01
アンケート回答者が勤務する企業の従業員数


〈 トピックス 〉
近年、業務効率化や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進するため、営業や人事などの事業部門が独自に新しいツールやSaaS(クラウドサービス)を導入するケースが急増しています。しかし、その裏側で、情シス部門は、「システムの乱立による管理の崩壊」や「データ統合の壁」という新たな課題に直面しています。
そうした背景のなかで、ノーコード・クラウドデータベース「Slopebase(スロープベース)」を販売する㈱NTTデータビジネスブレインズでは、情シス実務担当者221名に対して、現場が直面している「DX推進のリアルな障壁」と「事業部門との間に横たわる深い溝」について、アンケート調査を実施しました。
本記事では、IT部門やシステム運用担当者へのアンケートをもとに、現場が直面している「DX推進のリアルな障壁」と、事業部門との間に横たわる深い溝について、設問ごとに解説・考察していきます。
------------------------------------
アンケート回答者: 情シス実務担当者:221人(全国)
アンケート回答期間: 2026/4/17-4/18
※すべての回答データではなく回答が有効なものデータを集計しています。
------------------------------------
01

02

【DX推進のリアルな障壁】
まずは、情シス実務担当者の方々に、シャドーITがどの程度存在しているかを聞いてみました。
03

「各部門に任せきりのため数多くあると思う(52.4%)」「管理されていないため全貌が不明(15.1%)」と約7割がシャドーITの蔓延を実感している結果となりました。「管理が厳格でないためいくつかは存在していると思う(18.9%)」を合わせると、8割以上の企業にシャドーITが存在していることになります。
事業部門からすれば、情シスに申請して時間のかかるセキュリティチェックを受けるより、自分たちの予算でクレジットカード決済し、即日使い始めた方が、業務スピードが上がるという背景があります。しかし、これは全社的なITガバナンスの崩壊を意味します。どこにどんな機密データがアップロードされているのか、情シスが全く把握できない状態は、重大な情報漏洩リスクを孕んでいます。
次は、各ツールなどのアカウント管理について聞いてみました。
04

「主要システム以外は手作業の対応(54.2%)」「人事からの連絡後ほぼ手動で実施(24.5%)」と手作業依存が7割超といった結果になりました。
システムが乱立しているため、一つのID(例えばActive DirectoryやOktaなど)で全システムを統合管理(SSOプロビジョニング)することが困難になっています。結果として、新入社員が入るたびに、情シス担当者が数十個のSaaSの管理画面にログインし、ひとつひとつ手動でアカウントを発行・削除するという、極めて非効率でミスの起きやすいアナログ業務が常態化しています。
次は、退職者のアカウントがアクセス可能になっていることがあるかどうか聞いてみました。
05

「連絡漏れ等でたまに発生する(60.9%)」「棚卸等のたびによく発覚する(13.5%)」と7割以上が発生してるという結果になりました。
手作業の対応が多いことから、非常に危険なセキュリティインシデント(あるいはその予備軍)が発生しています。事業部門が独自導入したシステムは、情シスが退職者を把握しきれず、アカウントが消し漏れるリスクが高まります。退職者が悪意を持てば、自宅から社内の顧客リストや機密情報にアクセスできる状態が放置されていることになり、また、使っていないSaaSのライセンス料を無駄に払い続けているというコスト面の損失も無視できません。
次は、データ連携において手作業で行う業務の頻度を聞いてみました。
06

「日常的に発生する(25.3%)」「たまにまたは定期的に発生する(57.6%)」と8割以上が手動連携に追われているという結果になりました。
各部門がバラバラにシステムを導入した結果、システム同士のAPI連携が行われず「データのサイロ化(孤立)」が発生しています。これを繋ぐのは結局「人」です。
例えば、「営業支援システム(SFA)からCSVを出力し、マーケティングツール(MA)用のフォーマットにExcelで手修正してアップロードする」といった作業は、本来自動化すべきDXの真逆を行く悲しい現実です。
次は、数字のズレの調査に時間が取られることがあるか聞いてみました。
07

「頻繁にある(21.5%)」「たまにある(61.0%)」と、8割以上がデータ不一致の調整に苦慮している結果となりました。
例えば、営業部門のシステムでは「受注時点」を売上とし、経理部門のシステムでは「入金時点」を売上と定義しているようなケースです。
「なぜシステムAとシステムBで売上数字が違うのか?」という指摘から、データ突合が始まり、膨大な時間が浪費されます。ツールだけを入れても、全社的な「データのルール」を統一しない限り、こうした混乱は避けられません。
次は、こうしたことで最も壁やストレスを感じる要因が何かを聞いてみました。
08

