RFM分析をマーケティングに活用してリピート率を高める具体的なアプローチ

本記事は2025/09/10に更新しております。
RFM分析をマーケティングに活用してリピート率を高める具体的なアプローチ
中小メーカーにとって、新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストの5倍にもなるとされています。限られたマーケティング予算の中で売上を安定的に確保するには、既存顧客との関係を深め、リピート購入を促進する必要があります。

そこで有用なのが「RFM分析」です。

RFM分析は、顧客の購買行動を3つの指標で数値化し、グループ分けする手法です。本記事では、RFM分析のイメージを掴んでいただくために、具体的例を豊富に盛り込みながら解説します。

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RFM分析とは「3つの指標」で顧客の現況を把握する分析手法

RFM分析は、顧客の購買データから「どの顧客が自社にとって重要か」を定量的に評価します。

RFM分析とは

RFM分析は、顧客の購買行動を表す「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「累計購入金額(Monetary)」という3つの指標で顧客をグループ分けする分析手法です。

これら3つの指標の頭文字から、RFMと略して呼ばれています。

単に、売上金額だけで顧客を評価するのではなく、直近の購入日や購入頻度まで分析することで、顧客のニーズに合わせたセグメンテーションが可能となり、顧客満足度とLTVを高めるメリットがあります。

R (Recency):最終購入日

Recency(最終購入日)は、顧客が最後にいつ購入したかを示す指標です。最終購入日からの経過時間が短い顧客ほど高く評価されます。

例えば、直近30日以内に購入があった顧客は、今後も継続的に購入してくれる見込みが高いと考えられます。一方、最終購入日が180日以上前の顧客は、既に他社に乗り換えているか、そもそものニーズが変化している可能性があります。このような顧客には、通常のマーケティング施策よりも「呼び戻し」に特化したアプローチが必要となります。

尚、業種によって「最近」の基準は大きく異なります。日用品のような消耗品を扱う企業では30日、家電のような耐久財を扱う企業では1年から数年といった具合に、自社の商品特性に応じて適切な基準を設定することが重要です。

F (Frequency):購入頻度

Frequency(購入頻度)は、一定期間内に顧客が何回購入したかを示す指標です。購入回数の多い顧客ほどスコアは高くなります。
継続的に商品を選んでくれるということは、品質やサービスに満足している証拠であり、今後も安定した売上貢献が期待できる重要な顧客層です。

そのため、新商品の案内や関連商品の提案に対しても反応が良く、クロスセルやアップセルの成功確率が高いという特徴があります。一方、購入頻度が低い顧客に対しては、まず、購買習慣の定着を促す施策が必要となります。

M (Monetary):累計購入金額

Monetary(累計購入金額)は、一定期間内に顧客が購入した金額の合計を示す指標です。累計購入金額の高い顧客ほどスコアが高くなります。

この指標は、顧客の売上への直接的な貢献度を表しており、企業にとって、特に価値の高い顧客を特定するために不可欠です。例えば、顧客単価が1万円であれば、直近1年間で10万円以上の購入実績がある顧客は、明らかに自社の重要顧客として位置づけるべきでしょう。

但し、Monetary単体では顧客の全体像は見えません。例えば、過去に一度だけ高額商品を購入した顧客と、継続的に商品を購入し続けて結果的に高額になった顧客では、今後の購買可能性は大きく異なります。

RとFの指標と組み合わせて評価することで、売上も購入頻度も高い「優良顧客」と、「過去に大量に購入してくれたものの、現在は購買していない休眠顧客」を把握し、それぞれに適した施策を検討できます。

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ExcelでもできるRFM分析の具体的な進め方

RFM分析は専門的なツールがなくても、Excelを使って手軽に実践できます。ここでは、販売データからRFM分析を行い、実際に顧客セグメンテーションを実施するまでの具体的な手順を、段階的に解説します。

ステップ1:顧客データの準備

まず、RFM分析に必要な顧客の購買データを準備します。最低限必要なデータは、「顧客ID」「購入日」「購入金額」の3つです。

データの抽出元としては、販売管理システム、ECサイトの管理画面、POSシステムなどが考えられます。複数の販売チャネルがある場合は、全チャネルのデータを統合して分析することが重要です。

尚、データの品質が分析結果を大きく左右するため、事前に以下の2つの処理を行うと良いでしょう。

・顧客の名寄せ:同一顧客が異なるIDで登録されている場合は、事前に統合処理を行う。
・データクレンジング:入力ミスや表記揺れを修正。正確なデータに整える。

データが準備できたら、Excelのピボットテーブル機能を使って顧客ごとに集計します。行ラベルに「顧客ID」、値フィールドに「最終購入日(最大)」「注文回数(件数)」「購入金額(合計)」を配置しましょう。

ステップ2:R・F・Mのスコアリング

データの準備が完了したら、各指標について顧客を3~5段階程度のランクに分ける作業を行います。ランク分けの基準は、自社の顧客データの分布を確認しながら、適宜調整してください。

