効果的なコスト削減の進め方と成功事例~利益を増やす最短ルート!~

本記事は2025/07/31に更新しております。
効果的なコスト削減の進め方と成功事例~利益を増やす最短ルート!~
企業活動において、売上アップと並んで、経営の重要な柱となるのがコスト削減です。コスト削減と聞くと、現場への負担を強いるようなネガティブなイメージを持つかもしれません。しかし、コスト削減は単なる経費節減ではなく、企業の競争力強化や新たな成長機会を生み出すための戦略です。
本記事では、コスト削減の効果的な進め方と成功事例を詳しく解説します。

01

コスト削減は守りではない!利益体質強化への「攻め」の一手

コスト削減と聞くと、経費を切り詰める守りの施策という印象を持つかもしれません。しかし、現代の厳しい経営環境において、コスト削減は単なる節約ではありません。企業の競争力を高め、持続的成長の基盤を築くための攻めの戦略です。

適切なコスト削減は利益構造を改善し、企業体質を強化します。削減によって生まれたキャッシュを活用すれば、新事業開発や生産性向上、人材育成、マーケティング強化など、企業の成長施策に投資することが可能です。特に中小企業は、大企業のように大きな資金を投入することが難しいため、限られたリソースの最適化が競争力の源泉となります。

さらに、原材料費の高騰や人件費の上昇など、外部環境の変化に対応するためにも、継続的なコスト削減は不可欠です。重要なことは、「コスト削減=節約」という固定概念を捨て、価値を生まない支出を抑え、価値創造へ投資する戦略的な発想を持つことです。

価値創造へ投資することで、企業は利益を増やし、長期的な成長を可能とします。
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02

どこから手をつける?中小企業が見直すべきコストの種類と特定方法

コスト削減を進めるにあたり、まずは自社のコスト構造を正確に把握することが不可欠です。コストは大きく固定費と変動費に分けられます。

固定費

売上高の増減にかかわらず、毎月一定額発生する費用。

変動費

売上高の増減に比例して変動する費用。

中小企業が特に注意すべきは、全ての勘定科目をチェックすることです。自社のコスト構造を見える化する簡単な方法としては、月次試算表の活用が挙げられます。過去数年分の試算表を比較し、金額の大きな科目や、売上とのバランスが取れていない科目に注目しましょう。

より詳細にコストを把握したい場合は、ABC分析も有効です。各活動にかかるコストを測定し、製品やサービス、顧客ごとの収益性を明らかにする手法です。 また、各コストが売上高に対してどの程度の割合を占めているかを知り、売上高比率を分析することもコストの見直しに繋がるでしょう。

科目別チェックポイント一覧

コスト分類 勘定科目 チェックポイント
固定費 人件費 残業時間の適性化、業務分担の見直し、ノンコア業務のアウトソーシング検討 地代家賃 安価な物件への移転検討、遊休スペースの活用・転貸、契約条件の見直し 減価償却費 遊休資産の売却・廃棄、リースへの切り替え検討 保険料 重複や過剰補償はないか、団体割引などの活用 支払利息 借入金の借り換え検討、金利交渉 諸会費 必要性の低い会費の見直し
変動費 仕入原価 複数業者からの相見積もり、集中購買による価格交渉、仕入れルートの見直し、在庫管理の最適化 外注費 契約内容・料金の妥当性検証、内製化の検討、複数の外注先との比較 販売促進費 費用対効果の低い広告の見直し、WebマーケティングやSNS活用の強化、ターゲットを絞った効率的なプロモーションへの切り替え 旅費交通費 出張規定の見直し、オンライン会議の積極活用、格安チケット・宿泊プランの利用 水道光熱費 省エネ設備の導入、従業員への節電・節水の意識啓発、電力会社の切り替え検討 消耗品費 ペーパーレス化の推進、共通備品の集中管理と購入プロセスの見直し、代替可能な安価な製品への切り替え検討
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03

【5つのステップで成功】効果を最大化するコスト削減の進め方

場当たり的なコスト削減は、一時的な効果が得られるだけで、現場の混乱を招きかねません。計画的かつ全社的にコスト削減を進めるための具体的なステップを解説します。

ステップ1:現状把握と課題の特定

コスト削減の第一歩は、現状を正確に把握することです。財務データを分析して、以下のポイントで課題を特定します。現状把握と課題の特定には、データに基づく客観的な分析が必要です。

【ポイント】
・過去3年分の損益計算書・貸借対照表などの財務諸表を分析し、増加傾向にある科目を洗い出す
・売上高に対する費用の比率が高い科目を特定する
・自社のコスト構造と業界平均値を比較する
・部門別・製品別の収益性を分析し、収益を圧迫している要因を明確にする

課題を明確にすることで、コスト削減に対する具体策が見いだせます。

ステップ2:明確な削減目標の設定

分析結果に基づき、具体的な削減目標を設定します。SMART原則を適用した目標設定をしましょう。

【ポイント】
・S(具体的)どのコストを削減するのか
・M(測定可能)どれくらい削減するのか
・A(達成可能)努力すれば達成できる現実的な水準か
・R(関連性)経営戦略や事業目標と関連しているか
・T(期限つき)いつまでに達成するのか

