時間があてられます。

2.利益構造の抜本的改善と持続的成長

生産性が向上すると、同じコストでより多くの製品やサービスを提供できると同時に、高付加価値を提供でき、利益率の改善に直結します。生産性の向上は、単にコストカットするよりも強力な利益改善となります。得られた利益は、さらなる事業投資や環境変動・不測の事態への備えとなり、持続的な成長を支える協力な財務基盤を築きます。
例えば、食品製造企業で不良品率が半減すれば、材料費や再生産コストが削減され、利益が直接的に増加します。

3.競争力強化と市場での差別化

物事の不確実性が高く、将来の予想が困難な状況である、いわゆるVUCA時代の市場において、競合と差別化し、優位性を確立するためには、常に新しい価値を提供し続けなければなりません。生産性向上によって生み出されたリソースを、新技術導入、ビジネスモデル変革、顧客体験の向上などのイノベーティブな活動に投下することで、競争力を強化できます。
例えば、AIを活用した新サービス開発にリソースを集中させ独自の価値を提供する、といった戦略が可能です。
イノベーティブな活動により価格競争からの脱却も狙えます。

4.従業員満足度(ES)向上と人材確保

「ムダな作業が減り、より創造的で価値の高い仕事に集中できる」「自分の成長が会社の成長に貢献している」という実感は、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高めます。また、労働環境の改善やキャリアアップにもつながるため、結果として優秀な人材の獲得・定着が進み、採用競争力強化にも繋がります。人手不足が深刻化する中小企業にとって重要な意味を持つといえるでしょう。

導入に関するお問合せ

02

自社の「生産性」を測るには?主要な指標と考え方

生産性向上の第一歩は現状把握です。自社の現時点の生産性を測定しましょう。

以下が生産性を図る計算式です。

生産性=アウトプット(成果・付加価値)÷インプット(投入資源)

このセクションでは企業で設定しやすい生産性指標をご紹介します。

労働生産性(物的・付加価値)

最も基本的な指標は、2種類あります。

物的労働生産性=生産量(個数、処理件数等) ÷ 労働投入量(従業員数、総労働時間等)

従業員ひとりあたり、または1時間あたりの物理的な生産量や提供数です。
製造業やルーティンワークで活用できますが、数量に焦点をあてるため、品質や製品の多様性を反映しにくい点に注意しましょう。

付加価値労働生産性=付加価値額 ÷ 労働投入量

従業員ひとりあたり、または1時間あたりの付加価値額です。
数式の付加価値額は、「売上高-外部購入費用(材料費や外注費)」などで求められます。

業種を問わず活用でき、生み出した「儲け」の効率を示します。価値を基準とするため、品質や多様性の適切な評価が可能です。

全要素生産性(TFP)の考え方

労働や資本といった生産要素の投入量だけでは説明できない生産性向上には、技術進歩、経営戦略、組織運営効率、ブランド力、イノベーション、企業文化などが該当します。

同じ人員や設備で業績が向上した場合、TFPが向上したと捉えるとわかりやすいでしょう。

自社独自のKPI設定の重要性

標準的な指標に加え、自社の戦略やビジネスモデルに合わせた独自の重要業績評価指標といわれるKPIの設定は、企業の成長にとって有効です。例えば、営業部門なら案件成約率、製造部門なら設備稼働率など。日々の業務に直結するKPIをモニタリングすることで、課題や改善効果が把握できます。

KPIをひとりあたり粗利などの重要な指標にどう繋げるかが重要です。
導入に関するお問合せ

03

業務効率化が「生産性向上」につながるメカニズム

業務効率化で生み出された時間やリソースを戦略的に活用することで、初めて生産性の向上が実現します。

創出された時間で「コア業務」に注力する

多くの従業員が、定型事務や資料作成や社内調整会議など、価値創造に直結しないノンコア業務に時間を奪われています。ノンコア業務の時間を効率化し、空いた人員や時間を付加価値の高いコア業務へシフトさせることが可能です。

