行動分析で「売れる仕組み」を自動化する|営業とマーケティングの連携を最適化する方法

本記事は2026/06/05に更新しております。
行動分析で「売れる仕組み」を自動化する|営業とマーケティングの連携を最適化する方法

「営業とマーケティングの連携がうまくいかない」と考える企業は少なくないのではないでしょうか。機会損失などの発生につながるこの課題は、個人の感覚や経験に頼った事業活動を行っている企業の典型と考えられます。

 

本記事では、科学的なアプローチである「行動分析」を用いて、属人化されたノウハウを「売れる仕組み」へと昇華させ、自動化する方法を解説します。また、データドリブンな組織へと変革するための、具体的なステップを紹介します。

01

営業とマーケティングの連携がうまくいかない理由

営業とマーケティング部門は共通の目標を持ちながらも、その連携が円滑にいかないケースは少なくありません。両者の間に存在する見えない壁が、ビジネスの成長を阻害しています。その根底にある理由を掘り下げていきましょう。

属人化する営業ノウハウと、一般化されたマーケティング施策

営業部門では、トップセールスの成果が属人化しがちです。

 

成功の要因が個人の頭の中に留まり、組織全体で共有されない状態では、担当者の交代で売上が変動するなど、経営が安定しません。これでは個人の成功体験が組織の資産にならず、再現性のある成長が望めないのです。

 

一方、マーケティング施策は幅広いターゲットに情報を届けるため、画一的になりがちです。Web広告やメールマガジンは多くの見込み顧客にアプローチできる反面、顧客一人ひとりの状況に合わせた、きめ細やかな対応は不得手といえます。

顧客情報の断絶による機会損失

マーケティング部門が獲得した見込み顧客情報が、営業部門で有効活用されていないケースは少なくありません。そもそも営業担当者が顧客対応に割ける時間は限られています。HubSpot社が行った「日本の営業に関する意識・実態調査2024」によれば、営業担当者が顧客とのやりとりに使う時間は業務時間の54%に過ぎず、残りは社内業務に費やされているのが実情です。これでは、限られた時間の中、マーケティング部門から共有された情報の優先順位が分からず、多くのリードが放置されてしまいます。

 

SFAやCRMを導入しても、データが活用されなければ意味がありません。例えば、有望な見込み顧客を特定しても、その情報がリアルタイムで営業担当者に共有されなければ、最適なアプローチのタイミングを逃してしまいます。部門間の情報断絶は、大きな機会損失に直結します。

目標の不一致と評価制度の壁

両部門の連携を阻む根深い問題が、目標(KPI)と評価制度の違いです。それぞれが異なる指標を追うため、協力体制が生まれにくい構造になっています。

 

(KPIの例)

部門 主な目標(KPI)
営業部門 商談件数、受注件数、売上金額(中長期)
マーケティング部門 リード獲得数、WebサイトPV数(短期)

 

上表のように、営業は「売上」を、マーケティングは「リード獲得数」を重視します。マーケティングがKPI達成のためリードの「量」を追求するとリード案件の質が低下し、営業から見れば「質」の低いリードばかりが供給される、という事態は典型例です。互いの目標と役割を理解し、連携を評価する仕組みがなければ、両者の溝は埋まりません。

02

行動分析学とは?ビジネスに応用する基礎知識

これらの課題を克服し、データに基づいた「売れる仕組み」を構築するにあたり、行動分析学の知見が有効です。行動分析学は、人の行動を「環境との相互作用」によって科学的に解明する学問です。このフレームワークをビジネスに応用することで、顧客の購買行動を客観的に理解し、予測・制御することが可能になります。

行動の原理を解明する「ABC分析」

行動分析学の基本が「ABC分析」です。これは、行動を「A: Antecedent(先行条件)」「B: Behavior(行動)」「C: Consequence(結果)」の3要素で捉えるフレームワークです。人の行動(B)は、その直後の「結果(C)」によって、将来の確率が変化すると考えます。

 

例:Webサイトからの問い合わせ行動

 

  • A (先行条件):ユーザーが製品の価格ページを閲覧。
  • B (行動):問い合わせフォームから資料請求。
  • C (結果):直後に営業から丁寧な連絡が来た。

 

この場合、「丁寧な連絡」というポジティブな結果(C)が、ユーザーの次の行動(商談など)を促します。ABC分析は、どの要素に働きかければ望ましい行動を引き出せるのかを分析する強力なツールです。

