エクセル在庫管理表の限界とは? より効率的な管理方法を探る

本記事は2025/09/16に更新しております。
エクセル在庫管理表の限界とは? より効率的な管理方法を探る
在庫管理は、中小メーカーの事業運営において欠かせない業務です。手軽さとコストの低さから、Excelで在庫管理表を運用されている企業も多いです。

しかし、事業拡大や取り扱い商品の増加といった理由から、Excelによる在庫管理の限界を感じるシーンもあるかもしれません。本記事では、Excel在庫管理表の課題と、より効率的な管理手法について詳しく解説します。

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【「とりあえずExcelで…」は危険】Excelでの在庫管理の課題5選

導入のしやすさから在庫管理にExcelを活用している企業も少なくありません。しかし「とりあえずExcelで管理しよう」という考えで始めた在庫管理が、思わぬ落とし穴を生んでいるケースがあります。ここでは、在庫管理の課題について5つの観点で解説するので、参考にしてみてください。

課題①:リアルタイム性が低く、最新の在庫数がわからない

Excelによる在庫管理では、リアルタイムでの情報更新が困難という課題があります。一人がファイルを開いていると他の担当者は編集できないため、入力のタイミングがずれると今どれだけ在庫があるか分からない状態が頻発します。共同編集という機能もありますが、一部機能が制限されたり、同時編集時にエラーが出たりすることがあります。

具体的には、以下のような問題が懸念材料です。

・倉庫担当者がファイルを更新し忘れる
・在庫表をコピーして別々に作業してしまい、どちらが最新版か分からなくなる
・複数拠点でのデータ共有にタイムラグが生じる
結果、正確な在庫数の把握ができず、リアルタイムな在庫管理を妨げる要因となってしまいます。

課題②:ヒューマンエラー(入力ミス・計算ミス・更新漏れ)の温床になる

Excelでの手入力には常にミスのリスクが付きまといます。実際の現場では「入力ミスで在庫がマイナス表示になった」「転記漏れで発注が遅れた」といった声も多く聞かれます。

主なヒューマンエラーの例としては以下のようなものがあります。

・数値の打ち間違いや転記漏れ
・計算式の設定ミスや破損 ・単位の間違い(個数と箱数の混同など)
・更新作業の忘れや遅れ
結果的に、欠品や納期遅延につながり、余計なコストを増やすことになるケースもあります。

課題③:担当者しか分からない項目の発生

Excelは自由にカスタマイズできる反面、作った本人しか分からないという属人化が起こりやすいです。現場では担当者ごとにフォーマットを勝手に改変して使ってしまうケースも珍しくありません。

管理担当者の属人化により、以下の問題が生じます。

・誰がどこをどう修正したか履歴を追うことが難しい
・作成者が退職すると修正もできないブラックボックス状態になる
・また、引き継ぎが不十分だと社内の誰にも扱えない状態になる
結果的に、在庫管理の信頼性に大きな課題を抱えることになります。

課題④:ファイルを探す手間が発生、同時アクセス不可など情報共有が非効率に

複数人でExcelファイルを共有することで以下のような問題が起こります。

・最後に誰が更新したか分からない
・共同編集機能を使用しない場合、ファイルが開きっぱなしで編集待ちになる
・最新版のファイルがどれか分からない

これらのトラブルは日常業務の足かせになり、大幅な業務効率の低下を招きます。

共有ブック機能もありますが、更新のタイムラグやファイル破損の恐れがあり、完全な解決策とはいえません。

課題⑤:適正在庫の把握や需要予測など、データの活用が困難

Excelは本来表計算ソフトであり、データベースのように大量データを継続的に扱うことには適していません。商品点数や取引履歴が増えると動作が重くなり、再計算に時間がかかるケースもあります。

また、蓄積されたデータを活用した以下の分析への対応も十分とは言えません。

・過去の需要データに基づく適正在庫の算出
・季節変動を考慮した需要予測
・商品別の回転率分析
・ABC分析による重要度の分類
データ活用による経営改善の機会を逸している企業も多いのではないでしょうか。
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「在庫管理の精度」は中小メーカーの生命線

在庫管理の甘さは経営にマイナスの影響を与えます。具体的な理由を見ていきましょう。

まず、欠品による機会損失・信用低下が挙げられます。例えば、製造業では欠品が原因で生産ラインが止まるケースもあり、緊急手配による調達コスト増大や納期遅延で取引先からの信用を損ねる恐れもあります。

過剰在庫による資金繰り悪化も問題です。需要予測の誤りなどで売れ残りの商品を抱え過ぎると、余分な在庫を抱えることとなり経営を圧迫します。保管にもコストがかかり、賞味期限や型落ちによる廃棄リスクも懸念材料です。

在庫データ不備による業務停滞のリスクがあることも問題です。在庫数や所在の記録が不正確だと、どの商品がどれだけ残っているか分からず、現場作業が滞ります。注文に対して出荷できるか即答できなかったり、倉庫内で商品を探し回る時間が増えたりと、業務効率が大幅に低下します。

