業務プロセス改善で組織全体の生産性を向上~「見える化」から始めるステップ~

本記事は2025/12/02に更新しております。
業務プロセス改善で組織全体の生産性を向上~「見える化」から始めるステップ~
企業や組織に根付いた長年の慣習は、企業文化の一部である一方で、変化や成長を妨げる「見えない負債」になることもあります。現状の業務プロセスを可視化し、改善に取り組むことで、組織全体の生産性を高めることが可能です。

本記事では、中小企業が持続的に成長していくための業務プロセス改善について、「見える化」の重要性と具体的な改善方法、部門ごとの改善ポイント、実際の成功事例について解説します。

01

「ウチは昔からこのやり方だから…」その業務プロセス、本当に最適ですか?

長年続けてきた業務の進め方が、現在の経営環境に適しているとは限りません。このことを前提に、私たちは今のやり方を見直す視点を持つ必要があります。

中小企業庁が発行する「2024年版 中小企業白書」によると、多くの中小企業が、「人手不足」を深刻な経営課題として挙げています。しかし、この人手不足の背景には、既存業務の非効率性が潜んでいるケースが少なくありません。つまり、人を増やす前に、今ある業務の「ムダ」をなくすことで、生産性を向上させる余地が大いにあるのです。

具体的には、現場では以下のような課題がよく見られます。

・特定の担当者にしか業務が分からない「属人化」
・無駄に複雑な業務ルール
・部門間の連携不足
・手作業ミスによる手戻りの発生

特に、業務の属人化は深刻な問題です。特定の担当者しか知らない業務、いわゆる「暗黙知」が組織に共有されないままでは、その担当者の不在が事業継続のリスクに直結します。失敗やノウハウが組織に蓄積されなければ、成長や変化の機会を逃してしまうでしょう。

こうした課題は、一つひとつは些細に見えるかもしれません。しかし、これらが複合的に絡み合うことで、気づかぬうちにコストを増大させ、従業員のモチベーションを削ぎ、ひいては顧客満足度の低下、企業競争力の低下の要因となり得ます。

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02

業務プロセス改善とは? なぜ全ての改善は「見える化」から始まるのか

業務プロセス改善とは、企業の価値創造プロセスそのものを見直し、「Q(品質)、C(コスト)、D(納期)」といった経営指標を最適化するための、継続的な経営活動です。

この取り組みの成否を分ける最も重要な第一歩が、業務の「見える化」です。なぜなら、現状という「基準点」がなければ、改善という「変化」を客観的に測定・評価することが不可能だからです。

感覚や経験則だけに頼った改善は、往々にして的外れな結果に終わるか、あるいは新たな問題を生み出すこともあります。

例えば、「トヨタ生産方式」に代表される日本の製造業では、「問題の見える化」改善の出発点であるという思想が深く根付いています。これは業種や企業規模を問わず、全ての組織に共通する原理原則といえるでしょう。

業務を見える化することで、全体の流れを客観的に把握しやすくなり、これまであたり前だと思っていた作業の「ムダ」や、特定の担当者に集中している「ムリ」、作業品質の「ムラ」といった問題点を、客観的な事実として認識することができるようになります。

いわば組織の健康診断であり、効果的な処方箋を描くための、不可欠なステップなのです。

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03

【誰でもできる】業務プロセス「見える化」の具体的な3つの方法

「見える化」の本質は、実はとてもシンプルです。ここでは、今日からでも取り組める、業務プロセスを見える化するための3つの具体的な方法をご紹介します。

方法1:業務リストアップと棚卸し

まず着手すべきは、部署内に存在する全ての業務を洗い出し、一覧化する「業務の棚卸し」です。これは、業務改善における基盤となるプロセスです。

具体的には、まず各担当者が「日次・週次・月次」といったサイクルで行っている業務を全て書き出します。

次に、それらを一覧表にまとめていきます。この際、「業務名」「担当者」「業務の目的」「作業手順」「頻度」「所要時間」「使用ツール」といった項目を設けることで、後の分析を行いやすくなります。