顧客との関係構築や新商品の企画開発、中期経営戦略の立案などに、空いた人員を集中させることで、全体のアウトプットの質と量を高めることにつなげられます。

新しい価値創造(イノベーション)に取り組む

効率化で生まれた時間は、イノベーション創出のための戦略的余白となります。
新規事業の検討、既存事業・業務プロセスの抜本的改善、顧客体験の革新など、新しい価値を生み出す活動にリソースを振り向けられます。

そのためには、新しいアイデアを提案しやすい心理的安全性の高い職場環境や失敗を恐れず、挑戦できる文化を作り出すことが不可欠です。

従業員のスキルアップ・能力開発に投資する

従業員一人ひとりの能力向上は、組織全体の生産性を底上げするうえで最も重要な投資です。業務効率化によって新たな時間が生み出され、無駄なコストが削減されます。新たに生み出された時間と浮いたコストを従業員のスキルアップに投資することで、より質の高い成果創出が実現します。
具体的には、研修やセミナーへの参加、資格取得支援、OJT強化などの取り組みがあげられます。

モチベーション向上やキャリア自律支援にも繋がり、長期的な視点でみると、企業の競争力強化とイノベーション創出の風土が育まれます。
導入に関するお問合せ

04

【実践フレームワーク集】業務効率化から生産性向上へ導く思考ツール

業務効率化を体系的に進め、生産性向上に繋げる実践的なフレームワークを紹介します。

フレームワーク1: PDCAサイクル - 改善活動の基本OS

PDCAサイクルは、継続的な業務改善を実現するうえで欠かせない基本OSともいえるフレームワークです。

以下の4ステップを繰り返すことで、目標に向けた改善活動を仕組み化します。

Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)

Plan(計画)

課題を洗い出し、効率化・生産性向上を目的とした目標を設定。具体的な改善計画を立てる。

Do(実行)

計画に沿って改善施策を実行。チーム内でタスク分担を明確にする。

Check(評価)

実行内容と目標を照らし合わせ、達成度を評価する。

Action(改善)

上手くいった点・いかなかった点を整理し、改善策を標準化。次のサイクルに活かす。

ポイントは、身近な業務の小さな改善からスタートすることです。週次・月次で進捗を確認しながら、KPIと連動させて効果を測ることが重要です。まずはPDCAサイクルを回すことを意識しましょう。

フレームワーク2: ECRS(イクルス) - 徹底的な「ムダ取り」

ECRSは、既存業務の中から非効率をあぶり出し、抜本的に改善するためのフレームワークです。

以下の4つの視点から業務を見直すことで、ムダを構造的に取り除きます。

Eliminate(排除)・Combine(結合)・Rearrange(交換・再配置)・Simplify(簡素化)

Eliminate(排除)

その業務は本当に必要か、やめられないか。

Combine(結合)

複数の作業を一つにまとめて効率化できないか。

Rearrange(交換・再配置)

作業の順序・人・場所を変えてスムーズにならないか。

Simplify(簡素化)

作業そのものをもっと単純に、簡単にできないか。

4つの順番で検討します。業務フローを図解し、現場から意見を吸い上げることでより実践的な改善策が導き出せます。特に、E(排除)には心理的抵抗もありますが、目的や効果を明確にすることで、現場も業務がはかどりやすくなります。

フレームワーク3: KPT(ケプト) - チームで実践する「振り返り」

KPTは、業務やプロジェクトの振り返りを仕組み化するためのフレームワークです。

以下の3項目で整理することで、行動につながる具体的な改善案をチームで導き出せます。

Keep(継続すること)、Problem(問題点)、Try(挑戦すること)

中小企業では、忙しさのあまり行われないまま終わる業務も多く、振り返りが形式的になりがちです。KPTを取り入れることで、現場の声を拾いながら改善サイクルを自走させることが可能になります。

Keep(継続すること)

上手くいったこと・成果が出た工夫など、今後も継続すべき取り組みを整理。

Problem(問題点)

