あらゆる業界で役立つ品質管理の考え方~製造業以外でも有効!~

本記事は2025/09/08に更新しております。
あらゆる業界で役立つ品質管理の考え方~製造業以外でも有効!~
品質管理は製造業をはじめ、サービス業、小売業、医療、介護など幅広い業界で実践できる取り組みです。

本記事では、品質管理の基本的な考え方や重要性を解説した上で、代表的なフレームワークや具体的な事例、導入のステップをご紹介します。自社に品質管理を導入し、より高い価値の提供と事業の成長につなげるための参考にしてください。

01

品質管理とは? - モノづくりだけではない、ビジネス全体の「質」を高める活動

品質管理とは、企業が提供する製品やサービスの品質を維持し向上させていくための活動です。良質な製品やサービスを継続的に提供することで、顧客満足度と業績の向上が期待できます。「QC(Quality Control)」とも呼ばれ、企業における基本的な活動のひとつです。

品質管理では、企業活動における多種多様な「質」が問われます。具体的には、次のような項目が挙げられます。

・製品
・サービス
・業務プロセス
・人材の育成

製品やサービスの品質には、性能や機能だけでなく、使いやすさやデザイン、安全性といった項目も含まれます。

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02

なぜ今、製造業以外でも「品質管理」の視点が不可欠なのか?

品質管理の視点は、製造業以外の業種でも重視されています。以下のような背景から、品質管理が企業の信頼性や競争力を左右する重要な経営課題となっているためです。

・顧客ニーズや要求水準の高度化
・市場競争の激化
・SNS等による評判の迅速な拡散
・社会におけるコンプライアンス意識の高まり

ここからは、製造業以外の企業においても品質管理が必要とされる4つの理由と、導入するメリットを解説します。

顧客満足度の向上と良質な顧客体験の提供による、売上や評価の向上

品質管理が求められる大きな理由のひとつが、顧客満足度の向上です。顧客の期待に応え、あるいは期待を上回る品質を提供することで、顧客の満足度が高まり、自社への信頼にもつながります。

具体的には、以下のようなプラスの効果が期待できるでしょう。

・リピート購入の増加による安定した売上の確保
・関連商品やサービスの追加購入による売上アップ
・口コミやSNSでの高評価による新規顧客の獲得や売上増
・競合他社からの乗り換えによる顧客基盤の拡大

これにより、自社の製品やサービスに対して信頼と愛着を持つ「ロイヤルカスタマー」の増加も実現できます。

適切な品質管理は、貴社と顧客との長期的な関係構築の基盤となる重要な取り組みです。

コスト削減と生産性向上

品質管理はコスト削減や生産性向上にも直結します。ミスや不具合を未然に防ぎ、手戻りやトラブル対応を減らすことで、効率的に高品質の製品やサービスを提供できます。

例えば、以下のような取り組みが有効です。

・企業の目的・目標・パーパス(社会的意義や志)の共有
・業務プロセスや作業の標準化・効率化
・IT技術の積極的な活用
これらの取り組みにより、無駄のない効率的な業務運営が実現し、コストを抑えながら高品質を維持する体制を整えることができます。

企業ブランドイメージと信頼性の向上

品質管理を徹底し、常に高品質な製品・サービスを提供し続けることで、企業ブランドや市場における信頼を高めることにもつながります。

品質の高さによって、ステータスや満足感を重視する顧客層からの支持も得やすくなるでしょう。

従業員のモチベーションとスキル向上

品質管理の基準は常に高めていくことが可能です。従業員がより良い製品やサービスを追求し、品質向上への取り組みを続ける中で成長を実感し、スキルアップにもつながります。その結果、仕事への意欲が高まり、従業員のプロ意識や責任感の向上にも寄与します。

これも品質管理が企業にとって重要とされる理由のひとつです。
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03

品質管理の基本となる考え方と代表的なフレームワーク

ここからは、品質管理を実践する上で基礎となる重要な考え方や、世界的に活用されている代表的な手法・フレームワークをご紹介します。

PDCAサイクル:継続的な改善のエンジン

PDCAサイクルは、品質管理でよく使われる手法です。以下の1番から4番のサイクルを回し続けることで、継続した改善や効率化を進められるとともに、品質管理のレベルアップも実現できます。

順番 項目 内容
1 Plan
(計画)
目標と期間を明確にした上で、計画を立案する。目標の設定には、目的を明確にすることが重要
2 Do
(実行)
決定した計画に沿って実行する。活動記録や課題も記録する
3 Check
(評価)
結果を評価して、影響した要因を分析する
4 Action
(改善)
評価に基づき、計画の修正や改善案の検討を行う

