承認者が増えてしまうのは、決して担当者の設計が甘いからではありません。部門をまたぐ申請業務には、無意識のうちに「人を足す」方向へと働く力が存在します。自社の承認ルートが無駄に長くなっている場合、以下の3つの力学のどれに当てはまるかを確認してみてください。
他部門の管理職を外しにくい
1つ目は、組織特有の力学です。「他部門の管理職を承認ルートから外すと角が立つのではないか」という心理が働き、本来は不要な「確認者」としてどんどん人を足してしまうケースです。
当社が2025年10月に情報システム部門の管理職221名へ実施した調査では、組織の「縦割り意識」や「部門最適」の考え方がDX推進の障壁になっていると感じるか尋ねました。その結果、「強く感じる(23.5%)」と「感じる(55.2%)」を合わせ、78.7%もの方が障壁を実感していることが分かりました。

出典:「レガシーシステムが存在する企業は91.9%!~情シス部門の管理職221人に"現場が直面するDX推進の障壁と課題"についてアンケート調査を実施~」
縦割り組織の課題を完全に解消してから設計を始めようとすると、いつまでもプロジェクトは進みません。承認者を足す前に、「その担当者は、申請に対して『否(差し戻し)』を出す権限と責任を持っているか」という1点のみを冷静に確認してください。
帳票ごとの違いを1本化してしまう
2つ目は、標準化を意識しすぎた結果起こる弊害です。当社のPoCにご参加いただいた、従業員約400名・全国20拠点の商社様の例が参考になります。
同社では、「取引先と取り交わす協力費確認書」と「社内で処理する振替伝票」の2つが検討対象でした。協力費確認書の社内承認には「上長・支店長・仕入責任者・本社仕入業務部」の4者が必要ですが、振替伝票では上長が外れて3者となります。
このように、書類の性格が異なれば関与するメンバーも変わります。すべてを無理に「1本の標準ルート」に押し込もうとすると、こうした細かな差異を吸収できず、かえって運用が複雑になります。
確認書と振替伝票を種類ごとのデータに分け、回る順番に合わせて電子化した設計は、振替伝票と確認書を分けた伝票の電子化の設計例で紹介しています。
社外の手続きを社内延長として扱う
3つ目は、社外関係者の扱いです。取引先による「署名」や「確認」の工程を、社内承認の1ステップと同じように描いてしまう例が散見されます。
社内の「承認」は、権限を持つ者が可否を判断する行為です。一方、取引先への依頼は「署名」や「書類の返送」といった作業のお願いです。性質の異なる両者を同じフローに並べてしまうと、権限の設計が曖昧になります。設計時には「相手に何を見せ、何を操作させるか」を切り離して決めることが重要です。