ERPで何ができる?機能、メリット、導入事例をやさしく解説

本記事は2025/09/08に更新しております。
ERPで何ができる?機能、メリット、導入事例をやさしく解説
変化の激しい現代のビジネス環境において、企業が競争力を維持し、持続的に成長していくためには、経営資源をいかに効率的に活用するかが鍵となります。そこで注目されるのが「ERP」です。ERPは、企業の基幹業務を統合し、経営全体を「見える化」することで、迅速かつ的確な意思決定を支援する強力なシステムです。

本記事では、ERPの基本的な概念や機能、導入のメリット・デメリット、具体的な導入事例をわかりやすく解説します。

01

ERPとは? 専門用語を使わずにわかりやすく解説

ERP(Enterprise Resource Planning)は、「企業資源計画」と訳されます。ERPとは、会社の経営資源といえる様々な部門(販売、購買、在庫、生産、会計、人事など)の業務と情報を、ひとつにまとめて管理するためのシステムや考え方です。

簡単にいうと、「会社全体の情報をまとめて確認できるシステム」のようなものです。これにより、どの部署で何が起きているかをリアルタイムで把握できるため、部署間の連携が取りやすくなり、無駄な作業や情報の行き違いを減らすことができます。

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02

なぜERPが必要とされるのか? 部門ごとに情報がバラバラな状態の問題点

従来の企業運営では、経理、販売、生産、人事といった各部門がそれぞれ独立したシステムやツール(例えばExcelなど)で情報を管理することが一般的でした。しかし、このような部門ごとの情報管理は、以下のような問題を引き起こしていました。

データの不整合と信頼性の欠如

部門ごとに異なるフォーマットを使用している場合や更新タイミングがズレていると、情報の内容に食い違いがでやすくなります。それにより、データを信頼するための確認作業の手間が発生していました。例えば、販売部門の売上データと経理部門の売上データが一致しないといった状況です。

二重入力の手間と非効率性

各部門が個別にデータを管理していると、同じ情報を複数のシステムに手作業で入力する手間が発生し、業務の非効率性を招きます。このような「二重入力」は、時間がかかるだけでなく、入力ミスの原因にもなるでしょう。

情報収集・集計の非効率さ

経営判断や売上予測に必要な情報が複数のシステムに分散していると、必要な時に素早く正確に取得することが困難になります。情報をまとめるのに時間がかかることで、業務のスピードが落ちてしまうことが要因です。

経営判断の遅れ

情報が分散している状態では、経営層が常に最新かつ正確なデータに基づいた意思決定を行うことが難しくなり、経営判断の遅れを招く恐れもあるでしょう。その結果、市場の変化に素早く対応できず、チャンスを逃すリスクも高まってしまいます。

経営資源配分の非効率

人」「モノ」「お金」といった経営資源が集約できていないと、資源が有効に配分できているかを正確に把握できません。これにより、過剰在庫や人員過多、使われていない設備が放置される「遊休資産」といったロスが生じる可能性があります。

情報統制の不備

部門ごとに異なるシステムを使用していると、情報管理が煩雑になり、適切な内部統制を行うことができません。特に、組織が拡大するほど、申請ルートや承認権限の一貫性を保つことが難しくなり、内部統制が機能しにくくなります。

ERPは、企業内のさまざまな情報をひとつにまとめて管理できるシステムであり、こうした課題を解決するための有効な手段です。

情報の整合性と即時性を確保し、経営層が常に最新かつ正確なデータに基づいた意思決定をするために、必要とされています。
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03

ERPは会社の「何」を管理する? 主要な機能と業務領域

ERPは、企業の基幹業務を幅広くサポートし、部門間の連携をスムーズにします。ここでは、ERPがカバーする主な業務領域と、その代表的な機能をわかりやすく解説します。

予算管理

予算管理機能は、企業の財務目標を設定し、実績との比較を通じて進捗を管理するために用いられます。これにより、部門ごとの予算達成状況やプロジェクトごとの収支をリアルタイムで把握し、必要に応じて迅速な軌道修正を行うことが可能になります。

