ここからは、情シス部門と管理職が自社のロードマップとして活用できる、クラウド拡張の具体的な3つの手順をわかりやすく解説します。
ステップ1:基幹に残す範囲とクラウドで補う業務を切り分ける
最初のステップでは、現在のシステムと業務の状況を整理して、どこをクラウド拡張の対象にするか範囲を決めます。まずは、「今の基幹システムでしっかり確定させるべきデータ、帳票、夜間処理」と、「現場が日々困っている画面の操作、承認の手続き、社外で使いたいニーズ」をそれぞれ書き出してみましょう。
管理職の視点からは、「経費の申請」「外出先からの受発注入力」「リアルタイムの在庫確認」「経営陣向けの売上ダッシュボード」など、導入してすぐに効果が目に見えやすい業務を優先的に選定する必要があります。同時に情シス部門は、システム同士のつなぎ方、セキュリティの境界線、そしてどちらのデータを正しいもの(正本)とするかのルールを整理します。
ここで社内の合意を取るポイントは、システムを丸ごとリプレイスするのではなく、今のシステムを活かした拡張であることを、関係するメンバー全員にしっかりと理解してもらうことです。
ステップ2:クラウドデータベースをフロントエンドとして設計する
ステップ2では、ノーコードのクラウドデータベースを使って、現場の社員が毎日触れる使いやすい画面と仕組みを形にしていきます。スマートフォンやタブレットからでもストレスなく入力できる画面や、条件によるルート分岐・差し戻し・自動お知らせが簡単にできる柔軟な承認機能、さらには使う人に応じたアクセス権限や操作記録(ログ)の機能を設計します。
このステップでの役割分担は、情シス部門は、1回のログインで複数のシステムを使える設定(ID連携)や、IPアドレス単位のアクセス制限、二段階認証などのセキュリティ対策、ネットワークの構築、そして安全に本番環境へ反映させる手順作りに専念することです。一方で、実際の業務を行う部署のメンバーがプロトタイプ作成に参加し、使いやすい画面や業務フローを一緒に検討することが重要です。
予算・販売・経費・在庫・生産などの業務データは、クラウド上の「Slopebase」で一元管理しながら、データのグラフ化や業務の自動化を進めていきます。古い基幹システムの使いにくい画面を直接利用するのではなく、使いやすいWebやスマートフォン画面を提供することで、現場は早い段階で業務改善の効果を実感できるようになります。
ステップ3:基幹と段階連携し運用を安定させる
最後のステップでは、新たに構築したクラウドデータベースと既存の基幹システムを連携します。連携方法は、システムの仕様に応じて、APIによる自動連携やCSVファイルを使ったファイル連携、あるいは画面操作を自動化するRPAなどを柔軟に使い分けます。
情シス部門が判断すべき大切なポイントは、顧客マスタや売上データなどの管理ルール(どちらのシステムにあるデータを最新で正しいものとするか)、データを同期させる頻度、連携でエラーが起きたときの再試行や手動でのカバー手順、そして検証用のテスト環境の準備です。
運用をスムーズに進めるためには、いきなり全社で一斉にスタートさせるのではなく、特定の部署に対象を絞って小さく始めることです。スタートした後は、作業時間がどれくらい減ったか、入力にかかる時間がどれだけ短くなったか、エラーが何件起きたかなどの数字を測り、その実績をもとに他の部署や業務へと連携の輪を広げていくロードマップを作ります。
また、システムの変更管理や本番反映は情シス部門が主導し、予算の判断や部署間の調整は管理職がリードするという役割分担をはっきりさせておきましょう。数週間から数か月という短い期間で、まずは低コストで確実な成果を出すという姿勢がプロジェクト成功のために不可欠です。