上手くいかなかったこと、遅れやミスの原因など、改善すべき課題を明確化。

Try(挑戦すること)

次回以降に試したい取り組みや新しい改善策を具体的に設定。

導入に関するお問合せ

05

フレームワークを実現不可能なままにしない!導入・定着のポイント

フレームワークは導入するだけでは意味がありません。効果的に活用し、組織文化として定着させるためのポイントをご紹介します。

Point1: 目的を明確にし、自社に合ったものを選ぶ

フレームワークを使うこと自体が目的にならないように注意しましょう。「何のために」「目指す状態は何か」を明確にしたうえで取り組みます。

一度に複数のフレームワークを導入せずに、組織文化との相性も考慮し、スモールスタートで自社に合う形にカスタマイズします。

Point2: 経営層・管理職が率先垂範する

トップ自らがフレームワークを理解し、日常業務で活用する姿を見せることで、従業員の意識が変わるという戦略です。

トップが本気度を示して従業員の参加意欲を高めましょう。フレームワーク活用のために必要なリソースの提供も重要です。

Point3: 従業員への丁寧な説明と参加の促進

従業員に対して、なぜ導入するのか、従業員自身にはどういったメリットがあるのか、を具体的に繰り返し説明します。

研修やワークショップでの学習機会を設け、価値を直接体験してもらうことでやらされ感を払拭し当事者意識を育みます。

Point4: 定期的な実践とレビューの「場」を設ける

定例業務に組み込み、日常業務で意識的に使う環境を構築します。

その結果や進捗を週次・会議や月次会議などで確認します。振り返りの場と仕組みを定例化して改善に繋げます。

Point5: 成果を可視化し、成功体験を共有する

KPIの変化など、改善活動の成果を具体的な数字で見える化し、社内報などで積極的に共有しましょう。成功したチームや個人を発表や表彰し、フレームワークで良くなるという成功体験を共有することで更なる意欲を引き出します。

また、失敗からの学びもオープンに共有し、挑戦自体を称賛する文化の創り出すことも効果的です。
導入に関するお問合せ

06

まとめ

生産性向上は、中小企業が持続的に成長するための必須課題です。業務効率化はその手段であり、真の目的はより少ないインプットでより大きなアウトプットを生み出すことです。
本記事では、生産性の考え方や効率化が生産性向上につながるメカニズム、そして具体的なフレームワークなどを組織に定着させるためのポイントを紹介しました。 最も重要なのは、自社の課題を正しく認識し、適切なツールを選び、経営層から従業員までが一丸となって粘り強く改善を続けることです。 今日からできる小さな一歩が、やがて大きな価値を生み、企業の未来を創ることにつながるでしょう。
導入に関するお問合せ

07

Slopebaseとは

バックオフィス業務の
支出管理を支援する、
支出管理クラウド

Slopebase スロープベース

※バックオフィス業務とは経理や総務、人事、法務、財務などといった直接顧客と対峙することの無い社内向け業務全般を行う職種や業務のこと

導入に関するお問合せ

この記事を書いた人

赤峯豪
BtoB専門ライター。通信事業会社・大手IT企業で16年間、BPR(業務プロセス改革)や予算管理業務に携わる。在職中に独学で簿記2級を取得。DX・RPAを含むオペレーション改善を幅広く企画・実行。その後、売上高1,300億円規模の経営企画・予算管理業務に従事。ライター転身後は、BtoB向け記事、ホワイトペーパー、LPの執筆・制作を中心に手がけている。
佐藤大輔
監修
佐藤大輔

長年、経理業務に携わり、毎年の店舗の水道光熱費の使用料や過剰に使用している店舗への注意喚起などを促し赤字店舗の改革に努めた。また、企業のDX導入にも携わり、職員勤怠の電子化など、業務効率化を積極的に推進。現在は、企業コラム記事などを中心に年間100記事ほど執筆・監修を行っている。

人気記事

カテゴリ