特に中小企業においては、限られた経営資源を効率的に配分し、目標達成に向けた計画的な経営を行う上で不可欠な機能といえるでしょう。

販売管理

販売管理機能は、顧客への見積もり作成から、受注、売上計上、請求書発行、入金確認までの一連の販売プロセスを一元的に管理する機能です。

活用することで、データ入力の手間やミスを大幅に削減し、販売業務の迅速化と正確性の向上を図れます。

購買管理

購買管理機能は、企業が製品を製造する際に必要な原材料の調達や、自社の販売商品の仕入れ、その他備品などの購入手続きといった、調達プロセス全般の管理に役立ちます。

調達における発注書の作成や検収手続きを自動化できるため、特に大量の原材料などを調達する際の大きな手間を削減することが可能です。

顧客管理

顧客管理では、顧客情報、案件進捗、過去の取引履歴などを一元的に管理し、営業活動や顧客サポートを支援します。

これにより、顧客との関係性を強化し、クロスセルやアップセルの機会の創出につながります。

資産・リース管理

資産・リース管理機能は、企業が保有する固定資産(建物、機械設備など)やリース資産の取得から廃棄までライフサイクルを管理する機能です。具体的には、固定資産台帳への登録、減価償却費の計算、リース契約の管理などに用いられます。

これにより、資産の正確な価値の把握や、適切な財務報告が可能になります。

債務・債券管理

債務・債券管理機能では、企業が支払うべき債務(買掛金など)と、企業が受け取るべき債権(売掛金など)の管理を行います。

支払いや入金のスケジュールが管理画面に即座に反映されることで、資金の流れを正確に把握し、支払いの遅延や回収漏れといったトラブルを防ぐことができます。

在庫管理

在庫管理機能は、自社が保有している製品・商品の在庫情報を詳細に管理し、どの倉庫にどれだけの数量が格納されているかをリアルタイムで把握するために用いられます。

製造や販売といった他の機能とシームレスに連携することで、常に最新かつ正確な在庫情報を維持することが可能です。

生産管理

生産管理では、生産計画の作成から、作業人員の配置、仕掛品の管理、生産工程の進捗確認まで、製造工程における各作業を一元的に管理します。

生産ライン全体の進行状況が見えるようになることで、ボトルネックの特定や改善を即座に行いやすくなるでしょう。

経費精算

経費精算機能は、従業員の交通費、出張費、交際費などの経費申請から承認、精算まで一連のプロセスをシステム化したものです。

紙ベースでの申請や手作業による集計の手間が削減されることで、経理部門の業務負担が軽減されます。

財務・会計管理

財務・会計機能は、企業の財務状況を正確に把握し、管理するための中心的な役割を担います。

具体的には、仕訳の入力や各種元帳の作成、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の作成といった決算業務を効率化できます。

HCM(人事/給与/勤怠/労務)

HCM(Human Capital Management)は、社員の勤怠管理や給与計算、人事評価、労務管理など、人事関連業務を統合的に管理する機能です。社員情報が一元化されることで、人事管理が容易になり、人事戦略の立案や労務コンプライアンスの強化に貢献します。

また、中小企業では、従業員の入社から退職までのライフサイクル全体にわたる情報を一元的に管理することで、人事部門の業務負担を軽減し、より戦略的な人材活用が可能になる点が大きなメリットです。
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04

ERP導入で会社はどう変わる? 中小企業が実感できる4つの大きなメリット

ERPを導入することで、会社の業務運営や意思決定のあり方が大きく変化します。ここでは、中小企業がERP導入後に実感しやすい4つのメリットについて、具体的に解説します。

メリット1:経営状況が「見える化」され、判断スピードが上がる

これまで、部門ごとにバラバラに管理されていた売上・在庫・経費などの情報が、ERPを導入することによって一元化されます。例えば、営業部が入力した受注データが即座に在庫や会計に反映されるため、経営層は「現在の会社の状況」をリアルタイムで把握することが可能です。

これにより、「どの商品が売れているか」「どの支出が増えているか」といった情報をもとに、迅速かつ的確な判断ができるようになります。

メリット2:業務のムダがなくなり、仕事が効率化される

ERPは、業務プロセスを標準化し、自動化できる点が大きな強みです。例えば、受注処理から請求書の発行までがひとつの流れで自動化されると、手作業による転記ミスや重複入力の手間が省けます。その結果、担当者の時間的な負担が軽減され、ほかの重要な業務に時間を使えるようになるでしょう。

結果として、会社全体の仕事の進み方がスムーズになり、生産性が向上します。

メリット3:内部統制が強化され、会社の信頼性が高まる

ERPでは、操作履歴やデータの変更履歴、承認の流れなどをすべて記録できます。これにより、誰がどのタイミングで何をしたのかが明確になり、不正の抑止やトラブル発生時の追跡が容易になります。また、コンプライアンス(法令順守)への対応や外部監査への備えも万全になるため、取引先や金融機関からの信頼も得やすくなるでしょう。