以下は、中小メーカーでの実用的なスコアリング基準例です。

表1:RFMスコアリング基準例(5段階評価)

スコア Recency(最終購入日) Frequency(購入回数) Monetary(累計購入金額)
5 30日以内 10回以上 20万円以上
4 31-60日以内 7-9回 15-19万円
3 61-120日以内 4-6回 10-14万円
2 121-180日以内 2-3回 5-9万円
1 181日以上 1回 5万円未満

この基準は一例です。実際には自社の顧客データの分布に基づいて調整する必要があります。例えば、四分位数を利用して、各ランクの顧客数が均等になるよう設定する方法や、ビジネス上の重要な閾値(例:年間10万円以上の顧客を重視)に基づいて設定する方法があります。

Excelでのスコア算出には、IF関数を使用します。例えば、R(最終購入日)値のスコア算出式は以下のようになります。

=IF(経過日数<=30,5,IF(経過日数<=60,4,IF(経過日数<=120,3,IF(経過日数<=180,2,1))))
※『経過日数』には対象セルのホームポジション(A1,B2など)を代入してください。

このような関数を各指標について作成し、全顧客にR・F・Mスコアを付与します。

ステップ3:RFMスコアの算出と顧客セグメンテーション

各顧客にR・F・Mスコアが付与されたら、これらを組み合わせて顧客をセグメント分類します。最も一般的な方法は、RとFの2軸でマトリクスを作成し、顧客を分類する手法です(RF分布)。

Excelのピボットテーブルを活用して、行にRスコア、列にFスコア、値に顧客数を配置すれば、R×Fマトリクスが簡単に作成できます。このマトリクスから、以下のような顧客セグメントを定義できます。

表2:顧客セグメント分類と特徴

セグメント名 R F M 特徴 推定割合
優良顧客 最近も頻繁に高額購入している最重要顧客 5-10%
安定顧客 中-高中-高中-高 継続的に購入してくれる安定した顧客層 15-20%
新規顧客 最近初回購入した顧客(今後に期待) 20-25%
休眠予備軍 中-高 以前は頻繁だったが最近購入が減っている 10-15%
休眠顧客 低-中低-中 長期間購入がない顧客(掘り起こし対象) 30-40%

このセグメンテーション結果により、自社の顧客構造が可視化されます。

例えば、「新規顧客が多いもののリピート率が低い」場合は、「リピート購入の促進」が最優先課題と言えるでしょう。逆に、「優良顧客の割合が極端に少ない」場合は、「既存顧客の育成戦略の見直し」が必要かもしれません。

このように、データに基づく現状把握により、効果的な戦略の方向性が定まります。

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RMF分析の結果を活かしたリピート率向上施策

RFM分析によって顧客をセグメント分類したら、各グループの特性に応じた最適なマーケティング施策を展開することで、効率的にリピート率を向上させることができます。

一律のアプローチではなく、顧客の購買状況や心理状態に合わせて施策を差別化することが、成果を最大化するポイントです。ここでは、主要なセグメントごとに具体的な施策例を解説します。

『優良顧客』特別な関係を築き、LTVを最大化する

優良顧客は、R・F・Mすべてのスコアが高い最重要顧客層です。全顧客の5-10%程度の少数精鋭ですが、売上の30-50%を占めることも珍しくありません。この層の維持と満足度向上が、業績に直結します。

『優良顧客』への具体的な施策例

・VIP会員制度の導入
・個別アプローチ(個別のお礼メールや手書きのサンクスカード、定期的なフォローコールなど)
・限定イベントへの招待
・専任担当者によるサポート

注意点として、優良顧客であっても過度なアプローチは、逆効果となる可能性があります。

適切な頻度とタイミングでコミュニケーションを行いましょう。

『安定顧客』もう一歩の施策で優良顧客へ育成

安定顧客は、継続的に購入してくれる中核顧客層です。優良顧客ほどではないものの、安定した売上貢献が期待できる重要なセグメントです。この層を優良顧客へと押し上げることで、売上の底上げが図れます。

『安定顧客』への具体的な施策例

・クロスセル・アップセルの推進(購入履歴に応じて「前回ご購入の○○に合わせて△△もいかがですか?」などの提案メール)
・セット購入割引キャンペーン
・定期的な情報提供
・購入金額に応じたインセンティブ(「あと○円の購入でゴールド会員にランクアップ」と具体的な目標を提示)

この層への施策では、押し売り感を与えないよう注意が必要です。

顧客の興味・関心に基づいた価値ある提案を心がけ、信頼関係を深めることに注力しましょう。

『新規顧客』最初の体験を最高のものにする

新規顧客は、最近初めて購入した顧客層です。R(最近性)は高いものの、F(頻度)とM(金額)は低い状況です。この層のリピート率をいかに高めるかが、将来の売上拡大に直結します。

