「BPMとは」何か?業務プロセスを最適化し続けるマネジメント手法

本記事は2025/09/08に更新しております。
「BPMとは」何か?業務プロセスを最適化し続けるマネジメント手法
日々の業務を行う中で、「もっと効率的にできないだろうか」「なぜ同じミスが繰り返されるのだろうか」と感じたことはありませんか?企業や組織が、限られた人材と時間の中で成果を最大化するためには、業務そのものを見直し、継続的に改善していくことが重要です。

そこで有用なのが、「BPM(ビジネスプロセス管理)」という考え方です。BPMは、単なる業務改善にとどまらず、組織全体の生産性と柔軟性を高める仕組みとして注目されています。

本記事では、BPMの基本的な考え方や必要とされる背景、導入によるメリット、実施の流れ、支援ツール、導入を成功に導くためのポイントについて解説します。

01

業務プロセス自動化とは? ~定型業務をロボットにお任せ~

BPMは「Business Process Management」の略称であり、企業が目標達成のために、業務プロセス全体を継続的に見直し、最適化していくための体系的な管理手法です。個別の業務効率化だけでなく、企業全体の業務の流れを俯瞰し、最も効果的・効率的な形に変えていくことを目的としています。

BPMでは、業務プロセスを企業の「競争力」や「生産性」に直結する重要な「資産」として捉え、その資産を常に最適な状態に保つために、「可視化」「設計」「実行」「監視」「分析」「改善」という一連の活動を繰り返し行います。

この取り組みの要となるのが、「継続性」と「反復性」です。一度きりの業務改善とは異なり、PDCAサイクルを回し続ける活動です。これにより、組織は変化に適応し、自ら進化し続けるシステムを構築できます。

尚、BPMは「ワークフローシステム」とは異なる概念です。ワークフローシステムは、申請・承認など、特定の業務フローの効率化ツールです。一方、BPMは製造や顧客対応など、より広範な「業務プロセス全体」の継続的改善を目指すマネジメント手法を指します。

特に、人材・時間などのリソースが限られる中小企業にとって、BPMは、最小限の投入で最大限の成果を生み出すための有効なアプローチです。業務プロセスを「戦略的資産」と位置づけることで、単なる作業の効率化にとどまらず、企業の競争力強化や目標達成に直結する仕組みの構築が可能となります。

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02

なぜ中小企業にこそBPMが必要なのか?~変化に強く、成長し続けるために~

現代のビジネス環境において、中小企業は多くの経営課題に直面しています。特に、以下のような課題は、多くの企業に共通するものです。

変化の激しい市場環境と顧客ニーズの多様化

グローバル化やデジタル技術の進展により、市場動向や技術革新が加速する中、企業は常に変化に対応しながら、顧客の多様なニーズを的確に捉えることが求められています。

属人化によるリスク

特定の担当者に業務が依存している場合、その人材が不在になると業務が滞ることや、品質が不安定になる恐れがあります。人手不足やマニュアル未整備の状況では、こうした属人化のリスクが大きいです。

部門間の連携不足

部署間での情報共有や目標の整合性が不十分な場合、部署間の連携がとれていない、いわゆる“サイロ化”が発生し、業務全体の非効率化や生産性の低下を招くことになります。

生産性の伸び悩み

労働人口の減少が進む中、中小企業における労働生産性の向上は喫緊の課題です。売上や財務状況の改善にも直結するため、構造的な対応が求められます。

こうした課題の解決策として、BPMは非常に有効です。業務プロセスの「可視化」「標準化」「継続的改善」を推進することで、属人化を防ぎ、業務の引き継ぎやスキル共有を円滑にすることが可能です。また、無駄を特定し、効率性を追求することにで、限られたリソースを最大限に活用し、新たな事業投資への投資余力も創出できます。