特に、融資や大手企業との取引の場面では、この信頼性が大きな強みとなります。

メリット4:データに基づいた客観的な分析と戦略立案が可能になる

ERPに蓄積された多種多様な業務データは、経営分析や売上予測にも活用することが可能です。例えば、「どの商品がどの季節に売れるか」「在庫の動きはどうか」などの傾向をつかむことで、過剰在庫を減らしたり、販売のタイミングを調整したりと、無駄な仕入れや機会損失を防ぐことができます。

勘や経験に頼らず、数字をもとにした判断ができるようになるため、より戦略的な経営が実現できるでしょう。
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05

ERP導入の基本的な流れ(検討から運用開始まで)

ERPシステムを導入する際には、事前の準備や計画が重要です。ここでは、ERP導入の検討段階から実際にシステムが稼働するまでの流れを、6つのステップに分けて解説します。

①検討・計画:自社の課題を整理し、導入の目的を明確にする

最初に、自社の業務でどんな問題や課題があるのかを洗い出します。具体的には、「在庫の状況がすぐにわからない」「経費管理がバラバラで時間がかかる」といった具体的な悩みをリストアップし、ERPを導入する目的を明確にすることがポイントです。この目的が曖昧なままでは、導入プロジェクト全体の方向性がぶれてしまう恐れがあります。

② 要件定義:必要な機能や業務の流れを具体的に決める

次に、自社の業務に合ったERPシステムを構築するために、「どの業務にどんな機能が必要か」「業務の流れはどうなっているか」を詳細に整理していきます。例えば、「受注データが入ったら自動で在庫を引き当てるようにしたい」「支払いは上司の承認を通してから処理されるようにしたい」といった、具体的な要望を書き出しておくことが重要です。

③ 製品・ベンダー選定:自社に合ったERP製品やパートナーを選ぶ

ERPと一口に言っても、メーカーや種類はさまざまです。「クラウド型」「オンプレミス型(自社サーバ型)」「中小企業向け」「業種特化型」など、それぞれ特徴があります。この段階では、複数の製品や提供会社(ベンダー)を比較し、自社の業種・規模・課題に最適な製品やパートナーを選定する必要があります。導入後のサポート体制や費用もあわせて検討することが大切です。

④ 設計・開発・テスト:システムを整え、実際に動くか確認する

導入するERP製品が決定したら、次は実際のシステム構築です。設定やカスタマイズを行い、自社の業務に合わせた仕組みを作っていきます。その後、テスト運用を行い、業務フローが想定通りに動くか、不具合がないかを確認します。ここでしっかりと問題点を洗い出しておくことで、スムーズな本番稼働につながります。

⑤ 導入・移行:本番環境に切り替え、データを移し替える

テストを終えたら、いよいよ本番環境での運用に切り替えます。このとき、旧システムやExcelなどで管理していたデータを、ERPへ移行する作業も必要です。データの移し替えは慎重に行い、正確性を確認することが重要です。また、操作方法に慣れていない従業員向けに、操作マニュアルの配布や研修を実施するのも良いでしょう。

⑥ 運用・保守:日々の業務で使いながら改善・サポートを受ける

導入が完了した後は、ERPを使いながら業務を進めていく「運用」のフェーズです。運用中に不具合や不明点があれば、ベンダーのサポートを受けて解決します。なお、会社の成長や業務の変化に合わせて、システムの機能追加や改善も必要になることもあるでしょう。導入後のサポート体制が整っているベンダーをパートナーとして選んでおくことで、安心して運用を続けやすくなります。

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06

【中小企業の事例】ERPでこんな課題を解決しました!

ERPは、大企業向けのシステムとは限らず、中小企業においても大きな効果を発揮しています。ここでは、具体的な導入事例を通して、ERPがどのように課題を解決し、成果を生み出したのかをご紹介します。

事例1:食品販売業A社(受注・在庫管理の精度向上と欠品削減を実現)

年商50億円・従業員30名の食品卸A社では、事業拡大により既存システムが限界に達し、各部署の情報が分断されていました。受注や在庫データはリアルタイムで確認できず、手入力の二重管理が常態化。欠品や過剰在庫、月次集計の負担増、属人化による業務停滞などが課題でした。

