対象業務が決まったら、次は候補の絞り込みです。ここでは4つの基準を順に見ていきます。
変えない業務と合わせる業務を先に仕分ける
製品に自社の業務を合わせるのか、製品を自社の業務に合わせるのかは、契約前に決めておくと迷いが減ります。おすすめは、現行フローを3つに色分けする進め方です。
- 変えられない業務は、法令や取引先との取り決めで手順が決まっているもの
- 変えたくない業務は、変えると現場の作業量が増えるもの
- 変えてよい業務は、慣習で続いているだけで、理由を説明できないもの
「変えてよい業務」に分類できた工程が多いほど、製品の標準機能で足ります。「変えられない業務」が多い場合は、設定で対応できる範囲をデモの場で確かめておきます。
現場の担当者が触れるかどうかを、デモのどこで見るか
デモを見る際は、営業担当の操作を眺めるより、自社の帳票を1枚渡して作ってもらうほうが判断しやすくなります。見る箇所は3つです。項目を1つ足すのに何回の操作が要るか、入力の途中で保存できるか、間違えた申請を取り消せるかを確かめます。
現場が使えるかという不安は、IT部門が主導する企業でも挙がります。従業員約400名の化学メーカーからは「IT部門としては良いツールだが、現場が使えるかどうか」という声がありました。従業員約150名のソフトウェア開発(金融系)でも「営業担当が使ってくれるか?総務部が使い切れるか?」が、検討を進めるうえでの論点になっています。
現場の抵抗をどう扱うかについては、「脱Excel」はなぜ失敗するのか?現場の抵抗をゼロにする「活(かつ)Excel」という新しい考え方が詳しく扱っています。
デモの印象だけで判断しないためには、自社の業務データを使い、合否基準を決めてから確かめるPoC(導入前検証)が有効です。
クラウドを候補に入れてよいかの前提を確かめる
社内にサーバーを置く形と、クラウドで借りる形のどちらにするかは、社内で意見が分かれやすい論点です。判断材料として、公的な調査を1つ挙げます。
総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」を見てみましょう。2026年5月29日に公表された資料です(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」 )。クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は83.5%でした。内訳は、全社的に利用が60.0%、一部の事業所または部門で利用が23.5%です。
この83.5%は、メールやファイル保管を含むクラウドサービス全般の利用率です。業務のツールをクラウドに置くこと自体は珍しくない、という程度の裏づけとして読むのが安全です。社内で合意を取る場面では、この範囲を添えて示すと話が早くなります。

(出典:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」)
制度改正とサポートを何年先まで求めるか
制度の改正にベンダーが対応し続けるかどうかは、契約前に確認しておく項目です。帳票を扱う業務では、電子帳簿保存法(国税関係の帳簿や書類を電子データで保存するときの決まりを定めた法律です)への対応方針を聞いておきます。
国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」の令和7年6月版を見てみましょう。同資料は電子取引を「取引情報の授受を電磁的方式により行う取引」と定義しています(出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」)。つまり、メールやウェブでやり取りした請求書や見積書も、この決まりの対象に入ります。
見る年数の目安は、既存システムの更改時期に合わせます。たとえば従業員571名の小売業(釣具・26店舗)は、現行のPOSシステム(店舗のレジで、売れた商品と数量をその場で記録する仕組み)を2029年3月末まで利用する予定です。更改の提案が社内で決裁されれば、2027年度後半から次の検討に入る計画になっています。あわせて、契約する製品のサポート期限も、この更改時期と並べて確認しておきます。
これら4つの基準を事前に整理しておくことで、製品デモで検証すべき具体的な操作内容や、ベンダーへの確認事項が明確になります。
要件定義書の書き方とサンプルに関しては、要件定義書の必要項目と書き方|実案件のサンプルと未決事項の管理法(テンプレート付)をご覧ください。