さらに、BPMのプロセス指向の考え方は、組織全体を俯瞰し、部門横断的な最適化を実現します。これにより、部署間の連携が強化され、企業全体として一貫性のある行動が可能となり、意思決定や実行のスピードも向上するでしょう。

また、BPMの最大の特徴は、「PDCAサイクルによって継続的に改善を重ねる点」にあります。これにより、市場や顧客の変化に柔軟かつ迅速に対応できる組織体制を構築し、中長期的な競争力の強化と持続的成長を実現するのです。

中小企業が変化に強い体制を築き、長期的に成果を出し続けるために、BPMは非常に心強いアプローチといえるでしょう。
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03

BPM導入がもたらす組織への好循環 ~5つの主要メリット~

BPM(ビジネスプロセス管理)を導入することで、中小企業にはさまざまなメリットがもたらされます。業務の見える化と継続的な改善により、組織全体に「好循環」が生まれ、強固な企業体質の構築へとつながるはずです。ここでは、BPM導入がもたらす5つのメリットを解説します。

メリット1:継続的な業務効率化と生産性向上

BPMでは業務プロセスを可視化することで、重複作業や無駄、ボトルネックが明確になります。その結果、作業時間の短縮やリソースの最適活用が可能となり、生産性が向上します。また、BPMは一度の改善で終わらず、PDCAサイクルによって継続的な効率化を促進する点も大きな特徴です。

メリット2:業務品質の標準化と向上(顧客満足度UP)

業務プロセスを標準化することで、担当者が誰であっても一定レベルの品質が保たれ、業務のばらつきやヒューマンエラーを防止できます。結果として、製品やサービスの品質が安定し、顧客からの評価や満足度の向上が期待できるでしょう。

メリット3:内部統制の強化とコンプライアンス遵守

BPMにより業務フローが明確になることで、不正の抑止や法令違反の防止につながります。また、業務の透明性が高まることで、社内規定の遵守状況が把握しやすくなり、監査への対応もスムーズになります。これは、企業の信頼性やブランド価値の向上にも貢献する事項です。

メリット4:市場変化への迅速な対応力(アジリティ)向上

業務プロセスが明確になっていることで、外部環境の変化に対して、どの業務が影響を受けるかを素早く把握できることもメリットの一つです。必要なプロセスの再設計や改善を迅速に行いやすくなり、市場変化への柔軟な対応力が高まることで、競争優位性の確保が可能となります。

メリット5:従業員の能力向上と組織力の強化(プロセス思考の浸透)

BPMを通じて業務プロセスを共有することで、従業員は自らの業務が組織全体にどう貢献しているかを理解できるようになります。この「プロセス思考」が浸透することで、現場から改善提案が生まれやすくなり、主体性と協働意識が育まれることは大きな利点です。さらに、業務の属人化を防ぐことで知識の共有が進み、人材育成の効率化と組織全体のスキル向上にもつながります。

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04

BPMの実践サイクル ~継続的改善を回すPDCA~

ここでは、BPMの実践サイクルの各ステップを具体的に解説します。

① プロセスの発見・設計 (Plan/Design)

まずは、現行の業務プロセス(As-Is)を正確に把握し、非効率な手順や重複、ボトルネックなどの課題を洗い出します。

次に、それらの課題を取り除いた理想的な業務プロセス(To-Be)を設計します。

その際、BPMN(Business Process Model and Notation)などの共通表記法を用いることで、部門間や関係者間での認識のズレを防ぎ、共通理解を図ることが可能です。

②実行・実装 (Do/Implement)

設計した新たな業務プロセスを、実際の業務に適用・実行します。必要に応じて、BPMツールやRPA (Robotic Process Automation)などのITツールを活用し、自動化や作業効率の向上を図ると良いでしょう。

プロセスの定着には、現場の理解と協力が不可欠です。そのため、従業員への周知徹底や教育も重要なステップとなります。

③監視・測定 (Check/Monitor)