ある企業の調査では、8割近い企業が「人手頼みの在庫管理に不安を感じる」と回答していて、在庫管理の精度向上は中小メーカーにとって急務の課題といえます。

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【脱Excel】在庫管理を効率化・高度化する3つの選択肢

Excelから脱却し、在庫管理精度を向上させるために考えられる代替手段を3つ紹介します。それぞれの特徴とメリットを詳しくみていきましょう。

選択肢①: 在庫管理システムの導入

第一の選択肢に上げられるのが、在庫管理に特化したパッケージソフトや倉庫管理システム(WMS)の導入です。自社サーバーにシステムを構築するオンプレミス型では、自社業務に合わせたカスタマイズが可能で、高度な機能やセキュリティ対策を実装できます。

主な機能と効果:
・バーコードやハンディターミナルと連動した入出庫管理
・在庫のリアルタイム更新
・権限管理や操作ログによる不正防止
・需要予測や発注管理
・ロット・シリアル管理

現場作業を大幅に効率化できる一方で、初期費用が高額になりがちで、導入までに時間がかかる場合が多く、ある程度規模の大きい企業向けといえます。

中小企業では、オーバースペックで費用対効果が合わない場合もあるので慎重な検討が必要です。

選択肢②: クラウド型在庫管理サービスの活用

近年は、クラウド型(SaaS)の在庫管理サービスが数多く提供されていて、中小企業にとって導入しやすい選択肢といえます。

クラウド型のメリット:
・高額な初期投資が不要
・自社でサーバーを用意する必要がない
・短期間で導入可能
・インターネット経由でどこからでも利用可能
・複数拠点でのリアルタイム情報共有が可能
・バージョンアップが自動で提供

クラウドサービスでは、スマホやタブレットから在庫を参照・登録できるものもあります。

また小規模から始めて、必要に応じて上位プランに移行できるのもクラウドサービスならではの利点です。

選択肢③: 販売管理システム・生産管理システムの在庫管理機能

既に導入している販売管理システムやERPなどの基幹業務システムの在庫管理機能を活用する方法もあります。

統合システム活用のメリット:
・受注データと連携した出荷
・在庫引当の自動化
・売上データから在庫回転率や粗利の分析
・販売・購買・財務情報とのリアルタイム整合
・二重入力やデータ不整合の削減

他業務とシームレスに連携した在庫管理により、業務効率を最大化することが期待できます。

また、グループウェアやノーコード/ローコード開発ツールを用いて、独自に在庫管理アプリを構築する選択もあります。

内製化すると手間はかかりますが、自社の業務フローに合わせたカスタマイズが可能です。
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Excelを使い続ける場合は、限界を知り、最大限活用する工夫

「今すぐ専用システムを入れるのは難しい…」という場合、既存のExcel在庫管理を工夫して精度向上を図りましょう。但し、Excelの使用範囲の限界を理解し、いずれはExcelからシステムに移行することを検討するのが望ましいでしょう。

Excelで在庫管理するにあたっての工夫を以下に紹介します。

1 関数やマクロによる自動計算

在庫数の算出は手計算ではなく、例えば、SUMIF関数などを用いて入庫数-出庫数を自動計算する仕組みを作りましょう。データを入力するだけで現在庫がリアルタイムに更新され、計算ミスも防げます。

2 データ入力ルールの徹底

入力ルールや手順を明確に定めておきましょう。例えば、「入出庫記録は必ず当日中に入力」「数量はダブルチェックする」「更新者の名前を記載する」など具体的なマニュアルを整備し、全員に徹底します。

3 入力支援機能の活用

Excelのデータ検証機能を使い、入力ミスを防ぎます。商品名やコードはドロップダウンリストから選択させることで、表記ゆれや入力間違いを防止できます。また、条件付き書式による発注アラートを設定すれば、見落としも減らせます。

4 ファイル共有とバックアップ

社内で最新の在庫ファイルを共有する際は、クラウドストレージ上のファイルを使い、一元管理と履歴管理を行いましょう。日次や週次でファイルのバックアップを取り、万一の破損や誤操作に備えることも大切です。

但し、こうした工夫で一時的に運用は改善できても、Excelの構造的な制約は完全には解消できません。例えば、従業員が5名を超えていたり、月間で取り扱うデータが1000件以上あったりする場合、人力でのチェックやルールを運用するには限界がきますので注意しましょう。

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中小メーカー向け在庫管理システム・サービスの選び方

いざExcelから脱却し在庫管理システムを導入する際は、自社に最適なツールを見極めましょう。システム選定時に注目すべきポイントを整理します。

ポイント①: 自社の業種や規模にマッチしているか

在庫管理の要件は業界によって様々です。食品業界なら賞味期限・ロット管理、アパレルならサイズ・色の管理が重要になるなど、業種特有の特性があります。

候補システムが自社業界の実績を持っているか、必要な機能を備えているかを確認しましょう。

ポイント②: 機能の過不足はないか

システムに求める機能要件をリストアップし、「必須機能」と「あれば便利な機能」を仕分けします。在庫の入出庫管理やロット管理、在庫分析レポート、自動発注アラート等、ニーズに応じて必要な機能は異なります。

