新リース会計基準対応の完全ガイド|実務への影響からシステム選定まで、監査を乗り切る全知識

本記事は2026/06/08に更新しております。
新リース会計基準対応の完全ガイド|実務への影響からシステム選定まで、監査を乗り切る全知識

新リース会計は、原則すべてのリース取引を貸借対照表(B/S)に資産と負債として計上することを求める新しい基準です。2019年から順次適用が始まり、2027年4月1日以降は強制適用となるため、多くの企業で喫緊の課題となっています。

 

もし、この基準を「単なる会計ルールの変更」と軽視すると、決算の遅延や監査で指摘が入るといった事態に直面する恐れがあります。そのため、正しく新会計リースの内容を理解し、計画的に準備を進めることが急務です。

 

本記事では、管理職の方向けに新リース会計基準対応の完全ガイドを解説します。新リース会計基準の実務への影響やリース管理システムの選定ポイント、監査法人に対応するための準備と具体策を網羅的にご紹介します。

01

新リース会計基準の全体像と管理職が押さえるべき3つのポイント

新リース会計基準は、企業の資産・負債の見え方を大きく変える重要な会計ルールです。管理職としては、専門的な会計知識よりも自社の経営指標や意思決定にどのような影響があるかを理解することが最優先です。

 

まずは、「新リース会計基準の概要」や「経営への影響」、「適用時期の再確認と対応が遅れることのリスク」の3つに分けて解説します。

そもそも新リース会計基準とは?【1分でわかる概要と比較図】

新リース会計基準とは、2027年4月1日以降に適用が開始される、リース取引に関する新しい会計ルールです。

 

現行リース会計基準では、リース取引を以下の「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」の2種類に分けて処理していました。

 

区分 概要 会計処理
ファイナンスリース 解約できず、物件の取得価額や維持費(固定資産税・保険料など)を借り手が負担する取引 売買取引とみなし貸借対照表に計上(オンバランス)
オペレーティングリース ファイナンスリースに該当しない一般的なリース取引 貸借対照表に計上しない(オフバランス)

※オンバランス:リース資産やリース債務を貸借対照表(B/S)に計上する方法
※オフバランス:貸借対照表には計上せず、費用として処理する方法

 

新リース会計基準では、「原則、すべてのリースを資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上 する」ことが求められます。つまり、ファイナンスリースとオペレーティングリースの区分がなくなり、すべてのリース契約を資産・負債として認識する必要があります。

 

現行リース会計基準と新リース会計基準の違いは、以下の図解の通りです。

 

現行リース会計基準と新リース会計基準の主な変更点

 

 

主な変更点は、新リース会計基準ではリース契約によって一定期間資産を利用する権利を「使用権資産」として計上し、その利用に伴い将来支払うリース料の現在価値を「リース負債」として貸借対照表に計上する点です。

 

尚、従来のリース会計基準では例外的にオフバランス処理が認められるケースがあり、新リース会計基準でも同様に適用されます。

 

区分 概要 新リース基準での扱い
短期リース リース期間が12カ月以内の契約 オフバランス処理が可能。ただし、リース期間の算定方法が変わり、対象が減る可能性あり
少額リース 少額のリース資産やリース料が小さい契約 一定の金額基準(例:リース料300万円以下、または原資産価値5,000ドル以下)を満たす場合に限りオフバランス処理が可能
無形固定資産リース ソフトウェアなどの無形資産に関するリース 新基準の適用は任意(企業の判断による)

 

企業は、リース契約の内容や金額を改めて見直し、どの取引が新基準の例外に該当するかを確認する必要があります。

 

リース会計基準が改正された背景には、投資家や金融機関に対する透明性向上があります。従来のオフバランス処理では、企業の実際の負債状況や資産利用状況が正確に反映されず、財務分析が難しいケースがありました。財務分析が難しい状況を是正し、企業間で財務情報の比較可能性を高めることが新基準の目的です。

 

旧基準と新基準のB/S(貸借対照表)の比較

管理職が本当に知るべき「経営へのインパクト」とは?