そこで、同社ではクラウド型ERPを導入。業務システムが統合され、受注・在庫・会計情報の一元管理が可能になり、自動集計で月次処理も迅速化しました。

クラウドの利点を活かすことでリモート対応も可能となり、BCP強化や人件費削減にもつながっています。

事例2:部品製造業B社(生産計画の最適化とリアルタイム原価把握で収益改善)

中小製造業のB社では、生産や在庫管理を手作業で行っており、情報共有の遅れや進捗管理の不透明さが課題でした。

これを解決するため、B社ではクラウド型ERPを導入。生産・在庫・財務データがリアルタイムで連携し、部門間の情報共有が円滑になったのと同時に、生産計画と在庫管理の最適化により、業務の効率と透明性が大きく向上しました。

さらに、原価をリアルタイムで把握できるようになったことで、経営判断のスピードが向上。

その結果、粗利益が30%改善し、営業利益率は3%アップ、従業員の基本給も4%引き上げられ、業績向上と社員満足の両立を実現しています。
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クラウド?オンプレミス?業種特化型? ERPの種類の違いと選び方のヒント

ERPには様々な種類があり、それぞれ特性が異なるため、自社の状況に合った製品を選ぶことが重要です。ここでは、主要な分類と選び方のポイントを解説します。

クラウド型とオンプレミス型

ERPは、システムの構築・運用方法によって、大きく「クラウド型」と「オンプレミス型」の2つにわけられます。クラウド型は、インターネット経由で外部のサーバを利用する形式であり、初期費用が抑えられ、短期間で導入できるのが特徴です。運用や保守はベンダーが担うため、社内負担が少なく、テレワークや災害対策にも柔軟に対応できます。但し、カスタマイズには限りがあり、データ管理はベンダーのセキュリティに依存します。

一方、オンプレミス型は自社内にサーバを設置して管理・運用する形式です。柔軟なカスタマイズが可能で、データも自社で管理できますが、導入費用が高く、IT人材の確保や保守体制が必要です。

中小企業にとっては、コストや運用の負担が少ない「クラウド型」の方が導入しやすい選択肢といえるでしょう。

汎用型と業種特化型

ERPは、対応する業種や業務範囲により、「汎用型」と「業種特化型」にも分類されます。汎用型ERPは、人事・財務販売・在庫などの基本的な業務機能を備えており、業種を問わず幅広く利用できます。将来的に多角的に事業展開を予定している企業や、柔軟な運用を望む企業に適しています。

対して、業種特化型ERPは、特定の業界フローや法令対応などに合わせて設計されています。例えば、建設・医療・製造・流通といった業種には、それぞれ特有の管理項目やルールがあり、これに対応する形で構築された業種特化型ERPであれば、導入や運用がスムーズでカスタマイズも最小限で済みます。

業界特有の要件や複雑な業務が多い企業には、業種特化型が適している可能性が高いです。 /div>
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まとめ

ERPは、企業の経営資源といえる多様な業務と情報を一元化し、経営効率と精度を最適化するためのシステムや考え方です。情報の分散による無駄やミスを防ぎ、部門間の連携をスムーズにすることで、組織全体の生産性向上に寄与します。

近年では、大企業に限らず中小企業においてもERPの導入が進み、業務の見える化と最適化を実現する手段として注目されています。自社の課題や目的に合ったERPを選定・導入し、将来的な成長に向けた経営基盤の強化を目指しましょう。
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Slopebaseとは

バックオフィス業務の
支出管理を支援する、
支出管理クラウド

Slopebase スロープベース

※バックオフィス業務とは経理や総務、人事、法務、財務などといった直接顧客と対峙することの無い社内向け業務全般を行う職種や業務のこと

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この記事を書いた人

金田サトシ
国立大学を卒業後、外資系IT企業でSaaSアプリケーション(ERP/SCMなど)やセキュリティ系コンサルタントとして約15年の実績あり。ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、情報処理安全確保支援士の情報処理資格を取得済み。自身の経験と体系的な知識をもとに、IT系全般をカバーするテクニカルライターとして、リアリティがありつつわかりやすい記事を多数執筆。 
北川 希
監修
北川 希

デジタルマーケティングやIT領域を中心に、年間200本超のライティング、100本以上の編集を担当。特に基幹業務系ソリューションやITインフラ、情報セキュリティに関する技術解説や導入メリット、導入事例に精通し、企業のDX推進や業務効率化に関する専門記事を多数執筆。行動経済学の知見をベースに、専門的なテーマでも初心者から専門職層まで伝わる記事作成・編集を実施。

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