経費の勘定科目 完全ガイド|判断基準と税務上の注意点をプロが解説

本記事は2026/06/04に更新しております。
経費の勘定科目 完全ガイド|判断基準と税務上の注意点をプロが解説

経費の仕訳は日常的に行う経理業務の一つです。正しく仕訳するためには「勘定科目」を理解することが不可欠です。本記事では、勘定科目の重要性や主要な勘定科目と仕訳例、迷いやすい勘定科目の判断の仕方について、プロの視点でわかりやすく紹介します。

01

経費の勘定科目の基本原則を再確認しよう

まずは、経理担当者として押さえておきたい勘定科目の役割と重要性を理解しておきましょう。

そもそも勘定科目とは

勘定科目は、企業の経済活動をわかりやすく分類して記録する「見出し」としての役割を持っています。仕訳の際に適切な勘定科目を設定することで、費用の性質が明確になります。加えて、同じ性質の費用がどれだけあるかを決算書上で集計できます。

経費の勘定科目を正しく設定すべき3つの理由

正確な勘定科目を使った経費の仕訳が必要な主な理由は、次の3点です。

 

  1. 客観的な経営判断につながる
  2. 適切な納税額の計算ができる
  3. 税務調査に備えられる

 

適切な勘定科目を使って取引の内容を記録することで、経営状況を客観的に把握できます。部署内で勘定科目のルールを統一しておけば、担当者によって処理の仕方が変わることもありません。

 

会社の利益を把握して税金の額を計算するうえでも、正しい勘定科目を使うことは重要です。利益を把握するためには適切な勘定科目を使った正確な仕訳が必要であり、仕訳や計算を誤ると税金の金額も間違う恐れがあります。正しい納税額の計算はもちろん、節税を考えるうえでも適切な勘定科目に沿った仕訳は不可欠です。

 

日頃から適切な勘定科目で仕訳することで、税務調査にも備えられます。税務調査では、業務と関係のない支出が費用として計上されていないかをチェックされます。正しい勘定科目を使っていれば、疑いの目を向けられにくくなるでしょう。

02

【一覧表】販売費及び一般管理費で使われる経費の勘定科目

経費を計上する仕訳でよく使う勘定科目は、多岐にわたります。以下では主な勘定科目を紹介し、自社に合った勘定科目を設定する場合の注意点も解説します。

経費に使う勘定科目一覧

経費は、主に販売費と一般管理費に分類できます。販売費とは会社が販売活動をするのに必要な費用、一般管理費とは会社全体の維持や運営にかかる管理費用です。具体的な勘定科目には次のものがあります。

 

【販売費】

 ●広告宣伝費

 ●荷造運賃

 ●販売促進費

 ●接待交際費

 ●旅費交通費 など

 

【一般管理費】

 ●役員報酬

 ●給料手当(給与)

 ●賞与

 ●法定福利費

 ●福利厚生費

 ●修繕費

 ●水道光熱費

 ●地代家賃

 ●消耗品費

 ●旅費交通費

 ●通信費

 ●租税公課

 ●保険料

 ●リース料

 ●新聞図書費

 ●諸会費

 ●支払手数料

 ●車両費

 ●減価償却費 など

勘定科目を追加する際の注意点

何にどの勘定科目を使うかは、明確に定められているわけではありません。必要であれば、自社に合った勘定科目を新たに設定することも可能です。新たに勘定科目を追加する場合は、取引の実態がわかりやすいものにしましょう。なお、企業会計の「継続性の原則」にのっとり、一度設定した勘定科目は継続して使うのが望ましいです。

 

会計ソフトを使う場合は、「補助科目」を活用すると便利です。例えば、使っている銀行口座が複数ある場合には、「当座預金(A銀行)」「当座預金(B銀行)」というように設定すると、口座ごとの現預金の動きをより把握しやすくなります。ただし、補助科目を細かく設定しすぎると業務が煩雑になるため、適度な粒度での設定が大切です。

03

【基本編】主要な勘定科目の定義と仕訳例

日常業務でよく使われる主要な勘定科目について、定義と具体的な仕訳例を紹介します。

旅費交通費

旅費交通費とは、業務上の移動にかかる交通費や宿泊費などを処理する勘定科目です。例えば、出張先のホテルに宿泊し、現金で10,000円支払った場合の仕訳は次のようになります。

 

旅費交通費 10,000 / 現金 10,000

 

私的な移動や宿泊にかかった費用は経費にできません。また、従業員が経費を立て替えて支払い、帰社後に清算する場合は、費用の証拠となるレシートや領収書が必要です。

消耗品費

消耗品費とは、事務用品や備品など、少額な物品購入費を処理する勘定科目です。例えば、コピー用紙を購入して現金で1,000円支払った場合の仕訳は次のようになります。

 

