生成AIの最大の特徴は、バックオフィス全体に横断的に存在する「文書作成」「データ分析」「問い合わせ対応」といった共通の課題を解決できる点にあります。これにより、全社的な効率化とコスト削減という全体最適化が実現するのです。以下に、部門観点での具体的な活用アイデアを紹介します。
経理部門:月次決算を高速化し、問い合わせ対応を自動化する
経理部門は、定型的なデータ処理やレポート作成業務が多く、生成AIの活用効果が最も期待できる部門の一つです。
1.請求書・領収書のデータ化や仕訳の自動化
OCR(光学文字認識)技術と連携することで、紙の請求書や領収書から日付、金額、品目などの文字情報を自動で認識・データ化できます。これにより担当者の手作業による入力時間とミスを大幅に削減することを可能とします。ZOZOでは月次締めを7営業日から3.5営業日へと短縮したという事例もあります。
2.レポート作成の補助と財務データの分析
財務情報を取り込み、経営に必要な分析レポートや財務分析のためのグラフ・表を生成できます。マネーフォワードでは、従来は丸1日を要していた財務レポートを数十秒で生成できるようになりました。また、勘定科目の説明や決算書のドラフト作成も行え、手作業での作成にかかる時間を短縮することが可能です。
3.英文決算書・資料の翻訳
海外親会社とのやり取りや、海外取引が多い企業では、英文決算書や財務資料の翻訳に生成AIを活用できます。これにより、コストを抑えながら高品質な資料作成を支援します。
4.経費精算処理の自動化とチェック
AIを活用した経費精算システムを導入することで、レシートのスキャンからデータ抽出、申請ミスの自動チェックまでを可能にします。明治安田生命では、この取り組みにより年間約5,300時間の業務時間削減に成功しています。
人事・労務部門:採用業務を効率化し、社員からの質問をゼロにする
人事・労務部門もまた、書類作成や問い合わせ対応といった定型業務に追われがちです。生成AIは、採用から社員の定着まで、幅広い業務を効率化します。
5.採用業務の効率化
求人要項やスカウトメールの自動生成、履歴書・エントリーシートの自動スクリーニングが可能になります。ソフトバンクでは、AI面接システムを導入することで、動画面接の選考にかかる時間を約70%削減する見込みとしています。これにより、採用担当者はより付加価値の高い業務に、時間を充てることができます。
6.社内問い合わせ対応の自動化
人事・労務部門に寄せられる給与や福利厚生、雇用契約に関する定型的な問い合わせに、AIチャットボットが自動で回答します。クスリのアオキは、AIチャットボットの導入により、問い合わせの75%を自動化し、年間約3,500時間の効率化を実現しました。
7.配属の最適化
従業員一人ひとりの特徴や各部署の業務特性を分析し、最適な配属案を作成します。サイバーエージェントでは、AIを活用した配属マッチングシステムを導入し、担当者の経験や主観に頼らない客観的な配置を実現しています。
8.社内文書の自動生成
雇用契約書や内定通知書、各種証明書など、頻繁に作成される定型的な文書をAIが自動で生成します。これにより、担当者の書類作成にかかる工数を削減し、ヒューマンエラーのリスクも低減できます。
総務部門:膨大な事務作業から解放され、戦略的業務にシフトする
総務部門は、全社の生産性向上に貢献する部門であり、生成AIは縁の下の力持ちとしてその役割を強化できるでしょう。
9.社内マニュアル・文書の作成支援
リクルートでは、ChatGPTを活用して新入社員向けのマニュアルを作成したところ、従来の3分の1の時間で完成させることができました。これにより、マニュアル作成にかかる工数を大幅に削減し、常に最新の情報を反映した文書を維持できます。
10.会議の議事録作成と要約
AIが会議の音声から自動で文字起こしを行い、要点をまとめて議事録を作成します。LINEヤフーでは、社内会議にAI議事録作成ツールを導入し、会議後の情報共有時間を80%削減しました。
11.社内ヘルプデスクの効率化
社内FAQチャットボットを導入することで、福利厚生や社内規定に関する一般的な質問への回答を自動化できます。KDDIは、この取り組みにより問い合わせ対応時間を60%削減し、担当者は複雑な案件に集中できるようになったのです。
12.社内ナレッジの整理と情報共有
過去の議事録やチャット履歴、業務マニュアルなどの膨大な社内ナレッジをAIが自動で整理・構造化します。これにより、必要な情報を瞬時に検索・抽出できるようになり、情報共有のスピードと正確性が向上します。
法務部門:契約書レビューを効率化し、リーガルリスクへの対応を迅速化する
法務部門は、専門性が高く多くの文書処理を必要とします。生成AIは、高度な業務を支援し、担当者の負担を軽減します。
13.契約書作成・レビュー支援
雇用契約書や秘密保持契約書など、定型的な契約書のドラフトを自動で生成できます。また、既存の契約書を分析し、潜在的なリスクや問題点を短時間で特定することが可能となり、日本生命では法務部門の作業時間を50%削減しています。
14.法的調査・リサーチ業務の効率化
膨大な判例データベースから関連する判例を効率的に検索し、要旨を自動で整理します。従来、数日から数週間かかっていた調査を、AIが数時間で完了させることが可能になり、訴訟関連業務の効率化にも貢献するでしょう。
15.法的文書の平易な説明
AIが複雑な法的文書の内容を、一般社員にも理解しやすい言葉で要約・説明することで、法務担当者が各部署とコミュニケーションを取る際の負担が軽減されます。