一度の取り組みですべてうまくいくケースは多くありません。

失敗や課題の発生を恐れず、繰り返しPDCAサイクルを回し続けることが重要です。

QC七つ道具:データに基づき問題を「見える化」する

QC七つ道具とは、データをもとに問題を「見える化」するツール群です。客観的なデータに基づいて問題の原因を分析でき、効果的な対策の立案と実行につながります。

QC七つ道具に含まれるツールは、以下の通りです。

ツール名 ツールの特徴
パレート図 棒グラフと折れ線グラフの組み合わせ。項目の重要度や全体に及ぼす影響がわかる。ABC分析にも活用可能
特性要因図 魚の骨のような形の図。因果関係を整理して原因を知る目的で活用される
グラフ 棒グラフ、円グラフ、折れ線グラフなど。項目どうしの比較や時間の経過による変化、全体的な傾向を知る目的で用いられる
ヒストグラム 度数分布表をグラフ化したもの。データのばらつきや分布状況を知るために使用される
散布図 計測値ごとに点を記して作成するグラフ。2つの項目の相関関係を把握できる
管理図 継続して計測した値を、折れ線グラフを用いて結ぶ。品質や工程の状況を可視化し、異常な状態を早期に発見することが可能
チェックシート 表を用いて、確認した値やデータを記録する。作業内容の点検やチェック、問題の解決に向けた情報収集などに用いられる
業務内容や目的に応じて、適切なツールを選ぶことが重要です。

5S活動:品質を生み出す「場」づくり

5S活動は、職場環境を整え、良質な品質を生み出す「良い現場」を作るための取り組みです。以下に挙げる5つの取り組みの頭文字から、「5S」と呼ばれます。

取り組み 内容
整理 必要なものと不要なものを区別し、作業スペースを確保する。捨てるルールを定めることも重要
整頓 物の定位置を決め、使った後は必ず元に戻す。探す時間を極小化することが目的
清掃 機器や道具、設備を清掃しを清掃し、異常の有無を点検する
清潔 整理・整頓・清掃を常に行い、きれいな状態を保つ
しつけ 5Sの目的を共有し、従業員が自発的に取り組むよう習慣化する

5S活動の実践により、ミスの防止や職場の安全確保、作業効率の向上が図れます。

結果として、コストの削減や生産性向上、働きやすい職場環境の実現につながるでしょう。

TQM(Total Quality Management):全員参加の品質経営

TQMは「総合的品質管理」と呼ばれ、顧客満足の実現を最終目標として、企業全体品質向上に取り組む考え方です。「企業におけるすべての活動が、最終的な製品やサービスの品質を決める」という考え方に基づいています。

TQMでは、製品やサービスそのものだけでなく、働き方や組織の運営方法も対象です。

実践することで、品質や生産性、顧客満足度の向上のほか、企業全体の競争力や収益力の強化も期待できます。

ISO9001:品質マネジメントシステムの国際規格

ISO9001は、品質管理の仕組みに関する国際的な基準です。品質管理の仕組みが適切に構築・運用されていることを第三者機関が認証します。

認証を取得することで、確かな製品やサービスを提供する企業であることを社外に表明でき、信頼性を高めることが可能です。

顧客の要求に対して真摯に対応し、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
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04

【業界別】品質管理の視点と応用事例 - あなたの業界ではどう活かす?

品質管理は製造業以外の業界でも注目され、活用が進んでいます。ここからは、4つの業界を例に、品質管理の具体的な応用事例をご紹介します。

サービス業(例:ホテル、飲食店、コールセンター)

サービス業でも品質管理を取り入れることで、サービス品質の向上や業務効率化を実現することが可能です。ホテルや飲食店、コールセンターでは、以下のように活用されています。

・ホテルの宴会業務で5S活動を導入し、作業スピードが約17%改善。従業員の働きやすさも向上した
・寿司チェーンにおけるアンケートを電子化したことで、顧客の声に対して迅速な対応を実現した
・コールセンターの応対内容をマニュアル化し、モニタリング指標を設定して1年間管理。統一感のあるコミュニケーションと、感じの良い対応ができるようになった

IT・ソフトウェア開発

ITやソフトウェア開発業務でも、品質管理は欠かせません。開発業務では、「プロジェクト品質マネジメント」と呼ばれる場合もあります。活用事例は、以下の通りです。

・アジャイル開発のプロジェクトで品質管理を導入。テストコードを作成しながら段階的に開発を進め、顧客による仕様確認レビュも実施。コーディングの品質が向上し、バグの数が5~7割減少。開発工数も1割減少した
・生産管理システム開発の各プロセスにおいて、定量的な品質管理を実施。バグの多いシステムを見つけ、重点的にテストを行えるようになった
・金融機関向けシステムのテスト工程にて、3種類の品質管理(個別障害・機能別・システム全体)を実施。ユーザーから高い満足度を得ることができた

小売業

小売業でもさまざまな業態や業務で品質管理の考え方を取り入れ、業務改善や顧客満足度の向上を図っています。以下はその具体例です。

・ベビー用品販売企業では、品質管理基準に適合しない製品は一切納入せず、リコール発生時には迅速な購入者へ通知を実施。その取り組みが評価され、経済産業省「PSアワード2022」を受賞
・スーパーでRFID(電波を使用してICタグの情報を非接触・一括で読み取れる自動認識技術)を導入。棚卸作業の短縮(40時間から3時間)だけでなく、チャンスロスの防止や顧客対応に集中できる店舗環境づくりを実現した
・大手ホームセンターでは、販売した製品の不具合に対し、役員が率いる専任組織を設置。販売台数の多いエリアには回収専用トラックを配置し、回収開始からわずか10日間で、全体の94.2%を回収した