消耗品費 1,000 /  現金 1,000

通信費

通信費とは、電話代やインターネット料金、郵送にかかる切手代などを計上する際に使う勘定科目です。例えば、インターネット料金7,000円が当座預金口座から引き落とされた場合の仕訳は次のようになります。

 

通信費 7,000 / 当座預金 7,000

接待交際費

接待交際費とは、取引先や事業関係者との会食など、外部との親睦を深めるための支出に使う勘定科目です。例えば、取引先の社長との会食代40,000円を法人カードで支払った場合の仕訳は次のようになります。

 

接待交際費 40,000 / 未払金 40,000

会議費

会議費とは、社内外の打ち合わせで発生した飲食代などを処理する際に使う勘定科目です。例えば、社長と営業部員2人が社外のカフェで打ち合わせを行い、現金3,500円を支払った場合の仕訳は次のようになります。

 

会議費 3,500 / 現金 3,500

福利厚生費

福利厚生費とは、従業員の慰安や健康維持のために支出する費用に使う勘定科目です。慶弔見舞金などが含まれます。例えば、従業員の結婚祝いに会社から現金10,000円を支払った場合の仕訳は次のとおりです。

 

福利厚生費 10,000 / 現金 10,000

広告宣伝費

広告宣伝費とは、不特定多数に向けた製品やサービスの宣伝にかかる費用を処理する勘定科目です。例えば、駅に掲示するデジタル広告を出稿した場合に200,000円かかり、当座預金から振込で支払った場合の仕訳は次のようになります。

 

広告宣伝費 200,000 / 当座預金 200,000

支払手数料

支払手数料とは、銀行振込手数料や事務手数料など、役務提供の対価を支払う際に使う勘定科目です。例えば、買掛金500,000円を当座預金から支払い、その際の振込手数料500円を自社が負担した場合の仕訳は次のようになります。

 

買掛金 500,000 / 当座預金 500,500

支払手数料 500

雑費

雑費とは、他のどの科目にも当てはまらない一時的に発生した経費を処理する際に使う勘定科目です。例えば、事務所の引っ越し費用100,000円を現金で支払った場合の仕訳は次のようになります。

雑費 100,000 / 現金 100,000

 

 

上記のほかにも、文具代や団体の会費、ごみ処理費用などに雑費を使って仕訳することがあります。頻繁に発生することのない費用で、新たな勘定科目を作るほどではない場合に使われる勘定科目です。

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04

【応用編】プロが迷う勘定科目の使い分けと税務上の判断基準

実務では、勘定科目の判断に迷うケースもあります。以下では、迷いやすい勘定科目について、税法上のルールに基づいた明確な判断基準をみていきましょう。

「接待交際費」 vs 「会議費」 vs 「福利厚生費」

3つの勘定科目の基本的な内容は次のとおりです。

 

接待交際費 取引先に対する接待・供応・慰安・贈答の目的で支払う費用
(例:取引先との会食・取引先を訪問する際の手土産など)
会議費 会社の経営に関して行われる社内外の会議や打ち合わせに必要な費用
(例:自社従業員と取引先が参加する打ち合わせの飲食費・会議場所を借りる費用・会議資料の作成費用など)
福利厚生費 会社が従業員へ給与以外のサービスを提供する際にかかる費用
(例:社食の提供費用・社員旅行の費用など)

 

接待交際費は、仕入先や得意先など、社外の関係者がいるシチュエーションで計上する費用です。法人税法上、大企業では一定の飲食費を除いて損金にならず、中小企業でも年度の合計金額に上限があり、超えた金額に関しては損金にできません。

会議費は、従業員の飲食代だけでなく、社外の人の飲食代においても計上できます。飲食代だけでなく、会議場所を使う費用や会議資料の作成費用なども会議費に計上可能です。

福利厚生費は、社内の従業員のみが対象となり、従業員が希望すれば全員が対象となりうるものです。有志の一部の人が参加する飲み会の費用などは、福利厚生費ではなく社内飲食費として「接待交際費」を使うとよいでしょう。

 

税務上のポイント:10,000円基準の正しい適用方法

飲食費に関して、接待交際費と会議費を使い分けるポイントは、ひとりあたりにかかる費用の金額です。以前はひとりあたり5,000円以内とされていましたが、2024年の税制改正によりひとりあたり10,000円まで損金計上が可能となりました。

 