「好子」と「嫌子」で行動をコントロールする

ABC分析の「結果(C)」は、行動を増やす「好子(こうし)」と、減らす「嫌子(けんし)」に分類されます。

 

  • 好子:行動の確率を高めるもの(例:報酬、快適な体験)。
  • 嫌子:行動の確率を低くするもの(例:不快な体験、無視)。

 

マーケティングや営業活動は、顧客の購買行動を促す「好子」を効果的に提示し、「嫌子」を取り除く視点で見直すことができます。

データに基づき、顧客の行動を予測・制御する

行動分析学の強みは、感覚ではなく客観的なデータに基づいて顧客行動を科学的に分析する点にあります。

 

これはまさに「“感覚”ではなく“データ”を武器に成果を出す仕組み」 という考え方です。MAやSFAのデータをABC分析のフレームワークで分析すれば、「どのような顧客が成約につながりやすいのか」というパターンを発見できます。このパターンを理解することで、顧客の次の行動を予測し、先回りしてアプローチを仕掛けることが可能になるのです。

 

ABC分析を用いた顧客の行動予測

要素 名称 具体例 その後の展開
A 先行条件 Web広告や記事で製品を知る 顧客が次の行動を起こすきっかけとなる
B 行動 Webサイトから資料をダウンロードする 行動の結果として「好子」か「嫌子」を体験する
C 結果- 好子 限定の導入事例など、期待以上の情報が手に入った 行動が促進され、次のステージ(比較検討)へ進む
C 結果- 嫌子 問い合わせフォームの入力項目が多く、面倒だった 行動が抑制され、プロセスから離脱する

 

顧客の行動予測

03

行動分析で「売れる仕組み」を自動化する5つのステップ

前章で解説した行動分析学の理論を、実際のビジネスの現場でどのように実践し、営業とマーケティングを連携させた「売れる仕組み」へと昇華させればよいのでしょうか。個人の感覚に頼るのではなく、データに基づいた科学的なアプローチを組織的に展開することが、持続的な成長の鍵となります。

ステップ1:顧客の「購買行動」を分解・可視化する

まず、顧客が購入に至るまでの一連の行動を、ABC分析を用いて時系列で分解・可視化します。「Webサイト閲覧」「資料ダウンロード」「問い合わせ」といった行動(B)と、そのきっかけ(A)、結果(C)を定義するのです。

 

この作業は、顧客視点で体験を可視化する「カスタマージャーニーマップ」の作成と関連しており、アプローチの最適化に繋がります。

ステップ2:データから「売れるパターン」を発見する

次に、MAやSFAのデータを分析し、受注に結びつきやすい優良顧客(ホットリード)に共通する行動パターンを発見します。これは、営業担当者ごとの行動を可視化し、成績上位者との差を明らかにするアプローチです。

 

「特定のページを3回以上閲覧した顧客は商談化率が高い」といった自社独自の「売れるパターン」を特定することが、仕組み化の核となります。これまで「勘」や「経験」で語られてきた成功法則を、客観的なデータで裏付ける重要な工程です。

ステップ3:行動を促進する「仕掛け」を設計する

発見した「売れるパターン」を他の顧客にも再現させるための「仕掛け」を設計します。これは、顧客の望ましい行動を後押しする「好子」を適切なタイミングで提示する施策を計画するプロセスです。

 

例えば、「資料をダウンロードした顧客の直後にインサイドセールスがアプローチする」といったように、顧客の行動をトリガーとして次の行動を引き出すアプローチを具体的に設計します。

ステップ4:MA・SFAを活用し、仕組みを自動化する

設計した「仕掛け」を、MAのシナリオ機能やSFAのタスク自動化機能を活用して実行します。

 

「特定の行動をとった顧客に、1時間以内に特定のメールを送る」「条件を満たしたリードのタスクを営業担当者に自動で作成する」といった一連の流れを自動化し、人手を介さずに実行できるようにします。これにより、営業担当者は確度の高い顧客に集中でき、業務効率が飛躍的に向上します。

ステップ5:効果測定と改善を繰り返し、精度を高める

仕組みは、一度構築して終わりではありません。市場や顧客は常に変化するため、効果を継続的に測定し、改善することが不可欠です。メール開封率や商談化率といったデータを定期的に分析し、「件名を変えたらどうか」「アプローチのタイミングは適切か」といった仮説検証を繰り返します。このPDCAサイクルを回し続けることで、自動化された「売れる仕組み」の精度は着実に高まります。