実行中の業務プロセスについて、パフォーマンスの状況を継続的に監視・測定します。あらかじめKPI(重要業績評価指標)を設定し、業務の効率性・品質・コストなどの指標を定量的に評価することがおすすめです。

このステップで異常値やトラブルを早期に発見することで、迅速な対応と次の分析フェーズへ向けた確かな根拠を得ることができます。

④分析・評価 (Act/Analyze)

収集したデータをもとに、業務プロセスの課題点や改善余地を分析するフェーズです。ここでは、期待された成果が出ていない原因や、ボトルネックとなっている箇所などを明らかにします。

近年では、プロセスマイニングなどのツールを用いて、客観的・網羅的にプロセスを可視化する手法も活用されています。

⑤改善・再設計 (Act/Improve)

分析結果に基づき具体的な改善策を立案し、業務プロセスの再設計を行います。ここで確立された新しいプロセスを、再び「①プロセスの発見・設計」へと戻し、PDCAサイクルを回しながら継続的な改善を進めていく流れです。

このように、BPMは一度で終わる施策ではなく、持続的な業務改善を実現するための枠組みとして機能します。
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05

BPMを支えるツール ~BPMツール(BPMS)と関連ツール~

BPM(ビジネスプロセス管理)の実践を効率的に支援するため、様々なITツールが活用されています。ここでは、代表的なBPMツール(BPMS)と関連ツールをご紹介します。

尚、これらのツールはあくまでも「手段」であり、業務の可視化や改善、効率化といった目的を実現するための補佐的な存在です。BPMの効果を最大化するためには、業務改善や効率化といった本来の目的を見失わず、適切なツールを選定・導入することが重要です。

BPMツール(BPMS)

BPMツール、またはBPMS(Business Process Management Suite/System)とは、業務プロセスの設計から実行、分析、改善までの一連の流れを総合的に支援するシステムです。主に以下のような機能を備えています。

・プロセスモデリング機能:業務プロセスを図式化し、関係者全員で共有・理解できる形で設計する機能
・実行エンジン機能:設計した業務プロセスをシステム上で実行し、手順通りに業務を進行する機能
・モニタリング・分析機能:プロセスの進行状況をリアルタイムで把握し、KPIなどの指標で評価する機能
・シミュレーション機能:新たに設計したプロセスを、導入前に仮想環境で検証する機能
・システム連携機能:既存の基幹システムや外部アプリケーションと連携し、情報の流れをスムーズにする機能

これらの機能の導入により、企業は市場の変化に柔軟に対応し、業務プロセスを継続的に最適化できる環境を構築できます。

ワークフローシステム

ワークフローシステムは、休暇申請や経費精算など、特定の承認業務を電子化し、自動的に処理するためのツールです。BPMの中では、「実行」フェーズを支援する役割を担っており、定型的な申請・承認業務の効率化に大きく貢献します。

プロセスマイニングツール

プロセスマイニングツールは、業務システムに蓄積されたログデータを分析し、実際にどのような流れで業務が行われているか(As-Isの状態)を、自動で可視化するツールです。このツールを活用することで、業務プロセスの見えない課題やボトルネックを客観的に把握でき、BPMにおける「プロセスの発見」や「分析・評価」フェーズで強力な支援となります。

RPA

RPAは、人間が行っている定型的・反復的な業務(例:データ入力や照合処理など)を、ソフトウェアロボットで自動化する技術です。BPMとは補完的な関係にあり、BPMが「どの業務を改善・自動化すべきか」を特定し、RPAが「その業務をどう自動化するか」という手段を提供するという位置づけになります。

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中小企業がBPMを成功させるためのポイント

中小企業では、人員や予算といった経営資源が限られる傾向があるため、BPM(ビジネスプロセス管理)を効果的に進めるには、いくつかの重要なポイントを押さえることが必要です。ここでは、限られたリソースの中で最大限の成果を上げるための実践的な取り組み方を解説します。