例えば、取引先との打ち合わせを兼ねた会食で、1人あたりの費用が8,000円の場合は損金として会議費に計上できます。しかし、1人あたり11,000円の場合は損金に計上できないため、接待交際費で仕訳する必要があります。

「消耗品費」 vs 「事務用品費」 vs 「雑費」

3つの勘定科目の基本的な内容は次のとおりです。

 

消耗品費 消耗するものにかかる費用。使用可能期間が1年未満または取得金額が10万円未満のもの。
(例:ティッシュペーパー・コピー用紙・ペン・パソコンのマウス・事務所の椅子など)
事務用品費 事務に使うものにかかる費用。
(例:コピー用紙・ペンなど)
雑費 ほかの勘定科目に該当しない少額の費用
(例:臨時的に発生したごみ処理費用・頻繁に交換することのない電球など)

 

消耗品費とは、短期間で消耗する少額のものにかかる費用で、日用品や事務用品、少額の備品など幅広いものが含まれます。便利な勘定科目である一方で、内容の詳細は把握しにくい面もあります。

 

そこで、他の消耗品費と区別する目的で「事務用品費」を使って仕訳する場合もあります。事務作業に使うものにフォーカスした金額を簡単に把握できます。

 

雑費とは、ほかの勘定科目に振り分けられない費用で、少額かつ一時的なものです。便利な勘定科目であるものの、多額であれば税務調査の対象となる場合があります。できる限り雑費は使わず、適切なほかの勘定科目を割り当てるようにしましょう。

 

税務上のポイント:一括償却資産・少額減価償却資産の特例との関係

資産は取得にかかった費用に合わせて処理する必要があります。処理方法には金額別に次のものがあります。

 

10万円未満 ・資産ではなく消耗品として処理し、全額をその年の経費に計上
10万円以上20万円未満 ・一括償却資産として処理、3年間で均等に償却
・資産として処理、耐用年数に応じて通常の減価償却
10万円以上30万円未満
(中小企業者等のみが対象)
・少額減価償却資産として処理し、年300万円を限度に即時償却(全額経費に計上)
・資産として処理、耐用年数に応じて通常の減価償却
30万円以上 ・資産として処理、耐用年数に応じて通常の減価償却

 

10万円未満で取得したものは消耗品の扱いとなり、取得金額の全額をその年の経費として計上します。一方で、10万円以上で取得したものは資産として扱い、耐用年数に応じて減価償却を行わなければなりません。しかし、会社の規模や金額によってはより簡単な方法で償却できる場合があります。

 

一括償却資産は、10万円以上20万円未満で取得した減価償却資産です。通常の減価償却を行ってもよいものの、使用を開始した年から3年間で均等に経費にすることも可能です。

 

少額減価償却資産としての処理ができるのは、青色申告をしている中小企業者等です(従業員が500名以下、出資金等が1億円を超える場合等一定の法人は300人以下)。10万円以上30万円未満で取得した資産について、取得金額の全額をその年度の損金にできます。利益の圧縮による法人税の軽減が期待できます。この特例を使わない場合は、通常の減価償却を行います。

 

30万円以上で取得した資産については、耐用年数に応じて通常の減価償却を行わなければなりません。

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SaaS・リモートワーク関連経費の勘定科目はこれだ

近年の技術革新や働き方の変化により、新しいタイプの経費も登場しています。こうした経費の取り扱い方を紹介します。

SaaS・サブスクリプション費用の会計処理

クラウドサービスやサブスクリプションにかかる費用の仕訳に使用する主な勘定科目は、次の2つです。

 

  1. 通信費
  2. 支払手数料

 

通信費は、インターネットや電話、郵便など通信に必要な費用、支払手数料はサービスの提供を受けるのに必要な費用に使います。実情にマッチした勘定科目を選びましょう。

 

上記の勘定科目を使うほかの費用と明確に区別したい場合は、「クラウドサービス利用料」「○○利用料」などの勘定科目を新たに設定することも可能です。勘定科目を決めたら、統一して継続的に使用しましょう。

在宅勤務手当・経費補助の会計処理

リモートワークの導入に伴って発生する、在宅勤務手当や経費の補助の計上に使える主な勘定科目は次のとおりです。

 

  1. 給与・給料手当
  2. 経費の実態に沿った勘定科目(例:消耗品費・通信費など)

 

勘定科目を判断する基準は、支払う金額が定額であるか、実費の金額であるかという点です。

 

毎月一律で支給する在宅手当は、給与と同等に扱われ、所得税の課税対象となります。勘定科目は「給与」「給料手当」などで処理しましょう。

 