さらに、このリストをもとに、担当者への丁寧なヒアリングを行いましょう。

この対話により、担当者自身も意識していなかった非効率な点や、改善のヒントが見つかることも多いです。

方法2:簡単な業務フローチャート作成

個々の業務を「点」として把握したら、次はそれらのつながりを「線」で結んで可視化します。そのために有効なのが、業務フローチャートの作成です。

このとき、最初から専門的なBPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)のような複雑な記法を使う必要はありません。手書きやExcelの図形機能を活用し、以下のような基本記号で、業務の流れを図式化してみましょう。

・四角(処理):具体的な作業(例:「請求書を作成する」)
・ひし形(判断):Yes/Noの分岐(例:「承認は必要か?」)
・矢印(流れ):業務の進む方向
・丸や楕円(開始/終了):プロセスの始点と終点

例えば、「経費精算プロセス」を図にした場合、「承認」や「差し戻し」などのステップが明確になります。このように業務の流れを図で捉えることで、文章だけでは見えにくかった業務のボトルネックがどこにあるのか、直感的に理解できるようになるでしょう。

図:経費精算のフローチャートの例

方法3:現場ヒアリングと観察

業務リストやフローチャートは、いわば業務の「設計図」です。しかし、実際の運用、つまり「現場の実態」と乖離しているケースは少なくありません。それを埋めるのが、現場でのヒアリングと観察です。

ヒアリングを行う際は、「問題を探すため」ではなく、あくまで業務を「より良くするための対話」であることを伝え、心理的安全性を確保することが大切です。「この業務で、最も時間がかかっているのはどの部分ですか?」といった具体的な問いかけを行い、現場担当者の本音や、管理者が見えていない課題を引き出しましょう。

また、実際の作業風景を観察することで、非効率な動線やツールの使いにくさなど、ヒアリングだけでは顕在化しない無意識レベルの問題点を発見できることもあります。

先入観を持たず、「なぜ?」を繰り返す視点が重要です。

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04

見える化で見えてくる!業務プロセスの問題点発見の4つの視点(QCD+S)

業務を「見える化」した後は、どのような観点で現状を分析すれば良いのでしょうか。ここでは、製造業を中心に広く使われてきた「QCD」に、近年重視されている「S(Service/Safety:サービス/安全性)」を加えた「QCD+S」のフレームワークを用いた方法をご紹介します。

視点 分析する内容
Q (Quality:品質) ミス、手戻りの発生率、品質のバラつき、クレーム
C (Cost:コスト) 投入時間(人件費)、経費、機会損失などのコスト
D (Delivery:納期) 業務開始~終了のリードタイム、顧客への対応速度など
S (Service/Safety:サービス/安全性) 従業員満足度、働きやすさ、安全性、コンプライアンス

従来はQCD(品質・コスト・納期)の最適化が主な課題とされてきましたが、近年では従業員の働きやすさや安全性、企業の持続可能性といった「S」の要素が、長期的な企業成長に不可欠であると認識されています。

上記の4つの視点から業務プロセスを多角的に分析することで、改善すべき課題の優先順位が、より明確に見えてくるはずです。

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05

【改善ステップ】「見える化」の次に進むべき4つのステップ

業務の問題点を特定したら、いよいよ具体的な改善の実行フェーズです。ここでは、改善活動を成功に導くための普遍的なフレームワークである「PDCAサイクル」に沿って、進め方を解説します。

ステップ1:改善目標の設定(具体的かつ測定可能に)

P (Plan:計画)の第一歩は、具体的かつ測定可能な目標を設定することです。ここでは「SMART」と呼ばれるフレームワークを意識すると良いでしょう。

視点 分析する内容
S: Specific(具体的に) 目標が具体的で、誰にとっても明確であること
M: Measurable(測定可能に) 目標の達成度を、数値で客観的に測定できること
A: Achievable(達成可能に) 現実的に、達成が見込める目標であること
R: Relevant(関連性) 部署や企業の、より上位の目標と関連していること
T: Time-bound(期限を明確に) 「いつまでに」という達成期限が定められていること

例えば、「経費精算業務を効率化する」という漠然とした目標では、成果を評価できません。「3ヶ月後までに、経費精算書の差し戻し件数を月平均10件から3件以下に削減し、申請から承認までのリードタイムを平均3営業日から1営業日に短縮する」といったように、誰が見ても達成度が判断できる数値目標を立てましょう。

ステップ2:改善策の立案(ECRSの原則を活用)

