ここからは、当社が実施した独自調査の結果をもとに、各社の稟議フローが実際にどうなっているのかを見ていきます。
調査概要
| 項目 |
内容 |
| 調査対象 |
業務・管理系部門のリーダーもしくは管理職の方:221人(全国) |
| 調査期間 |
2026年8月21日〜8月22日 |
| 調査方法 |
インターネット調査 |
| 調査主体 |
株式会社NTTデータビジネスブレインズ(自社調査) |
※すべての回答データではなく、回答が有効なデータを集計しています。
※設問によっては「紙・押印が残っている方」に限定して質問しており、その場合の回答者数はn=179です。
8割超の部署に、いまも紙・押印が残っている
■あなたの部署が関わる申請・承認業務のうち、紙の書類への押印(またはサイン)を必要とするものはどのくらいありますか。

「紙・押印は残っていない(すべて電子化済み)」と回答したのはわずか13.9%でした。裏を返せば、82.9%の部署にはいまも紙・押印が残っていることになります。
内訳は「一部だけ紙・押印が残っている」25.9%、「半分程度が紙・押印である」24.5%、「ほとんど紙・押印で行っている」23.6%、「すべて紙・押印で行っている」8.8%。半分以上が紙・押印である部署が56.9%と過半数を占めており、「一部だけ例外的に残っている」という限定的な状態にとどまっていません。
押印欄は3個以上が63.1%――書類が止まりうる場所の数
■紙・押印が残っている方にお聞きします。現在お使いの申請・承認書類のうち、最も押印欄(承認欄)が多い書類には、押印欄がいくつありますか。

紙・押印が残っている方に、最も押印欄が多い書類の押印欄の数を尋ねました。最多は「3個」34.6%で、「2個」22.3%、「4〜5個」15.1%、「6〜9個」8.4%、「1個」6.1%、「10個以上」5.0%と続きます。
3個以上が63.1%、4個以上でも28.5%にのぼりました。押印欄が1つ増えるということは、単に押す回数が1回増えるということではありません。書類が止まりうる場所が1か所増えるということです。
承認者は3人以上が64.4%。しかも「最も件数の多い申請」で
■あなたの部署で最も件数の多い申請について、1件が決裁されるまでに実際に承認・押印を行う人はおよそ何人ぐらいですか。

「3人」26.9%が最多で、「2人」16.7%、「4人」15.7%、「5人」11.1%、「6〜9人」6.0%、「1人」5.6%、「10人以上」4.6%という結果でした。3人以上が64.4%、4人以上も37.5%を占めます。
ここで重要なのは、この設問が「あなたの部署で最も件数の多い申請について」尋ねている点です。例外的に重い決裁ではなく、日常的に発生する定型申請ですら、3人以上の承認を要するのが多数派だということになります。
決裁まで2日以上が61.1%、当日完結はわずか6.0%
■あなたの部署で最も件数の多い申請について、申請してから最終決裁が下りるまで、実際には平均してどのくらいの日数がかかっていますか。

「2〜3日」32.4%が最多で、「4〜7日」21.3%、「1日」17.6%、「8〜14日」6.5%、「当日中」6.0%、「15日以上」0.9%という分布になりました。
当日中に終わるのはわずか6.0%。2日以上かかるものが61.1%を占め、1週間近く、あるいはそれ以上を要するものも28.7%あります。前問の「承認者3人以上が64.4%」と重ね合わせると、承認者1人あたりおよそ1日弱の滞留が発生している計算になります。
この日数は、最も件数の多い申請についての回答です。年に数回の重要案件ではなく、毎日のように発生する業務が、この速度で流れているということになります。
押印欄の76.0%は「決裁」ではなく「確認・回覧」だった
■紙・押印が残っている方にお聞きします。申請書類の押印欄・承認欄のうち、「責任をともなう承認(決裁)」ではなく「内容を見たという確認・回覧」の意味で押されているものは、どのくらいの割合を占めますか。