会計基準の変更は単なる帳簿上の手続きではなく、経営指標に直結します。そのため、バックオフィスの管理職には、経営層や金融機関、投資家に対して正確に説明するための知識が求められます。

 

特に理解しておくべき指標とそれぞれの概要、想定される影響は以下の通りです。

 

指標 概要 主な影響
自己資本比率 「自己資本 ÷ 総資産」で、企業の財務健全性を示す指標 リース負債を資産・負債として計上するため、総資産が増加し比率が低下する傾向
ROA(総資産利益率) 「当期純利益 ÷ 総資産で、資産をどれだけ効率的に利益に変えているかを示す指標 総資産の増加により、利益が変わらなくてもROAが低下する可能性
EBITDA 利息・税金・減価償却前利益の総称。企業の純粋な収益力を示す国際指標 リース料を利息と償却に分ける処理により、営業利益ベースでは増加する場合がある

 

以下は、新リース会計基準が適用後のリース負債の計上による財務指標への影響を、簡易的にシミュレーションしたものです。

 

項目 現行リース会計基準 新リース会計基準適用後 変化の傾向
総資産 100億円 110億円(+リース資産10億円) 増加
自己資本 50億円 50億円 変化なし
自己資本比率 50% 45.5% 低下
当期純利益 5億円 5億円 変化なし
ROA 5.0% 4.5% 低下
EBITDA 8億円 9億円(リース料の償却分が増加) 増加

 

このように、新リース会計基準の導入によって財務指標の数値は変化しますが、重要なのは「見かけの変化」と「実質的な経営状態」を切り分けて説明できることです。

 

例えば、自己資本比率の低下については「リース資産とリース負債を新たに貸借対照表へ計上したことによるもので、実際の財務基盤に影響はありません」と説明できます。

 

また、EBITDAの上昇については「リース料の一部が減価償却費として処理されるようになった結果であり、キャッシュフロー自体に変化はありません」と伝えると、関係者にも納得してもらいやすいでしょう。

【いつから?】適用時期の再確認と対応が遅れることの致命的リスク

新リース会計基準は、2019年以降順次適用が始まっており、2027年(令和9年)4月1日からは強制適用となります。「まだ時間がある」と思って油断すると、思わぬ危険性に直面します。

 

例えば、決算作業の遅延や監査法人からの指摘が発生し、最悪の場合、監査意見に影響することもあります。さらに、直前にシステム導入やデータ整理を行うと高額なコストや業務負荷が発生し、経営に悪影響を与えかねません。

 

管理職は自社の適用スケジュールを正確に把握し、財務部門や情シス部門と連携して計画的に対応する必要があります。早期のリース契約整理やシステム選定、従業員への周知など、段階的な準備がリスク回避につながります。

 

適用遅延による財務報告の信頼性低下を防ぐためにも、管理職自らがリーダーシップを発揮して計画的に対応を進めることが何より大切です。

 

出典:1 新リース会計基準に対応する改正|国税庁

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監査から逆算する!新リース会計基準対応の5ステップ・ロードマップ

新リース会計基準への対応は、単なる会計処理の変更ではなく、企業全体の業務フローやシステムにも影響を及ぼします。特に監査法人のチェックをスムーズに通過することをゴールに置くことで、実務の抜け漏れや遅延を防ぐことが可能です。

 

ここでは、新リース会計基準に対応するための5つのステップ・ロードマップを紹介します。各ステップで管理職が「何をすべきか」「どこに注意すべきか」を具体的に解説するので、参考にしてみてください。

【Step 1】全体方針の決定とプロジェクトチームの組成

新リース会計基準への対応プロジェクトを成功させるための第一歩は、全体方針の決定と組織横断型のプロジェクトチームの設置です。経理部門だけでなく、法務、IT、資産を管理する各事業部門を巻き込むことが求められます。

 

ここでの管理職の役割は、各部門間の調整やリソース確保を行い、目標と期限を明確に示すことです。例えば、契約情報の収集やシステム要件の整理に必要な担当者を明確にすることで、後のステップをスムーズに進めやすくなります。

【Step 2】リース契約の網羅的な洗い出しと特定

リース契約の特定は、もっとも時間と労力がかかる作業です。各部門へのヒアリングシートを用意し、「リース」という文言がなくても賃貸借契約やサービス契約に含まれるリースを見逃さないよう注意する必要があります。

 

例えば、コピー機やIT機器のリース契約がサービス契約に紛れている場合があります。管理職は、洗い出しの進捗状況を定期的に確認し、抜け漏れを防ぐチェック体制を整えることが必要です。

【Step 3】会計方針の策定とリース資産・負債の計算

次に、企業が選択できる会計方針を整理します。「簡便的な取り扱いの適用」や割引率の設定など、判断が必要なポイントを明確にしましょう。

 

管理職の役割としては、自社の財務状況や資産構成を踏まえ、最適な会計方針を選択する視点が求められます。具体的には、短期リースや少額リースを簡便法で処理することで、計算負荷を軽減しつつも、財務指標への影響を最小限に抑えることが可能です。