『新規顧客』への具体的な施策例

・次回購入クーポンの提供(初回購入のお礼と共に、「○日以内限定○%OFF」や「次回使える500円クーポン」を案内)
・オンボーディングの充実(商品の使い方ガイド、活用事例、メンテナンス方法などを丁寧に説明)
・フォローアップメールの配信(購入後1週間、1ヶ月のタイミングで「使い心地はいかがですか?」といったフォローメールを送り、不安や疑問を解消)
・レビュー投稿の促進

新規顧客への施策で最も重要なのは、初回購入体験の質を高めることです。

商品の梱包、同梱物、配送スピード、アフターサポートなど、すべての接点で良い印象を与えることが、長期的な関係構築の基盤となります。

『休眠顧客(予備軍含む)』呼び覚ますためのアプローチ

休眠顧客は、過去に購入履歴があるものの、長期間購入が途絶えている顧客層です。適切なアプローチで再購入につなげましょう。

『休眠顧客』への具体的な施策例

・限定復帰キャンペーン(「お久しぶりです」というメッセージと共に「復帰特典として○月限定30%OFF」といった限定オファー)
・新商品・リニューアル情報の案内
・まずはメルマガ登録やカタログ請求につなげる

休眠顧客への施策では、しつこくならないよう注意が必要です。

一定期間反応がなければ、アプローチ頻度を下げるか、一時的に施策を停止することも考慮しましょう。
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RFM分析を成功させるためのポイント3選

これらのポイントを押さえることで、RFM分析の精度と施策の効果を向上できます。

ポイント①分析の目的を明確にする

RFM分析を始める前に、「何を明らかにしたいのか」「どのような施策につなげたいのか」を明確に設定することが重要です。

そのために「リピート率30%向上」「休眠顧客100人の掘り起こし」「新規顧客の2回目購入率50%達成」といった具体的なKPIを設定しましょう。目的が明確になれば、どのセグメントに重点的にリソースを配分すべきか自ずと決まります。

また、分析結果を誰がどのように活用するかも事前に決めておくことが大切です。

営業チーム、マーケティングチーム、カスタマーサポートチームなど、関係部門との連携体制を整えることで、分析結果を確実に施策に反映できます。

ポイント②:定期的にスコアリングの基準を見直す

RFM分析のスコアリング基準は定期的に見直しましょう。「最近」「頻繁」「高額」の意味合いは、市場環境の変化や顧客行動の変化、季節要因などにより変動するためです。

例えば、コロナ禍のような大きな環境変化があった場合など、従来の基準では適切な評価ができないケースがあります。

また、新商品の投入や価格改定により、購買パターンが変化することもあります。

ポイント③:他のデータとの組み合わせる

RFM分析だけでは「なぜ顧客が頻繁に購入するのか」「どのような商品を好むのか」といった深層的な理由は分かりません。そこで、顧客属性データや商品カテゴリデータ、Webサイト行動履歴などと組み合わせることで、より深い洞察を得られます。

例えば、優良顧客の年齢層や居住地域、購入商品の傾向を分析すれば、新規顧客獲得のターゲティングに応用できるでしょう。

特に有効なのは、以下のようなクロス分析です。

・RFM × 年齢・性別:世代別の購買特性を把握
・RFM × 商品カテゴリ:商品嗜好による顧客分類
・RFM × 購入チャネル:オンライン・オフラインの使い分け傾向
・RFM × 季節要因:時期による購買行動の変化
このような多角的な分析により、単なる数値の分類を超えた、顧客の「人となり」を理解することができます。
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まとめ

RFM分析は、「Recency(最終購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(購入金額)」の3つの指標で顧客をスコアリングし、グループ分けする分析手法です。
RFMの指標に基づいて割り振った各セグメントに対し、最適化した施策を打つことでリピート率向上につながります。
データドリブンなアプローチで、顧客ロイヤルティを高めていきましょう。
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この記事を書いた人

永瀬よしつぐ
Webライター。BtoB領域を専門とし、主にクラウドインフラ、SFA/CRM、ECに関する記事の執筆を手がける。これまで10社以上のBtoB企業のオウンドメディア立ち上げ・運営に従事。メルマガ、LP、SEO記事など発信媒体に合わせ専門領域の技術を分かりやすく解説し、BtoBマーケティングのリード獲得をサポートする。
田中雅人(ITコンサルタント)
監修
田中雅人(ITコンサルタント)

ソフトウェアメーカー取締役、IT上場企業の取締役を経て、現在、合同会社アンプラグド代表。これまでに、Webサイト制作、大規模システム開発、ECサイト構築、SEM、CRM、等のWebマーケティングなど、IT戦略全般のコンサルティングを30年以上実施。現在は、大手上場企業から中小企業まで、IT全般のコンサルティングを行っているかたわらWebマーケティングに関するeラーニングの講師、コラム執筆なども実施。

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