次に、目標達成のための具体的な改善策を立案します。その際に指針となるのが、「ECRS(イクルス)の原則」です。これは、改善効果の高い順にアイデアを発想するための思考のフレームワークです。

原則 内容 オフィスワークでの例
Eliminate
(排除)
そもそも、その業務をなくせないか検討する 目的が形骸化した定例会議や日報を廃止する
Combine
(結合)
複数の業務を一つにまとめられないか検討する ・別々に行っていたデータ入力を一括処理する
・関連する会議を一つに統合する
Rearrange
(交換)
手順や担当者を入れ替えて効率化できないか検討する ・承認フローの順番を見直し、手待ち時間を削減する
・作業の順番を変えて、移動の手間をなくす
Simplify
(簡素化)
もっと単純・簡単にできないか検討する ・報告書のフォーマットを簡略化する
・RPAなどのITツールを導入し、手作業を自動化する

ここで注意すべきは、検討の順番です。安易な「簡素化(Simplify)」、例えばITツールの導入に飛びつく前に、そもそもその業務は「排除(Eliminate)」できないかと考えた方が、投資対効果の高い改善につながります。

ステップ3:改善策の実行と効果測定

D (Do:実行)のフェーズでは、策定した改善策を実践に移します。ただし、全社一斉に導入するのはリスクが高いため、特定の部署やチームでパイロットテスト(試験的導入)を行うのが定石です。

そして、必ずC (Check):評価を行います。ステップ1で設定した測定可能な目標に対して、どのような結果が出たのかを定量的に評価します。ここで重要なのは、結果が芳しくなかったとしても、それを「失敗」と捉えないことです。むしろ、「なぜ想定通りにいかなかったのか」という原因を分析し、次の改善に繋げるための貴重なデータとして活用する意識を持ちましょう。

ステップ4:標準化と定着化

A (Act):改善フェーズでは、パイロットテストで効果が実証された改善策を、組織全体に展開していきます。このとき、改善後のプロセスをマニュアルや手順書として標準化し、「誰が担当しても同じ品質が保てる仕組み」を構築することが重要です。プロセスを標準化することで、属人化を防ぎ、継続的な成果が得られるようになります。

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06

部門別に見る業務プロセス改善の着眼点とヒント

業務プロセス改善は、あらゆる部門で適用可能です。ここでは、代表的な部門における改善の着眼点とヒントをいくつかご紹介します。

営業部門

営業部門における業務プロセス改善には、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)といったツールの導入が有効ですが、まずはExcelを用いた管理からでも改善が可能です。

例えば、顧客情報や商談履歴の共有ルールを徹底するだけでも、提案の質や速度は大きく変わるでしょう。

Web会議による移動時間の削減は、ダイレクトに生産性向上につながります。

製造部門

製造部門での業務改善の糸口として参考になるのが、トヨタ生産方式で知られる「7つのムダ(加工、在庫、作りすぎ、手待ち、運搬、動作、不良)」の考え方です。特に、「手待ち」や「運搬」といった工程間の非効率は、設備の配置や情報伝達方法の見直しで大きく改善できる可能性があります。

加工のムダ 必要以上の加工や、過剰な品質を作り込むこと
在庫のムダ 必要以上の原材料、仕掛品、完成品を持つこと
作りすぎのムダ 必要以上に多く、または早く作ること
手待ちのムダ 材料待ち、機械の動作待ちなどで作業が止まること
運搬のムダ 部品や製品の不必要な移動や仮置きを行うこと
動作のムダ 探す、持ち替えるなど、作業者の付加価値を生まない動き
不良・手直しのムダ 不良品を作り、その修正や廃棄が発生すること
これらの視点から現場を観察することで、具体的な改善ポイントが見えてくるでしょう。

バックオフィス部門(経理・人事・総務)

バックオフィス部門では、紙による申請・承認のプロセスが、業務遅の停滞を引き起こしやすい要因となっています。具体的には、経費精算や勤怠管理、契約書管理などは、クラウド型のシステムを活用することで効率化が図れます。ペーパーレス化はヒューマンエラーの削減につながり、従業員の負担も軽減できます。

業務をスムーズに回すためにも、積極的にデジタル化を進めることが重要です。

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事例紹介:業務プロセス改善で生産性が劇的に向上した中小企業3選