【Step 4】業務フローの再構築と関係部署との連携

新基準に対応した業務フローの設計も重要です。契約締結時に必要な情報を確実に収集できるよう、事業部門を巻き込んだフローを作成しましょう。

 

管理職はリーダーとして、フローが実務に定着するよう研修や周知を行い、定期的に運用状況を把握する役割を担います。例えば、契約書の提出期限やリース開始日を統一管理するルールを設けることで、会計計算や監査対応の効率化が図れます。

【Step 5】新基準での決算・開示準備

最後に、決算時の注記情報の作成を行います。具体的には、リース資産・負債の内訳、期間別のリース料支払予定、割引率の適用方法など、監査法人の要求に沿った適切な粒度で情報を整理することが重要です。

 

ここでの管理職の役割は、情報の正確性を担保しつつ投資家や金融機関にわかりやすく説明できる形式に整えることです。形式を整えるにより監査の指摘を最小化し、財務報告の信頼性を確保できます。

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【投資判断の軸】リース管理システムの選定で失敗しないための比較ポイント

リース管理システムの導入は、新リース会計基準への対応を効率化する上で重要ですが、単に機能が多かったり、費用が安かったりする理由だけで選ぶと、運用開始後に思わぬトラブルを招くことがあります。管理職としては、自社の業務フローや会計システムとの連携、サポート体制などを踏まえた上で、投資判断を行うことが不可欠です。

 

ここでは、リース管理システム選定の比較ポイントとRFP(提案依頼書)に盛り込むべき必須項目、具体的な導入事例をご紹介します。

自社に合うシステムを見極める!機能・費用・サポート体制の比較チェックリスト

リース管理システム選定で最初に押さえるべきは、機能・費用・サポート体制の3つです。

 

まず、「クラウド型」か「オンプレミス型」かを確認し、自社のIT環境やセキュリティ方針に合う方式を選びます。

 

次に、既存の会計・ERPシステムとの連携できるか確認することが重要です。連携できない場合、二重入力やデータ不整合が発生する可能性があるため、運用負荷が増大します。

 

さらに、導入・運用コストや初期費用、月額費用を比較し、ROI(投資対効果)を見極めましょう。また、ベンダーのサポート体制も重要です。問い合わせ対応の速さやトラブル対応の実績、教育・研修体制の有無を確認することで、導入後の安定した運用を確保できます。

 

システムを比較・検討する際には、下記のチェックリストをご活用してみてください。

 

チェック項目 確認ポイント 評価/備考
導入形態 ・クラウド型かオンプレミス型か
・自社のIT環境やセキュリティ方針に合っているか
 
機能要件 契約管理、会計処理、リース資産・負債計算、レポート作成など必要機能が揃っているか  
既存システムとの連携 会計・ERPシステムやExcelデータとの連携が可能か  
導入・運用コスト 初期費用、月額費用、カスタマイズ費用を含めた総コストは妥当か  
サポート体制 問い合わせ対応の迅速さ、トラブル対応実績、教育・研修体制が整っているか  
セキュリティ・権限管理 データ保護、アクセス権限設定、ログ管理などのセキュリティ機能が十分か  
操作性・ユーザビリティ 日常業務で使いやすい画面構成か、操作が直感的か  
拡張性・将来性 契約数増加や業務拡大に対応可能か、アップデート・新機能提供はあるか  

RFP(提案依頼書)に盛り込むべき必須項目

システムベンダーから的確な提案を得るためには、RFP(提案依頼書)の作成が不可欠です。自社のリース契約の数や種類、会計処理方針、既存システムとの連携要件、運用人数や業務フローなどを整理し、抜け漏れなく明記しましょう。

 

さらに、導入スケジュールやサポートの希望内容、予算も明示することで、ベンダーが実現可能な提案を提示しやすくなります。RFPの完成度が高いほど、比較検討の精度も向上し、選定ミスを防ぐことにつながります。

【導入事例】システム導入で課題を解決した企業のケーススタディ

実際の導入事例を参考にすることで、成功と失敗の両面から学ぶことができます。

 

まずは、成功事例として、自動車や不動産関連の金融・保険事業を手がけるA社の事例を紹介します。同社は、既存の経理システムをオンプレミス版からクラウド版に移行する際、バックオフィスDX支援のクラウドサービスを活用しました。ワークフローや経費精算を最適化することで、経理業務の効率化と電帳法対応を実現しました。

 

一方、他社の中には導入に失敗した事例も見られます。既存の会計システムとの連携要件をRFP(提案依頼書)で明確にしていなかった企業では、導入後に二重入力が発生し、業務負荷が増大したといいます。結果として、運用開始から半年ほどで追加開発費用が発生する事態となりました。