ポイント1:経営層の強いコミットメントと推進体制の確立

BPMは業務の進め方だけでなく、組織文化や働き方にも影響を与える取り組みです。そのため、経営層がBPMの意義を深く理解し、リーダーシップを発揮することが成功の前提となります。

また、社内に推進チームを設置し、プロジェクトをリードする「プロセスオーナー」を任命することで、責任と権限が明確になり、取り組みの実効性が高まります。

ポイント2:対象プロセスを絞り込む

中小企業にとって、限られた資源でBPMを成功させるには、最初から全社的な改革を目指すのではなく、影響度の高い業務や明確な課題を抱えるプロセスに絞って取り組むことが有効です。

まずは小さく始めて(スモールスタート)、成功事例を早期に生み出し、社内に共有・展開することで、他部門にもBPMへの理解と関心が広がっていきやすいでしょう。

ポイント3:現場担当者の巻き込みとプロセスオーナーシップの育成

業務の実態を最も理解しているのは、日々その業務に携わっている現場の担当者です。彼らをBPMの初期段階(業務の「発見」「設計」フェーズ)から巻き込み、意見を反映することで、実効性のあるプロセス改善が可能になります。

また、業務に対する「自分ごと化」が進むことで、現場主導の改善活動が根づき、プロセスオーナーとしての意識も自然と醸成されるでしょう。

ポイント4:ツールの適切な活用

BPMを支援する各種ITツールは、プロセス改善を加速する有効な手段です。但し、ツールの導入が目的になってしまうと、本来の課題解決から逸れてしまいます。そのため、自社にとって本当に必要な機能を見極め、業務上の課題にフィットするツールを選定することが重要です。

導入前には、無料トライアルなどで実際に試用し、現場との相性を確認しておくと良いでしょう。

ポイント5:継続的な改善を前提とした「文化づくり」

BPMは、一度導入して完了するものではなく、継続的な改善を前提とするマネジメント手法です。市場環境や顧客ニーズは日々変化しており、それに対応できる柔軟な業務プロセスの構築が求められます。

そのため、BPMを単なるプロジェクトではなく、企業文化として定着させることが不可欠です。

定期的なレビューや改善活動のサイクルを仕組み化することで、BPMは企業の持続的成長を支える「土台」となります。
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07

まとめ

本記事では、BPM(ビジネスプロセス管理)の基本的な考え方と、中小企業における活用のポイントについて解説しました。BPMは、変化の激しい市場、属人化、部門連携不足、生産性伸び悩みといった中小企業の課題に対し、有効な解決策を提供します。

BPMを導入することで、業務の可視化と標準化で生産性を高め、継続的な改善サイクルで市場変化に迅速に対応できる「アジリティ」の高い組織の構築と、持続的な成長につながるでしょう。ぜひこの機会に、自社の業務プロセスを「戦略的資産」として見直し、BPM導入を起点として、組織全体に良循環をもたらす第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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※バックオフィス業務とは経理や総務、人事、法務、財務などといった直接顧客と対峙することの無い社内向け業務全般を行う職種や業務のこと

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この記事を書いた人

金田サトシ
国立大学を卒業後、外資系IT企業でSaaSアプリケーション(ERP/SCMなど)やセキュリティ系コンサルタントとして約15年の実績あり。ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、情報処理安全確保支援士の情報処理資格を取得済み。自身の経験と体系的な知識をもとに、IT系全般をカバーするテクニカルライターとして、リアリティがありつつわかりやすい記事を多数執筆。
北川 希
監修
北川 希

デジタルマーケティングやIT領域を中心に、年間200本超のライティング、100本以上の編集を担当。特に基幹業務系ソリューションやITインフラ、情報セキュリティに関する技術解説や導入メリット、導入事例に精通し、企業のDX推進や業務効率化に関する専門記事を多数執筆。行動経済学の知見をベースに、専門的なテーマでも初心者から専門職層まで伝わる記事作成・編集を実施。

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