本調査でもっとも興味深い結果となったのが、この設問です。
「すべてが確認・回覧である」9.5%、「ほとんどが確認・回覧である」28.5%、「7割程度が確認・回覧である」19.0%、「半分程度が確認・回覧である」19.0%。これらを合わせると、76.0%が「押印欄の半分以上は、決裁ではなく確認・回覧のために押されている」と回答しました。一方、「ほとんど/すべてが責任をともなう承認(決裁)である」と答えたのは合計12.3%にとどまります。
つまり、いま現場で押されているハンコの大半は、意思決定のためではなく「読みました」という記録のために押されています。
本記事の前半で整理したとおり、回覧は本来、責任をともなわない情報共有の行為です。情報を共有することが目的であれば、書類が物理的にその人の手元へ移動し、押印されるまで次に進めないという設計である必要はありません。この76.0%こそが、稟議が遅くなる最大の温床だと言えます。
本調査データは、出典を明記いただければ引用・転載いただけます。
出典表記例:株式会社NTTデータビジネスブレインズ「業務・管理系部門221名への稟議・承認業務に関する調査」(2026年8月実施)
「いま誰のところで止まっているか」すぐ分かるのは16.2%
■申請中の書類が「いま誰のところで止まっているか」を、あなたはどの程度把握できますか。

「いつでもすぐに分かる」と答えたのはわずか16.2%。最多は「調べれば分かる」51.9%で、「担当者や承認者に聞かないと分からない」19.0%、「わからない(止まっていること自体、催促されて気づく)」9.3%が続きました。
「調べれば分かる」という回答は一見前向きですが、裏返せば「調べなければ分からない」ということです。合わせて8割超の管理職が、自部署の申請がいまどこにあるのかを即座には把握できていません。
管理職自身が状況を掴めていないということは、遅れの検知が常に事典型的になるということです。「そういえばあの申請どうなった」と気づいたときには、すでに数日が経過しています。
標準処理日数を2割以上超過が58.8%、そもそも期限がないが12.5%
■社内で定められた標準処理日数(目安の期限)を超過する申請は、どのくらいの割合で発生していますか。

「2割程度」23.1%、「3〜4割程度」20.4%、「半分程度」11.6%、「半分以上」3.7%を合わせると、58.8%が「2割以上の申請で期限を超過している」と回答しました。「ほとんどない(1割未満)」は18.1%にとどまります。
あわせて見逃せないのが、「そもそも標準処理日数が定められていない」が12.5%あった点です。期限が定義されていなければ、遅延は遅延として認識されません。遅れが可視化されていない部署では、改善の起点そのものが存在しないことになります。
稟議が止まる原因ランキング
■承認・押印が滞る原因として、思い当たるものをすべてお答えください。
このランキングで最も重い意味を持つのは、1位の項目ではありません。「特に滞ることはない」がわずか7.4%にとどまったという事実です。9割超の部署で、承認・押印はどこかで必ず止まっています。

1位「承認者が多忙で後回しにされる」41.2%と、2位「承認者が不在である」35.2%。この2つを合わせると76.4%に達します。
ここが本調査の重要なポイントです。この2つは、いずれも紙が原因ではありません。承認者が忙しいこと、承認者が席にいないこと。これらは書類の媒体を紙から電子に変えても、そのままの形で残ります。
3位以下に並ぶ「書類がいまどこにあるのか分からない」24.1%、「承認者が別拠点におり、紙の移動に時間がかかる」22.2%、「押印のためだけに出社・移動が必要になる」15.7%は、たしかに電子化で解消される性質の課題です。しかし、上位2つはそうではありません。
紙・押印が残っている理由の1位は「社内規程や様式」
■紙・押印が残っている方にお聞きします。紙・押印での運用が残っている理由として、当てはまるものをすべてお答えください。

1位は「取引先など社外の相手が紙・押印を求めるため」20.7%ではなく、「社内規程や様式が紙を前提にしているため」38.0%でした。紙が残る最大の理由は社外都合ではなく、自社の内側にあります。
「取引先が紙を求めるから仕方がない」という説明は、実態としては4番目の理由にすぎません。様式に押印欄が印刷されている限り、その欄は埋められることを求め続けます。
あわせて注目したいのが6位と8位です。「既存の承認システムでは自社の承認フローを再現できないため」17.3%は、ワークフローシステムを導入してもなお紙が残っている層の存在を示しています。「対象人数が多く、利用人数分の費用が見合わないため」11.2%は、費用を理由に導入対象から外された層です。
この2つは、「ツールを入れれば解決する」という前提が必ずしも成立していないことを示す、重要なシグナルです。