従量課金とは?ユーザー課金(ID課金)との違いと選び方|88.3%が「人数課金」で運用を歪めていた実態と、TCOで比べる判断基準【当社221人調査より】

本記事は2026/09/09に更新しております。
従量課金とは?ユーザー課金(ID課金)との違いと選び方|88.3%が「人数課金」で運用を歪めていた実態と、TCOで比べる判断基準【当社221人調査より】

従量課金とは、実際に使った量や回数に応じて料金が変動する課金方式のことです。クラウドサービスの料金体系は、大きくこの「従量課金」と、利用者数に応じて課金される「ユーザー課金(ID課金)」に分かれます。

 

どちらを選ぶかは、月々の請求額だけの問題ではありません。社内の誰まで使えるのか、取引先や協力会社とシステム上でつながれるのか――業務そのものの範囲を決めてしまいます。

 

本記事では、従量課金の仕組みとユーザー課金との違いを整理したうえで、業務・管理系部門のリーダーおよび管理職221名への独自調査から、他社が実際にどちらを選び、どのような問題に直面しているのかを公開します。最後に、TCO(総保有コスト)で比較する方法と、自社にどちらが合うかを判定するチェック表を用意しました。本文からダウンロードできますので、ぜひ、活用ください。

01

従量課金とは?仕組みと料金の決まり方

従量課金の定義

従量課金(じゅうりょうかきん)とは、サービスを実際に利用した量や回数に応じて料金が決まる課金方式です。英語では「pay-as-you-go」「usage-based pricing」と表現されます。

 

もっとも身近な例は電気・ガス・水道です。使った分だけ請求され、使わなければ請求額は下がります。ITの領域では、AWSに代表されるクラウドインフラや、通信量に応じて課金される携帯電話のデータ通信が典型例です。

 

対義的に位置づけられるのが「定額課金」で、利用量にかかわらず一定期間ごとに固定額を支払う方式です。

料金の計算式

従量課金の料金は、多くの場合こうした式で算出されます。

 

【基本形】

料金 = 基本料金 +(従量単価 × 利用量)

 

【計算例】

基本料金30,000円/月、従量単価10円/件、当月の処理件数2,000件の場合
30,000円 +(10円 × 2,000件)= 50,000円

 

【段階制の場合】

1,000件までは10円/件、1,001件以降は8円/件、というように単価が変わる

基本料金がまったくない完全従量制もあれば、一定量までは定額で、それを超えた分だけ従量になる「ハイブリッド型」もあります。

身近な従量課金の例

分野 サービス例 課金の基準
インフラ 電気・ガス・水道 使用量(kWh、㎥)
通信 携帯電話のデータ通信 通信量(GB)
クラウド AWS、Microsoft Azure CPU時間、ストレージ容量、通信量
業務システム ワークフロー、販売管理など 処理件数、データ量、トランザクション数
広告 運用型広告 クリック数、表示回数

従量課金と定額課金・サブスクリプションの違い

料金体系は「従量か定額か」の二択ではありません。買い手の立場で押さえておくべき違いは、次の表のとおりです。

 

課金方式 料金の決まり方 費用の予測しやすさ 使う人を増やしたときの影響
定額課金 一定期間ごとに固定額 ◎ 読みやすい なし
従量課金 利用量・処理件数に比例 △ 変動する 小さい
ユーザー課金(ID課金) 利用者数 × 単価 ○ 読みやすい 大きい
買い切り 初回一括+年額保守 ◎ 読みやすい なし(ただし上限あり)
ハイブリッド型 基本料金+従量 ○ ある程度読める

 

ここで注目していただきたいのが、いちばん右の列です。「使う人を増やしたときに費用がどう動くか」は、料金体系を選ぶうえで最も見落とされやすく、しかし最も影響の大きい観点です。この点については、本記事の後半で調査データとともに詳しく見ていきます。

 

なお、サブスクリプションは「継続的に利用料を支払う契約形態」を指す言葉であり、従量課金と対立する概念ではありません。サブスクリプション契約のなかに、定額課金のものも従量課金のものも存在します。

02

従量課金の種類|4つの課金タイプ

ひとくちに従量課金といっても、「何を量として数えるか」によって性質が大きく異なります。代表的なものは次の4タイプです。

①使用量課金

データ量、処理件数、API呼び出し回数、ストレージ容量など、システムの実際の使用量に応じて課金する方式です。AWSなどのクラウドインフラが代表例です。

使う人数が増えても、1人あたりの使用量が少なければ費用はさほど増えません。全社に広く薄く展開する業務との相性が良い方式です。

②ユーザー数課金(ID課金)