04

【事例】行動分析で営業とマーケティングの連携を最適化した2つの成功事例

実際に行動分析を取り入れ、営業とマーケティングの連携を最適化した企業の事例を紹介します。

事例1:製造業A社

精密部品メーカーA社は、ルートセールス中心で営業活動が属人化し、新規開拓に伸び悩んでいました。そこで同社は、SFAの受注案件データを分析し、「特定の技術資料をダウンロードし、かつ製品仕様ページを複数回閲覧した顧客」の受注確度が極めて高いという「売れるパターン」を発見しました。

 

この発見に基づき、MAツールでこのパターンに対してユーザーにアプローチする仕掛けを自動化しました。条件に合致した顧客を「ホットリード」と定義し、Web閲覧履歴と共に営業担当者に自動通知する仕組みです。結果、営業は確度の高いリードに集中できるようになり、商談化率は1.8倍に向上。マーケティング活動が売上に直結することが可視化され、部門間の連携も円滑になりました。

事例2:不動産業B社

投資用マンションと販売しているB社は、見込み顧客リストの質を見極められず、非効率な営業活動が常態化していました。そこで同社は、社内に点在していた顧客情報をSFA/CRMで一元管理し、顧客行動を分析できる基盤を整備。「物件価格のシミュレーション実施」や「特定エリアの物件情報の閲覧」などをホットリードの兆候と定義しました。

 

そして、これらの行動を顧客がとった際に、SFAが自動で検知し、担当営業に関連情報と共に即座にアプローチを促すタスクを作成する仕組みを構築。この取り組みにより、最適なタイミングでのアプローチが可能となり、従来比でアポイント獲得率が12%向上しました。さらに、トップセールスの行動パターンを組織で共有できるようになったことで、チーム全体の営業力が底上げされています。

05

行動分析を導入する際の注意点3選

行動分析に基づく仕組みの構築は強力ですが、成功にはいくつかの注意点があります。

ツールの導入が目的化しない

MAやSFAは強力な手段ですが、その導入自体が目的化しないよう注意が必要です。重要なのは、まず自社の課題を明確にし、その解決のためにツールをどう活用するかという目的意識を持つことです。

スモールスタートで始める

最初から大規模な仕組みを構築しようとすると、計画が複雑化し頓挫するリスクが高まります。特定の製品や顧客セグメントに絞ってスモールスタートし、小さな成功体験を積み重ねながら横展開していくアプローチを推奨します。まずは限定的な範囲で成果を出すことで、社内の協力も得やすくなり、全社展開への弾みとなります。

専門家の知見を活用する

行動分析やツールの高度な運用には専門知識が求められます。社内に知見がない場合は、外部のコンサルタントなどの専門家を活用することも有効です。外部の客観的な視点を取り入れることで、導入を加速させ、失敗のリスクを低減できます。

06

まとめ

本記事では、営業とマーケティングの連携を阻む原因を明らかにし、解決策として行動分析学を提示しました。

顧客の行動を科学的に分析し、「売れるパターン」を発見することで、属人的な活動から脱却できます。そしてMAやSFAでそのパターンを自動化すれば、持続的に成果を生む「売れる仕組み」が構築可能です。

 

データに基づいたアプローチで両部門の連携を最適化し、ビジネスの成長を加速させましょう。

07

Slopebaseとは

バックオフィス業務の
支出管理を支援する、
ノーコード・クラウドデータベース

Slopebase スロープベース

※バックオフィス業務とは経理や総務、人事、法務、財務などといった直接顧客と対峙することの無い社内向け業務全般を行う職種や業務のこと

この記事を書いた人

永瀬よしつぐ
Webライター。BtoB領域を専門とし、主にクラウドインフラ、SFA/CRM、ECに関する記事の執筆を手がける。これまで10社以上のBtoB企業のオウンドメディア立ち上げ・運営に従事。メルマガ、LP、SEO記事など発信媒体に合わせ専門領域の技術を分かりやすく解説し、BtoBマーケティングのリード獲得をサポートする。
監修
田中雅人(ITコンサルタント)

ソフトウェアメーカー取締役、IT上場企業の取締役を経て、現在、合同会社アンプラグド代表。これまでに、Webサイト制作、大規模システム開発、ECサイト構築、SEM、CRM等のWebマーケティングなど、IT戦略全般のコンサルティングを30年以上実施。現在は、大手上場企業から中小企業まで、IT全般のコンサルティングを行っているかたわらWebマーケティングに関するeラーニングの講師、コラム執筆なども実施。

人気記事

カテゴリ