多機能なシステムほど費用も高く操作も複雑になりやすいので、中小企業ならシンプルで必要最低限の機能に絞ることをおすすめします。

ポイント③: 操作はしやすいか(現場での実用に耐えうるか)

現場担当者が直感的に操作できるかどうかも重要です。複雑すぎるシステムは、現場で敬遠され、Excel管理に戻ってしまうリスクがあります。

実際の操作感を確認し、現場の意見も取り入れながら選定しましょう。

ポイント④: 導入・運用コストと費用対効果は見合っているか

イニシャルコスト・ランニングコストの予算感も考慮しましょう。オンプレミス型は、初期にまとまった投資が必要ですが、柔軟なカスタマイズが実現します。クラウド型は、初期費用が無料であったり低額で始められたりしますが、月額費用がかかります。

自社の予算や社内IT人材の有無によって適した形態も変わります。

ポイント⑤: サポート体制は充実しているか

導入後に十分なサポートが受けられるかも重要です。中小企業ではIT専門部署がない場合も多いので、ベンダーによる初期設定支援やトラブル対応、操作トレーニングの有無を確認しましょう。

信頼できるベンダーから必要な支援を受けながら導入を進めることで、失敗のリスクを下げられます。
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Excelからシステムにスムーズに移行する6ステップ

新しい在庫管理手法やシステムにスムーズに移行するための、一般的な手順と留意点を紹介します。

1. 要件定義と現状分析

まずは、現行の在庫管理プロセスを洗い出し、課題点と新システムに求める要件を明確に定義します。現場の担当者へのヒアリングを行い、どの業務でミスが起きているか、どの機能があれば便利かといった現場のニーズを反映させましょう。

2. システム選定とテスト

定義した要件に合うシステムをリストアップし、比較検討します。できれば複数ベンダーからデモや無料トライアルを活用し、実際の操作感を試して、自社データでの検証を行いましょう。

3. 導入計画の策定

システムが決まったら、導入スケジュールと移行方法を計画します。既存Excelからのデータ移行をどう行うか、並行稼働期間を設けるかなど、具体的な移行戦略を詰めます。

4. 導入作業と環境準備

計画に沿ってシステム導入作業を進めます。最初は、新システムへの移行が正常に行われているか検証するため、並行してExcelでも記録を残し、両者の在庫数が一致するか確認すると安心です。

5. 利用者への教育・トレーニング

システム導入後は、従業員への教育が重要になります。座学だけでなく実機を使ったハンズオントレーニングを行い、入出庫登録や在庫検索など日常業務の手順を体験させましょう。

6. 移行後のフォローと継続改善

システム稼働後しばらくは、定期的なフォローアップを行います。導入前に設定したKPIに照らし合わせて効果測定を行い、「在庫差異が○%減少した」「棚卸作業時間が○時間短縮できた」といった成果を定量的に評価しましょう。

移行を成功させる上で重要なのは、経営層と現場の双方のコミットメントです。経営層がリーダーシップを持って推進し支援することや、現場担当者が主体的に習熟に努めることの両輪が噛み合ってこそスムーズな定着が図れます。

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まとめ

Excelを使った在庫管理は手軽で導入コストもゼロと、中小企業にとって長年親しまれてきた方法です。しかし、事業環境の変化や規模拡大に伴いExcel管理にも限界を迎えつつあります。

リアルタイム性の不足や人為ミス、属人化によるブラックボックス化などのExcelの抱える課題を放置すると、機会損失や無駄なコスト、果ては企業の信用問題にも発展しかねません。

幸い現在は、中小企業でも導入しやすいクラウド型サービスをはじめ、様々な在庫管理ソリューションが登場していて、自社に合った方法でExcel頼みから脱却することで、在庫管理DXを進められます。

一度現場の課題と向き合い、より効率的で正確な在庫管理への改善に着手してみてはいかがでしょうか。
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Slopebaseとは

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この記事を書いた人

永瀬よしつぐ
Webライター。BtoB領域を専門とし、主にクラウドインフラ、SFA/CRM、ECに関する記事の執筆を手がける。これまで10社以上のBtoB企業のオウンドメディア立ち上げ・運営に従事。メルマガ、LP、SEO記事など発信媒体に合わせ専門領域の技術を分かりやすく解説し、BtoBマーケティングのリード獲得をサポートする。
佐藤大輔
監修
佐藤大輔

長年、経理業務に携わり、毎年の店舗の水道光熱費の使用料や過剰に使用している店舗への注意喚起などを促し赤字店舗の改革に努めた。また、企業のDX導入にも携わり、職員勤怠の電子化など、業務効率化を積極的に推進。現在は、企業コラム記事などを中心に年間100記事ほど執筆・監修を行っている。

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