DXの取り組みが「新しいツールの導入」に偏ると、データの二重入力やExcelのやりとりがむしろ増えることがあります。中小企業基盤整備機構の調査(2025年12月実施)では、DXに取り組んでいる、または検討中の企業は39.1%と前回からほぼ横ばい。「AIの活用」が取組内容として増加した一方、IT人材・DX人材の不足や予算確保の難しさが課題として高まっており、「具体的な効果や成果が見えない」という声も障壁として挙がっています。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査 ポイント」
中小企業庁の「2025年版 小規模企業白書」でも同様に、デジタル化の取組段階を問わず「費用の負担が大きい」「DXを推進する人材が足りない」と答える事業者の割合が高いことが示されています。ツールを選ぶ前の段階で、レガシーシステムが残ることによって「効果が見えない状態」が固定化しやすい——そういう構造があります。
出典:中小企業庁「2025年版 小規模企業白書 第5節 デジタル化・DX」
経済産業省は中堅・中小企業向けに、デジタルガバナンス・コードに沿ってDXを推進するための手引き(2025年版)を公表しており、外部支援機関の活用や人材確保の重要性を示しています。レガシー対策は、この手引きが想定する「業務の見える化」「データの整備」の土台に直結する取り組みです。
出典:経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025」
レガシーが残る組織的な要因としては、属人的な運用、仕様のブラックボックス化、変更管理の欠如が挙げられます。経済産業省のレガシーシステムモダン化委員会の総括レポート(2025年5月公表)では、仕様の不透明化、業務とITを両方理解できる人材の不足、現場の協力が得にくいことなどが、モダン化の主な障壁として整理されています。
中小企業では、投資体力・ITリテラシー・人材リソースの制約が重なり、大規模プロジェクトに踏み切れない場合がほとんどです。この現実を前提に、進め方を設計することが重要です。
出典:経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」
情シス向け——「レガシーシステム」を経営リスクとして定義し直す
レガシーシステムとは、単に「古い」ことを指すわけではありません。情シスが社内で共有すべきは、次のような「経営リスクに直結する状態」です。
- OSやデータベースのサポートが終了している、または終了間近である
- 公式サポートの切れたミドルウェアやライブラリ(EOL)が本番環境で動いている
- 設計書と実装が乖離しており、改修の影響範囲が読めない
- 許可されていないクラウドサービスや個人のExcel・メールが、業務データの正本になっている
- バッチや手作業が境界にあり、障害が起きても誰が何を復旧するか決まっていない
こうした経営リスクの具体例や、自社が抱える課題の洗い出し方については、こちらの「レガシーシステムの課題と対策」で詳しく解説しています。経営層への説明材料としてあわせてご活用ください。
これを社内に伝える際は、単なる注意喚起にとどめず、「止まると売上・納期・コンプライアンスのどれが直撃するか」と具体的に結びつけることが大切です。
たとえば販売管理だけが古く、会計はすでにクラウド化されている場合、リスクの本質は「会計の数字は新しいが、売上・在庫の根拠は古いシステム側にある」という不整合にあります。経営層への説明では、更新コストの話をするより「判断の遅れと説明責任にかかるコスト」として伝えるほうが、優先順位の議論が進みやすくなります。