全面刷新の限界を打破する考え方として注目されているのが、システムの役割を明確に分ける「2層ERP」です。2層ERPは、統制と柔軟性という相反するニーズを同時に満たすことを可能にします。
2層ERP(Two-tier ERP)とは何か?
2層ERPとは、企業のシステムを「1層目(Tier 1)」と「2層目(Tier 2)」に分けて運用する手法です 。
1層目(コア・システム)
全社共通の会計基盤など、高い安定性や正確性が求められる中核業務を担います。この1層目には稼働中のレガシーシステムをそのまま残します。
2層目(エッジ・システム)
各事業部固有の営業支援や経費精算など、柔軟性やスピードが重視される周辺業務を担います。この2層目にはクラウドERPやSaaSを配置します。
既存システムを「コア」として活かし続けるメリット
2層ERPの最大のメリットは、使い慣れた既存システムを維持しながら、周辺部門だけを新システムに置き換えられることです。具体的な利点として、以下が挙げられます。
画面・操作体系が変わらない
本社側は従来通りの入力画面・帳票で業務を継続できます。ユーザー教育やマニュアル作成のコストが低減し、現場の混乱を最小限に抑制できます。
業務プロセスの継続
基幹業務フロー自体を大きく変える必要がなく、現場の属人ノウハウをそのまま維持できます。再設計による作業停滞や抵抗も避けられます。
投資資産の流用
既存システムに蓄積されているマスタデータや帳票、業務知識はそのまま活用可能です。過去データを捨てずに移行できるため、データ資産をフルに活かせます。
周辺業務を「エッジ」としてクラウド化しDXを推進
コアシステムを安定運用しながら、変化の激しい周辺業務をエッジとしてクラウド化することで、DXを加速できます。従来はレガシーシステムの一部として組み込まれていた経費精算や勤怠管理、顧客管理などを、専門のSaaSへ切り出します。
これにより、最新のSaaSは、モバイル対応や法改正への自動対応といった機能を最短数週間で提供することが可能です。2層ERPを採用することで、既存システムを活かしながらデジタルの恩恵を迅速に享受できる、アジャイルな経営基盤を構築できます。