医療・介護

医療や介護の現場でも、安全・安心なサービス提供のために品質管理が求められています。以下に応用事例をご紹介します。

・病院の受付・会計業務でQCサークル活動を実施。案内のわかりやすさの改善や、面会許可証の返却箱を設置するなどの施策により、年間で約350時間の効率化を実現。空いた時間でより丁寧な患者対応が可能に
・介護施設における「職員による対応のばらつき」という課題に対し、特性要因図を用いた原因分析を実施。マニュアル整備によりサービス品質を統一し、職員間のコミュニケーションも活発化
・病院経営のガバナンス強化の一環として、ISO9001を導入。院内ルールの文書化と月次の内部監査を徹底し、職員の文書管理意識も向上。組織全体の統制力が高まった
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中小企業が「品質管理」を導入・推進するためのステップ

品質管理の重要性は理解しているけれど専門の部署が無くてどう進めればよいか悩む中小企業も多いでしょう。専門部署が無い場合でも、品質管理の導入や推進は十分に可能です。

ここでは、5つのステップに沿って品質管理を進める方法をご紹介します。

STEP1: まずは自社の「品質課題」を特定する

正しい品質管理の実施において、現状の正確な認識は重要です。以下の項目を洗い出し、改善すべき課題を明確にしましょう。

・競合他社や過去と比較した、製品やサービスの品質レベル
・ミスやヒヤリハットの内容や原因
・顧客からの要望やクレームの内容
・非効率な業務の内容
・ボトルネックとなっている業務や要因
企業によっては、課題が多数発生するかもしれません。その場合は業績や顧客に与える影響をもとに、優先順位をつけると良いでしょう。

STEP2: 目標を設定し、客観的に評価できる指標を設定する

品質に関する課題を特定した後は、具体的な品質目標を設定します。以下のように、数値で示すと評価しやすいためおすすめです。

・自社が原因となる事故を0件にする
・クレームの件数を50%削減する
・コールセンターの応答率を90%以上に保つ
・顧客ロイヤルティを測る指標「NPS」をプラスにする
設定した目標は社内で共有し、従業員が業務を進める際の指針としましょう。

STEP3: 小さな範囲でPDCAを始めてみる

一度で全社的な品質管理を完璧に進めるのは難しいため、まずは社特定の部署やサービス、業務プロセスに絞って取り組むと効率的です。

実際に品質管理を進める中で、予想外の課題が発生するかもしれません。

ひとつずつ解決しながら、他の部署や業務へと犯意を広げていくと良いでしょう。

STEP4: 従業員への意識づけと簡単なツールの活用

品質管理の成功には、現場で業務に携わる従業員の積極的な取り組みが不可欠です。従業員に対する説明を入念に行い、品質管理に対する意識を高めましょう。

品質管理に取り組んだ結果の可視化は、モチベーションのアップにつながります。

QC七つ道具などの簡単なツールを活用することもおすすめです。

STEP5: 結果を評価しさらなる改善・改良を目指す

品質管理への取り組みを評価することは、今後の進め方を検討する上で重要です。取り組みがうまくいったのか、うまくいかなかった場合は何が原因か分析しましょう。

評価をもとに改善や改良を加えることで、貴社の製品やサービスの品質をアップできます。競合他社よりも優位な立場を得やすくなるはずです。
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まとめ

品質管理はあらゆる業界で有効な取り組みです。より良い価値の提供と企業イメージの向上、収益の拡大といった効果をもたらします。もちろん生産性向上や従業員の満足度向上といったメリットも見逃せません。

企業が市場競争で勝ち抜くためには、高い品質の提供が不可欠です。できることから品質管理に取り組み、価値の高い製品やサービスの提供を実現することで、顧客や従業員から支持される企業を目指しましょう。
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この記事を書いた人

稗田恵一 
大学ではAIの基盤となるニューラルネットワークについて学び、その後、IT業界14年、設備管理業務2年の経験を有する。うち10年間は会計・人事・給与業務のパッケージ企業において、企業向けのカスタマーサポートやシステム提案業務、自社のシステム管理業務に携わる。2017年より執筆業務を始め、BtoBの分野を中心に多数執筆。記事のわかりやすさには定評がある。 
北川 希
監修
北川 希

デジタルマーケティングやIT領域を中心に、年間200本超のライティング、100本以上の編集を担当。特に基幹業務系ソリューションやITインフラ、情報セキュリティに関する技術解説や導入メリット、導入事例に精通し、企業のDX推進や業務効率化に関する専門記事を多数執筆。行動経済学の知見をベースに、専門的なテーマでも初心者から専門職層まで伝わる記事作成・編集を実施。

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