実費を精算する形で在宅勤務に必要な経費を会社が負担する場合は、所得税の課税対象となりません。「消耗品費」「通信費」「旅費交通費」など、経費の種類に合わせた勘定科目で処理しましょう。

インボイス制度導入で注意すべき仕訳の変更点

インボイス制度の開始により、適格請求書発行事業者以外への支払いにかかる仕入税額は、売上税額から控除できなくなりました。

 

仕入や経費の仕訳を行う際は、次の手順で処理をしましょう。

 

  1. 相手が適格請求書発行事業者であるかどうかを確認する
  2. 適格請求書(適格簡易請求書)の記載事項を満たすかどうかを確認する

 

取引を行う相手がインボイス制度に登録しているかどうかによって、仕訳の方法も変わります。

 

【相手が適格請求書発行事業者の場合】

支払時に消費税額を「仮払消費税等」で計上

 

【相手が適格請求書発行事業者でない場合】

消費税区分を「対象外」などとして仕入税額控除が可能なものと区別する

経過措置を利用する場合は、支払時に消費税×80%(50%)の「仮払消費税等」を計上

 

仕入や経費を支払う際は、仕訳する前の確認が重要であるため、見落とさないようにしましょう。

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【管理職向け】失敗しない「勘定科目マニュアル」の記載事項と運用方法

勘定科目には様々なものがあるため、内容や処理の仕方をまとめたマニュアルがあると便利です。以下ではマニュアル化のメリットや必須項目、運用のポイントをみていきましょう。

勘定科目の社内ルールをマニュアル化するメリット

勘定科目についてのマニュアルを作成することで、次のメリットが期待できます。

 

  1. 業務がスムーズに進む手順をマニュアルで示すことで、業務を効率化できる
  2. 担当者が誰であっても同じ品質の業務ができる、明文化されているため判断に困らない
  3. 担当者が変わってもスムーズに引き継ぎできる、教育を効率的に進められる

 

明確なマニュアルを整備することで担当者の判断が統一され、処理のばらつきを防止できます。経験の浅い担当者でもスムーズに実務をこなせるようになることも、マニュアル化のメリットの一つです。

マニュアルに記載すべき必須項目

勘定科目のマニュアルには、次の点を記載しましょう。

 

  1. 勘定科目の定義
  2. 具体例
  3. 使用禁止例など

 

どのような内容を示す勘定科目であるかを、具体例を示しながら挙げることで、実務での処理パターンをイメージしやすくなります。マニュアルを参考にしながら、すぐ実践が可能です。

ルールを形骸化させないための運用ポイント

作成したマニュアルを形骸化させないためのポイントは次のとおりです。

 

  1. 定期的な見直しを行い、最新の内容や新たな知識・ノウハウを盛り込む
  2. 従業員の声を聴き、現場でうまく機能しているかを確かめる
  3. 研修を行いマニュアルに沿って理解を深める
  4. タブレットやスマホなど見られる手段を増やす など

 

マニュアルは作成して終わりにせず、定期的に見直しをして改善を重ねましょう。情報の量や濃度、現場での使いやすさなどを考えてブラッシュアップする必要があります。研修の機会を設けたり使う手段を増やしたりすることで、困ったときにはマニュアルに立ち返る習慣をつけることも有効です。

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まとめ

日々の仕訳を正確に行うことで、経営状況の把握や納税金額の計算に役立ちます。そのためには、勘定科目の意味を一つひとつ理解し、使い分けのポイントを押さえておくことが重要です。知識やノウハウをまとめたマニュアルを作成することで、勘定科目が多くある中でも効率的かつ正確に業務を進められるでしょう。

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この記事を書いた人

福島彩香 
地元中小企業において、経理・総務担当として2年間勤務し、在職中に独学で簿記2級を取得。一人の部署であり、日々の仕訳から決算業務、入退社管理や補助金申請書類作成など幅広い業務を経験。出産を機に退職し、ライター業を開始するかたわら、家族の経営する小さな会社の経理業務も行う。経理や数字に苦手意識のある方にも読みやすい記事の執筆を心掛けている。  
監修
梶本卓哉(公認会計士、税理士)

早稲田大学卒業後、関東信越国税局採用。税務大学校を首席卒業(金時計)し、税務署法人課税部門にて法人税、消費税等の税務調査に従事。複雑困難事案の事績により署長顕彰。大手監査法人に転職後、製造業や不動産業をはじめ様々な業種の上場会社監査やIPO監査に従事。その後、中央官庁勤務を経て大手証券会社の引受審査部・公開引受部にてIPO業務に従事。現在は主に法人の税務顧問を務めており、スタートアップ支援に強みを有する。

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