例えば、「今年度末までに、コピー用紙の使用を20%削減し、年間40万円のコストダウンを目指す」といった具体的な目標を設定します。

ステップ3:削減策のアイデア出しと優先順位付け

目標達成のための具体的な削減策を検討し、優先順位をつけます。

【ポイント】
・各部門から自由にアイデアを出してもらい、現場の声を集める
・取引先や外部専門家からの提案を取り入れる
・他社の成功事例を研究する

次に、集まったアイデアに優先順位をつけます。例えば、効果の大きさと実現難易度の2軸でマッピングする、ペイオフマトリクスという手法が有効です。

4象限の図解イメージ

ステップ4:実行計画の策定と推進体制

優先順位付けした削減策を実行に移すための計画を策定し、推進体制を構築します。

【ポイント】
・各施策の具体的な実施内容を定める
・責任者と担当者を明確にする
・進捗管理の仕組みを作る

施策内容や担当者、進捗管理体制などの推進体制を構築することで業務を円滑に進められます。

ステップ5:効果測定と見直し

実行したコスト削減策の効果を定期的に測定し、必要に応じて計画を見直します。PDCAサイクルを回すことで、持続的なコスト削減を実現します。

【ポイント】
・定期的なモニタリングを実施する
・削減目標に対する達成度を数値化する
・施策実施前後の比較をする
これら5ステップを着実に実行することで、一時的なコスト削減で利益を生み出すのではなく、持続的に利益を生み出せる状態が実現できます。
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04

【領域別】中小企業が取り組みやすいコスト削減アイデア10選

中小企業が取り組みやすいコスト削減のアイデアを領域別に紹介します。自社の状況に合わせて、適切な施策を実施しましょう。

No. 領域 施策 施策
1 オフィス経費 ・ペーパーレス化推進(電子契約、クラウドストレージ、会議資料電子化など)
・オフィススペース最適化(テレワーク・フリーアドレス導入、オフィス移転など)
・優先度の高い業務からペーパーレス化を段階的に進める
・オフィス縮小は生産性も考慮し、適切な環境設計をする
2 水道光熱費 ・省エネ設備導入(LED照明、人感センサー、断熱フィルムなど)
・節水対策(節水型トイレ・蛇口導入、雨水利用システムなど)
・設備投資は初期コストと削減効果のバランスを計算して判断する
・LED照明は比較的短期間で回収が可能
3 仕入・調達コスト ・仕入先の見直し・集約(相見積もり取得、仕入先集約による値引き、年間契約など)
・在庫管理の最適化(適正在庫レベルの設定、発注数の最適化など)
・仕入先との関係は価格だけでなく、品質・納期・柔軟性も考慮し、Win-Winの関係構築を心がける
4 IT・通信コスト ・クラウドサービス活用(サーバーのクラウド化、SaaS活用など)
・通信環境の見直し(通信事業者比較検討、適切なプラン選択など)
・ITコストは投資と捉え、効率化・生産性向上も含め総合的に判断する
・通信インフラは料金以外に、信頼性や安定性を考慮する
5 人件費 ・業務効率化による残業削減(プロセス見直し、ツール活用など)
・柔軟な人員配置(フレックスタイム制導入、外注と内製化のバランスなど)
・従業員のモチベーションに直結するため安易な人員削減はしない
・適時適材適所の人員配置
6 固定資産 ・遊休資産の活用・処分(未使用設備・機会の売却、余剰不動産の賃貸など)
・リース・レンタルへ切り替え(高額設備のリース切り替え、一時使用機器のレンタル活用など)
・固定資産は税制面の考慮も必要
・会計士や税理士と相談のうえ、中長期的な視点で判断する
7 外注費 ・内製化の検討(外注業務の洗い出し、社内のスキル向上など)
・外注管理の強化(複数業者からの相見積もり、成果物の品質基準設定など)
・内製化はコストのみの比較ではなく、品質・納期・リスク分散なども考慮に入れる
・内製化のための社内の人材育成費用も検討材料とする
8 マーケティング・広告 ・費用対効果の測定と予算配分(媒体ごとの効果測定、成果報酬型への移行など)
・デジタルマーケティングの活用(自社サイト・SNS運用、コンテンツマーケティングなど)
・マーケティングコストは削減より最適化を前提として検討する
・効果の高い施策に集中投資するアプローチが有効
9 間接コスト ・業務プロセス改善、ムダ・ムラ・ムリの排除(業務可視化と分析、承認プロセス簡素化など)
・デジタル化・自動化の推進(RPA導入、チャットボット活用など)
・品質向上や納期短縮にも寄与する
・従業員の作業負担軽減にも繋がる
10 専門家活用 ・税理士・会計士の活用(節税対策、財務体質強化支援など)
・社会保険労務士の活用(社会保険料の適性化、助成金・補助金活用支援など)
・専門家への報酬は、助言による効果や経営リスク低減効果を含め総合的に判断する
・最新の制度や専門知識による提案を求める
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05

