アクセス権限管理とは、誰が・どのリソースに・どのような操作を許可されるかを制御する仕組みです。操作には、閲覧・作成・編集・削除・出力などが含まれます。ここで混同しやすいのが、認証と認可の違いです。
認証と認可の違いと最小権限の原則
認証は本人確認のプロセスで、IDとパスワードや多要素認証がこれに当たります。一方、認可はその人に何を許可するかを判断するプロセスであり、アクセス権限管理は、この認可を業務の実態に合わせて設計・運用することです。認証の仕組みが整っていても、認可の範囲が広すぎれば情報漏洩は防げません。
■認証
本人確認を行うプロセス。IDとパスワードや多要素認証などが該当する
■認可
認証された本人に、何を許可するかを決めるプロセスでアクセス権限管理の中核にあたる
そこで権限設計の出発点となるのが、最小権限の原則です。業務に必要な最低限の権限のみを付与し、それ以外は許可しないという考え方です。
実務上、権限は後から広げることは容易ですが、一度広げた権限を後から絞るのは難しいという側面があります。設定の手間を避けて全員にアクセスを開放してしまうと、誤操作によるデータ消失や情報漏洩のリスクが高まります。必要になった時点で追加する運用のほうが、最初から広く付与するよりも安全で管理がしやすいという考え方です。
ロール・スコープ・例外の分け方
個人単位で一つひとつ権限を設定・管理していると、管理負荷が膨大になりミスも起きやすくなります。そこで有効なのが、役割ベースのアクセス制御(RBAC、個人ではなく「経理担当」のような役割の単位で権限をまとめて管理する方式)です。権限をロール・スコープ・例外の3つに分けて設計します。
| 分類 |
概要 |
具体例 |
| ロール |
その役割が何をできるかを定義する操作権限の集合 |
経理担当者ロールは請求書の作成や経費申請の承認状況閲覧ができる |
| スコープ |
ロールが適用される範囲 |
同じ営業担当者ロールでも、担当エリアのみか全社データを対象とするのかを分ける |
| 例外承認 |
通常のロールでは対応できない業務に対して、期限つきで付与する一時的な権限 |
特定のプロジェクトに社員へ3か月限定で他部署データの閲覧を許可する |
高額な決済やシステム設定の変更などの重要な操作では、申請する部門と承認する管理者を分ける「職務分離」の考え方を取り入れると、不正やミスの防止につながります。
内部統制(不正やミスを防ぎ、会社を適正に運営するための社内の仕組み全般)の観点からも、職務分離は重要です。
企業会計審議会が令和5年4月7日に公表した意見書は、統制活動に権限や職責の付与、職務の分掌などの手続きが含まれると述べています(出典:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」令和5年4月7日 )。
同意見書は財務報告についての内部統制を対象にした資料です。
つまり、誰か1人だけで申請から承認まで完結させない仕組みが、内部統制の土台になります。この考え方は業務システムの権限設計にも当てはめられ、ロール単位で管理すると異動時の変更も容易になります。