発行したアカウント(ID)の数に単価を掛けて算出する方式です。「1ユーザーあたり月額◯◯円」という形で提示されるものがこれにあたります。SaaSの料金体系としては最も一般的です。

厳密には「使った量」ではなく「持っているIDの数」で決まるため、従量課金の一種として整理されることもあれば、定額課金の一種として扱われることもあります。本記事では、買い手にとっての意味合いが従量課金と大きく異なるため、次の章で独立して詳しく扱います。

③アクティブユーザー課金

IDを発行した数ではなく、その月に実際にログイン・利用したユーザーの数で課金する方式です。ユーザー数課金の変形にあたります。

「たまにしか使わない人」の分の費用を抑えられる点で、ID課金より全社展開に向いています。ただし採用しているサービスは多くありません。

④段階制・ハイブリッド型

利用量が一定のラインを超えるごとに単価が下がる「段階制(ボリュームディスカウント)」や、基本料金に一定量を含めたうえで超過分のみ従量課金する「ハイブリッド型」です。

多くの業務システムはこの形を採用しており、「月額◯万円で△△件まで、超過分は1件◯円」といった提示になります。

03

ユーザー課金(ID課金)とは?従量課金との決定的な違い

ユーザー課金(ID課金)の仕組み

ユーザー課金(ID課金)とは、システムに登録したアカウント数に応じて料金が決まる方式です。「1ユーザーあたり月額1,000円」であれば、50名分のIDを発行すれば月額50,000円になります。

 

この方式の利点は、費用が読みやすいことです。人数が決まれば請求額が確定するため、予算化しやすく、稟議も通しやすい。多くのSaaSがこの形を採用しているのは、売り手にとっても買い手にとっても分かりやすいからです。

問題は、その分かりやすさの裏側にあります。

従量課金とユーザー課金の違い

観点 従量課金 ユーザー課金(ID課金)
課金の基準 使った量(件数・データ量など) 持っているIDの数
使う人を1人増やす ほとんど増えない 単価分そのまま増える
使わなかった月 料金が下がる 使わなくても満額
予算化のしやすさ しにくい(変動する) しやすい(固定)
全社展開との相性 ×
社外(取引先)を含める ×
向いている業務 全員が「時々」使う業務 (申請・承認・報告・回覧) 少数が「毎日」使う業務 (会計、設計、専門業務)
コスト削減で最初にやること 不要な処理を減らす IDを減らす(=使う人を減らす)

ユーザー課金が「使わせない判断」を生む構造

前章の表のいちばん下の行が、本記事でお伝えしたい核心です。

 

ユーザー課金では、費用が利用人数に正比例します。したがって、コストを下げようとしたときに最も効果が大きく、最も手軽な手段が「使う人を減らす」ことになります。

 

システムを導入する本来の目的は、業務を効率化することです。ところがユーザー課金という費用構造のもとでは、コスト最適化のインセンティブと、業務効率化のインセンティブが正面から対立します。

 

その結果として何が起きるのか。次章の調査データが、その答えを示しています。

それぞれのメリット・デメリット

公平を期すために、両方の長所と短所を整理しておきます。

 

  メリット デメリット
従量課金 ・使う人を増やしても費用が跳ねない
・使わない月は費用が下がる
・社外を巻き込みやすい
・スモールスタートしやすい
・月々の費用が変動し、予算化しにくい
・利用が急増すると想定超過が起きる
・使用量の見積もりが難しい
ユーザー課金 ・費用が固定で予算化しやすい
・稟議で金額を示しやすい
・利用量を気にせず使える
・人数に比例して費用が増える
・使わない人の分も満額かかる
・全社展開・社外連携のハードルが高い
・「使わせない」判断を誘発する

 

少人数が毎日使う専門的な業務であれば、ユーザー課金は合理的な選択です。問題になるのは、申請・承認・報告・回覧といった「全員が時々使う」業務に、ユーザー課金のシステムを当てはめようとしたときです。

04

【独自調査】221人に聞いた、業務システムの費用のリアル

ここからは、当社が実施した独自調査の結果をもとに、各社が実際にどのような費用構造のもとで業務システムを使っているのかを見ていきます。

調査概要

項目 内容
調査対象 業務・管理系部門のリーダーもしくは管理職の方:221人(全国)
調査期間 2026年8月21日〜8月22日
調査方法 インターネット調査
調査主体 株式会社NTTデータビジネスブレインズ(自社調査)