最後に、業務プロセス改善によって大きな成果を上げた中小企業の具体的な成功事例を3社ご紹介します。

【製造業A社】動画マニュアルで技術の承継と残業削減を実現

建築関連の製造業を営むA社では、特定の熟練者に依存した業務体制が大きな課題でした。そこで、ベテラン職人の作業をビデオで撮影し、全工程を細かく分解・分析。これをもとに、作業手順を標準化し、誰でも理解できるよう20本以上の動画マニュアルを作成しました。

この取り組みにより、新人教育の期間が従来の半分に短縮され、若手従業員の定着率が向上。

さらに、生産性は約15%向上し、長年の課題だった長時間労働を解消することができました。

【倉庫業B社】トラック予約システムで、ドライバー待機時間を78%削減

食品卸の物流を担うB社の倉庫では、午前中の特定の時間に納品トラックが集中し、入庫待ちの行列が常態化していました。ドライバーの待機時間は平均で90分にも及び、待機時間の長さがクレームに繋がることも少なくなかったといいます。

また、事務所スタッフは「あとどれくらいで入れるか」という問い合わせ電話の対応に追われ、現場の作業員は次にどのトラックの荷受けをすべきか、その場の状況で判断するしかなく、非効率な状態でした。

そこでB社が導入したのが、Web上でトラックの到着時間を事前予約できる「トラック予約受付システム」です。ドライバーは、空いている時間帯をスマートフォンで選択肢、荷物の積み下ろし場所(バース)を事前に予約。倉庫側は、どのトラックが、何を積んで、何時に到着するのかを事前に一覧で把握できるようになりました。

このシンプルな仕組みにより、トラックの到着時間が分散され、平均90分だった待機時間は20分へと劇的に短縮(約78%削減)。

事務所への問い合わせ電話もほぼなくなり、現場は荷物の種類に合わせて人員やフォークリフトを計画的に配置できるようになった結果、荷受け作業全体の生産性も20%向上しました。

【ホテル業C社】ITツール活用で情報共有を効率化し、年間1,800時間の業務削減

C社が運営するリゾートホテルでは、部門間の情報共有不足が顧客満足度低下の原因となっていました。

この問題に対処するため、全従業員にインカムとビジネスチャットツールを導入。客室の清掃完了報告や顧客からの要望がリアルタイムで全スタッフに共有されるようになり、対応速度が劇的に向上しました。

この改善により、従業員の移動時間や確認作業といった非生産的な時間が大幅に削減され、その効果は年間1,800時間にも及びました。

これらの事例が示すのは、改善の鍵は必ずしも大規模な設備投資にあるのではなく、まずは現状を正しく「見える化」し、自社の課題に合わせた知恵と工夫を凝らすことが何より重要であるということです。

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まとめ

本記事では、業務プロセス改善の重要性から具体的な実践方法、実際の取り組み事例までを解説しました。

日本の労働生産性は、依然としてOECD加盟国の中でも低い水準にあり、特に中小企業にとっては、生産性の改善が喫緊の経営課題のひとつとなっています。

しかし、その解決策は決して難解なものではありません。日々の業務に潜む「ムリ・ムダ・ムラ」を1つひとつ取り除いていくことこそが、組織の力を底上げし、持続的な成長を導くために重要です。

まずは、現場で「特に時間がかかっている」あるいは「手戻りが頻発している」と感じる業務をひとつ選び、紙に書き出してみるといった、小さなことから始めてみましょう。

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この記事を書いた人

永瀬よしつぐ
Webライター。BtoB領域を専門とし、主にクラウドインフラ、SFA/CRM、ECに関する記事の執筆を手がける。これまで10社以上のBtoB企業のオウンドメディア立ち上げ・運営に従事。メルマガ、LP、SEO記事など発信媒体に合わせ専門領域の技術を分かりやすく解説し、BtoBマーケティングのリード獲得をサポートする。
北川 希
監修
北川 希

デジタルマーケティングやIT領域を中心に、年間200本超のライティング、100本以上の編集を担当。特に基幹業務系ソリューションやITインフラ、情報セキュリティに関する技術解説や導入メリット、導入事例に精通し、企業のDX推進や業務効率化に関する専門記事を多数執筆。行動経済学の知見をベースに、専門的なテーマでも初心者から専門職層まで伝わる記事作成・編集を実施。

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