 

管理職として、ケーススタディにある成功事例・失敗事例を踏まえ、事前に自社要件の整理とベンダーとの認識共有を徹底することで、システム導入を成功に導くことが可能です。

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これで万全!監査法人を納得させるための準備と対応策

新リース会計基準の適用に伴い、監査法人からのチェックは従来よりも厳しくなっています。管理職としては、監査法人がどの点に注目するのかを理解し、先回りして準備することがスムーズな監査対応と財務報告の信頼性確保につながります。

 

ここでは、監査における主要なチェックポイントと想定問答、内部統制の整備と文書化まで、監査をスムーズに乗り切るための具体的な方法を解説します。

監査法人は「ここ」を見ている!主要な監査要点チェックリスト

監査法人が重点的に確認するポイントを押さえておくことで、事前に自社での点検が可能となります。主なチェック項目は次の通りです。

 

チェック項目 確認ポイント 評価/備考
リース契約の特定・網羅性 すべてのリース契約が漏れなく特定されているか  
会計方針の合理性 簡便的処理の適用や割引率の設定方法など、会計方針が基準に沿って合理的であるか  
計算の正確性 リース資産・負債の計算、償却や支払予定の計算が正確であるか  
開示情報の適切性 決算注記に必要な情報が網羅され、金融機関や投資家が理解しやすい形式で提示されているか  

 

事前にこれらを自己点検することで、監査での指摘や修正作業を最小化できます。

【想定問答集】監査でよくある質問と説得力のある回答例

監査で頻出する質問に備えて、回答と提示資料を用意しておくことが重要です。例えば、監査でよくある質問と回答例として、以下のような問答が想定されます。

 

Q:この契約がリースに該当しないと判断した根拠は?
A:この契約については、契約書の条項を精査した結果、当社が原資産の使用権を持たないこと、また維持管理や費用の負担がすべて貸手側にあることを確認しました。そのため、実質的にはリース契約に該当しないと判断しています。

Q:割引率の算定根拠を教えてください
A:割引率は、当社の社内規程に基づき、市場金利およびリース期間を考慮して算定しています。具体的には、契約締結時点の長期社債利回りを基準に設定しております。

Q:簡便的処理の適用理由は?
A:対象となる契約はいずれも少額かつ短期のリースであり、財務諸表への影響が限定的であると判断しました。そのため、新リース会計基準で認められている簡便的処理を採用しています。

 

このような想定問答集を準備しておくことで、監査時の突発質問にも落ち着いて対応できます。また、監査対応の負荷を軽減し、財務報告の信頼性を確実に高めることが可能です。

内部統制の構築と文書化が監査を楽にする

監査対応をスムーズに進めるためには、内部統制のための整備と文書化を進めることが重要です。新基準に沿った業務フローやルールを誰が見てもわかるように図解などで記録しておくことで、業務の標準化を維持できます。

 

また、監査法人に対して「何を、どのように管理しているか」を明確に示せるため、確認作業の工数が大幅に削減されます。

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まとめ

新リース会計基準では、原則としてすべてのリース取引を貸借対照表(B/S)に資産と負債の両者を計上することが求められます。2027年4月1日以降は強制適用となるため、「単なる会計ルールの変更」と軽く考えず、計画的な準備が不可欠です。

 

バックオフィス管理職は、自社の経営指標や意思決定にどのような影響があるかを正確に把握しておきましょう。新リース会計基準に対応するためには、監査の観点から逆算し、早期に対応を進めることが重要です。

 

また、経理・会計業務の効率化や自動化には、リース管理システムなど、バックオフィス業務のデジタル変革(DX)を支援するクラウドサービスの活用が有効です。

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この記事を書いた人

北川 希
デジタルマーケティングやIT領域を中心に、年間200本超のライティング、100本以上の編集を担当。特に基幹業務系ソリューションやITインフラ、情報セキュリティに関する技術解説や導入メリット、導入事例に精通し、企業のDX推進や業務効率化に関する専門記事を多数執筆。行動経済学の知見をベースに、専門的なテーマでも初心者から専門職層まで伝わる記事作成・編集を実施。
監修
佐藤大輔

長年、経理業務に携わり、毎年の店舗の水道光熱費の使用料や過剰に使用している店舗への注意喚起などを促し赤字店舗の改革に努めた。また、企業のDX導入にも携わり、職員勤怠の電子化など、業務効率化を積極的に推進。現在は、企業コラム記事などを中心に年間100記事ほど執筆・監修を行っている。

 

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