これはNG!コスト削減で絶対にやってはいけないこと

コスト削減は、方法を間違えると企業の成長を妨げる要因になりかねません。以下の点は避けるようにしましょう。

品質やサービスレベルの低下を招く

目先のコスト削減のために、製品の品質を落としたり、顧客サービスレベルを低下させたりすると、顧客離れを引き起こし、長期的に見て大きな損失に繋がります。

従業員のモチベーションを下げる

一方的な給与カットや福利厚生の大幅な削減、過度な人員削減は、従業員の士気を下げ、生産性の低下や優秀な人材の流出を招きかねません。

将来への投資を抑制する

研究開発費や人材育成費、マーケティング費など、将来の成長に必要な投資まで削減してしまうと、企業の競争力を下げ、持続的な成長が困難になります。

安全性・コンプライアンスの軽視

安全管理に関わる費用や、老朽化した設備のメンテナンス費用を削減すると、事故やトラブルのリスクが高まり、結果的に多大なコストが発生する可能性があります。
また、取引先への無理な要求は、短期的にはコスト削減に貢献するかもしれませんが、長期的には品質低下や安定供給のリスクを高めます。特に中小企業では、取引先との関係性が事業継続の生命線となる場合も多いため、互恵関係を重視したアプローチが重要です。

場当たり的・単発の削減施策

一時的な経費凍結は、必要な支出の先送りに過ぎません。また、部門の実情を無視した上からの削減命令や、短期的な数値目標のみを追うことも、現場の士気を下げ、持続性のない対応となりがちです。

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06

事例紹介:コスト削減で利益V字回復!中小企業の成功事例3選

コスト削減の理論や手法を理解することと併せて、実際の成功事例から学ぶことも有益です。ここでは、効果的なコスト削減によって業績をV字回復させた中小企業の事例を3つ紹介します。

①製造業A社 『生産プロセス改善とITで利益改善』

非効率な生産体制と高い不良率、原材料費高騰が課題でした。生産ライン改善やIoT導入、需要予測精度向上、ペーパーレス化を実施しました。
その結果、不良率30%減、リードタイム20%短縮、年800万円のコスト削減を達成し、利益率も大幅に改善しました。

現場主導の改善と経営層のIT投資判断が成功の鍵となりました。

②小売業B社 『店舗運営効率化と仕入を工夫しロス削減』

情報共有不足による過剰在庫や高光熱費が問題でした。POS・AI自動発注システム導入、共同仕入れ、省エネ対策を実行しました。

その結果、在庫廃棄ロスを年間500万円、光熱費を15%削減しました。データに基づく意思決定と粘り強いサプライヤー交渉が成功に繋がりました。

③ITサービス業C社 『ノンコア業務委託とクラウド化で生産性向上』

バックオフィス業務負担とサーバーコストの高騰が課題でした。経理業務をアウトソースし、サーバーを全面クラウドへ移行しました。また、業務を円滑に進めるべくWeb会議も導入しました。
様々な取り組みにより、コア業務へ人員を集中させ生産性が向上し、年間1000万円のコスト削減とBCP強化も実現しました。

業務の明確な切り分けと迅速な意思決定が成功のポイントです。
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07

まとめ

効果的なコスト削減は、単なる経費節減ではなく、企業の競争力強化と持続的成長のための戦略的取り組みです。
本記事では、コスト削減の重要性と5つのステップによる計画推進のポイントを解説しました。
成功の鍵は、従業員を巻き込んだ全社的な取り組みと、データに基づく意思決定です。削減によって生まれた原資は、成長施策への投資に活用し、企業価値の向上に繋げます。
品質や従業員のモチベーション低下を防ぎながら、長期的な競争力強化に向けた戦略的なコスト削減施策を実行していきましょう。
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08

Slopebaseとは

バックオフィス業務の
支出管理を支援する、
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※バックオフィス業務とは経理や総務、人事、法務、財務などといった直接顧客と対峙することの無い社内向け業務全般を行う職種や業務のこと

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この記事を書いた人

赤峯豪
BtoB専門ライター。通信事業会社・大手IT企業で16年間、BPR(業務プロセス改革)や予算管理業務に携わる。在職中に独学で簿記2級を取得。DX・RPAを含むオペレーション改善を幅広く企画・実行。その後、売上高1,300億円規模の経営企画・予算管理業務に従事。ライター転身後は、BtoB向け記事、ホワイトペーパー、LPの執筆・制作を中心に手がけている。
佐藤大輔
監修
佐藤大輔

長年、経理業務に携わり、毎年の店舗の水道光熱費の使用料や過剰に使用している店舗への注意喚起などを促し赤字店舗の改革に努めた。また、企業のDX導入にも携わり、職員勤怠の電子化など、業務効率化を積極的に推進。現在は、企業コラム記事などを中心に年間100記事ほど執筆・監修を行っている。

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