「情シスに丸なげされること(52.1%)」が突出。次いで「ITリテラシーの差(22.7%)」、「各部門で業務が属人化されていること(14.2%)」とう結果となりました。
事業部門は「これを導入したいから、あとは情シスでよしなにやっておいて」という態度を取りがちです。しかし、システム導入は「業務プロセスをどう変えるか」というビジネス要件の定義が不可欠です。業務内容を知らない情シスに丸投げされても要件定義は不可能であり、ここで深い溝とストレスが生じています。情シスを単なる「ITの御用聞き・下請け」と見なす企業文化が大きな障壁となっています。
次は、シャドーITの丸投げが実際にあるのか聞いてみました。
09

「よくある(25.0%)」「たまにある(54.2%)」と約8割が理不尽な対応を迫られている結果となりました。
前述のとおり、「勝手に導入したシャドーIT」であるにもかかわらず、いざ動かなくなったりパスワードを忘れたりすると、「ITのことは情シスの責任だ」とばかりに丸投げされる実態があります。自分たちで選定・導入したのだから自分たちでベンダーに問い合わせるという当事者意識が欠如しており、これが情シス担当者のモチベーションを著しく削ぎ、無駄な業務負担を増大させています。
次は、データの一元管理の現状について聞いてみました。
10

「定義はあるが実態はズレている(50.5%)」「未定義でデータごとにバラバラ(16.0%)」など、6割以上の企業でデータが一元管理されていないという結果になりました。
顧客情報という企業の命綱である「マスタデータ(正となるデータ)」が、一元管理されていません。名寄せがされていないため、同じ顧客が別々のシステムで二重、三重に登録され、最新情報がどれなのか誰もわからない状態だと考えられます。これでは、「AIによるデータ分析」などを導入しても、ゴミデータからは使えない分析結果しか生まれず、本当の意味でのDXは不可能です。
最後に、現在存在する手作業によるデータ連携が解消される見込みを聞いてみました。
11

「あまり期待できない(39.6%)」「全くない(5.2%)」と半数近くが将来を悲観している結果となりました。一方で「改善プロジェクトが進行中(32.1%)」と希望がある企業も一定数いるようです。
手作業やデータの不一致は、もはや情シス部門単独の努力で解決できるレベルを超えています。そのため「今の企業風土のままでは何も変わらない」と悲観する声が多いのは自然な結果と言えます。しかし3割以上の企業では、問題を重く見た経営陣や部門横断プロジェクトが動き出しており、企業間でのDX推進格差が今後さらに広がっていくことが予想されます。
12
調査結果から見えてきたのは、「各部門の良かれと思った個別最適のツール導入が、全社視点では全体最適を破壊し、セキュリティリスクと手作業の連鎖を生み出している」というパラドックスです。
DX推進における最大の障壁は、システムの機能不足ではなく、「部門間の壁」と「丸投げ体質」にあります。事業部門は「システムは自分たちの業務を改善するための武器であり、自らが当事者である」というITリテラシーと責任感を持つ必要があります。一方でIT部門も、ガチガチに統制してシャドーITを禁止するだけでなく、事業部門が安全に素早くツールを使えるようなガイドラインや仕組みを整備する「ビジネスパートナー」へと役割を変えていく必要があります。
手作業の連鎖を断ち切り、本当のDXを実現するためには、経営層がリーダーシップを取り、IT部門と事業部門を橋渡しする専門チーム(CoE:Center of Excellence)を組成するなど、全社的なルールづくりとデータガバナンスの再構築に本気で取り組む時期に来ています。
13
バックオフィス業務の
支出管理を支援する、
ノーコード・クラウドデータベース

※バックオフィス業務とは経理や総務、人事、法務、財務などといった直接顧客と対峙することの無い社内向け業務全般を行う職種や業務のこと

ソフトウェアメーカー取締役、IT上場企業の取締役を経て、現在、合同会社アンプラグド代表。これまでに、Webサイト制作、大規模システム開発、ECサイト構築、SEM、CRM等のWebマーケティングなど、IT戦略全般のコンサルティングを30年以上実施。現在は、大手上場企業から中小企業まで、IT全般のコンサルティングを行っているかたわらWebマーケティングに関するeラーニングの講師、コラム執筆なども実施。