「捨てない」移行とは、レガシーシステムをすべて廃棄するのではなく、残す価値のある機能やデータを維持しながら、変えやすい領域から段階的にモダナイズ(古いシステムを最新の技術に合わせて現代化すること)していくことです。会計や在庫の確定データ、過去の取引との紐づけ、法定帳票などは、既存の基幹システムを「正本」として残します。一方、入力、申請・承認、横断的な集計、部門間の情報共有などは、新しいクラウド環境へ移す対象になります。
代表的な移行手法には3つあります。既存システムを別の環境へそのまま移す「リホスト」、新しいパッケージ製品などに置き換える「リプレイス」、新しい仕組みとして作り直す「リビルド」です。重要なのは、どれか1つを全社で選ぶことではなく、業務やシステムの特性に応じて複数の方法を組み合わせることです。
この考え方に関して、当社が2026年に実施しているPoC(Proof of Concept=導入前検証)の企業の例を紹介します。
従業員571名の小売業(釣具専門店・26店舗展開)では、店舗の発注・仕入・商品移動・廃棄・中古買取のデータをすべて基幹のPOSシステムに組み込んでいます。現行のPOSは2029年3月末まで利用を予定しており、更改の提案が社内で決裁されれば、2027年度後半から検討を始める計画です。
この企業が抱えているのは、業務機能だけを外に出したいが、コストがかかるという悩みです。基幹をすぐに入れ替えるのではなく、発注・仕入や在庫数量を見ながら発注する業務など、変えやすい部分から切り出す発想は、「捨てない」移行の実践例といえます。
基幹システムを正本として残す判断は、AS/400(老舗の基幹系ホストコンピュータ)のようなレガシー基幹システムを持つ企業ほど切実です。従業員約400名・全国20拠点の商社では、基幹システムとの連携ができるかどうかが、ツール選定でもっとも重要な条件になっていました。「AS/400があり、AS/400へのデータ連携ができなければ、手入力業務が残るので、AS/400連携ができないツールだと意味がない」という現場の声は、基幹システムをむやみに手放さない判断の根拠を示しています。
捨てるものと残すものの切り分け方
判断の軸は、システムの新旧ではなく、業務上の重要性と変更のしやすさです。残しやすいのは、会計や在庫の確定処理、過去の取引との紐づけ、法令対応が必要な帳票などです。長年蓄積された実績を無理に移すより、正本として維持したほうが安全なケースが多くあります。
一方、申請・承認、部門横断の可視化ダッシュボード、モバイル入力、新しく始める業務プロセスは、移行しやすい領域です。「古いから捨てる」「新しいから残す」ではなく、業務上の役割で判断することがポイントです。具体的な進め方は、塩漬けレガシーシステムからの安全な脱出法。データを捨てずに新システムへ移行する現実的な3ステップでも詳しく解説しています。
NTTデータビジネスブレインズが提供するノーコード・クラウドデータベース「Slopebase」は、社内の業務データをクラウド上のWebデータベースで統合管理するサービスです。予算・資産・リース、販売・購買、経費、営業・顧客、在庫、生産などの管理に対応しています。ノーコードで構築でき、チーム単位のスモールスタートから全社利用へ広げられる点も特徴です。基幹システムを入れ替えず、周辺業務やデータ管理から改善していく発想は、「捨てない」移行を実践する具体的な方法のひとつです。
なお、最近よく耳にするポストモダンERPとは、基幹システムを残しながら、その周辺だけ新しいクラウドサービスに任せる、2つの層に分けた構成を指します。移行手法をさらに詳しく知りたい方は、レガシーシステム脱却の「ポストモダンERP(2層ERP)」戦略と具体的な進め方ガイドもあわせてご覧ください。
「基幹システムは残したまま、周辺の業務だけ動かしたい」という段階から、Slopebaseで何がどこまで作れるかは資料請求ページからご確認いただけます。全社導入の前段階として検討したい方に向けた内容です。