※すべての回答データではなく、回答が有効なデータを集計しています。
※業務システムを利用している方に限定した設問では、回答者数はn=154です。

費用形態は4つに分裂。しかも19.0%が「自社の形態がわからない」

■あなたの会社で使っている業務システム(ワークフロー・グループウェア・販売管理など)の費用について、当てはまるものをすべてお答えください。

 

 

費用形態は「利用量課金」31.0%、「定額」25.9%、「買い切り」23.1%、「ID課金」22.2%と、きれいに4つに分かれました。業界標準と呼べる単一の形は存在していません。

 

そのうえで見過ごせないのが、「わからない/答えられない」が19.0%にのぼったことです。業務・管理系部門の管理職の、およそ5人に1人が、自社で使っている業務システムの費用形態を把握していない可能性があります。

 

費用の構造が見えていなければ、「なぜこの金額なのか」「どうすれば下げられるのか」を検討することができません。最適化の議論以前の段階にとどまっている企業が、一定数存在しているのではないでしょうか。

判断基準は「初期費用」と「年間総額」。1人あたり単価はわずか8.4%

■業務システムの導入可否を判断するとき、費用面で最も重視する見方はどれですか。

 

 

ここに、売り手と買い手のあいだの大きなズレが表れています。多くのクラウドサービスは「1ユーザーあたり月額◯◯円」という単価で提示されます。ところが、費用面で1人あたり単価を最も重視すると答えた買い手はわずか8.4%でした。

 

買い手の9割以上は、「初期費用」(26.6%)と「年間総額」(24.0%)という、かたまりとしての金額で判断しています。

 

この非対称は、単なるコミュニケーションのすれ違いではありません。単価で提示されたものを総額で判断しようとすると、「実際にいくらになるのか」を自分で組み立て直す必要が生じます。その計算に、後述する「見積書に載らない費用」が抜け落ちる。ここに、想定外費用が生まれる構造的な原因があります。

60.4%が「費用を理由に、使うべき人に使わせていない業務がある」

■「本来は全社員(またはほぼ全員)が使うべきだが、費用を理由に業務システムの利用対象者を絞っている、または業務システムを導入していない」業務はありますか。

 

 

「本来は全社員(またはほぼ全員)が使うべきだが、費用を理由に利用対象者を絞っている、または導入していない」業務があるかを尋ねたところ、「複数ある」56.5%、「1つある」3.9%を合わせ、60.4%が現在進行形でそうした業務を抱えていると回答しました。「過去にあったが、いまは解消している」19.5%を含めると79.9%にのぼります。

 

注目すべきは、「1つある」3.9%に対して「複数ある」が56.5%と圧倒的に多い点です。費用を理由とした利用制限は、特定業務での例外的な措置ではありません。複数の業務にまたがって常態化しています。

88.3%が、ID課金を理由に運用を歪めていた

■利用者数(ID数)に応じた課金を理由に、次のような対応をとった経験があるものをすべてお答えください。

 

 

「特にない」と答えたのはわずか8.4%。裏を返せば、88.3%が、ID数に応じた課金を理由に、何らかの「本来とは違う使い方」を経験しています。

 

一つひとつを見ていくと、その深刻さがわかります。

 

最多の「1つのIDを複数人で共有した」39.6%は、多くのサービスで利用規約に抵触する行為です。誰が操作したのかというログが意味をなさなくなるため、内部統制上のリスクも生じます。

 

「承認者だけがIDを持ち、申請は代理で入力した」32.5%は、より根深い問題を含みます。申請者が誰なのかという記録そのものが失われるためです。承認の証跡を残すためにシステムを導入したはずが、その証跡が正確でなくなります。

 

「IDを持たない人の分は紙・メール・Excelで運用した」31.2%は、システムを導入したのに紙が残るという、最も典型的なパターンです。電子と紙の二重運用は、どちらか一方だけの状態よりも手間が増えます。

 

「部署単位・拠点単位で導入を見送った」24.7%は、費用を理由とした部分導入が、新たなデータのサイロを生んでいることを示しています。

 


本調査データは、出典を明記いただければ引用・転載いただけます。
出典表記例:株式会社NTTデータビジネスブレインズ「業務・管理系部門221名への業務システムの費用に関する調査」(2026年8月実施)


 

58.4%が、費用を理由に社外との連携を制限している

■取引先・協力会社・グループ会社など、社外の相手と業務システム上でやり取りする際の費用について、あなたの会社に最も近いものをお答えください。

 

 

取引先・協力会社・グループ会社など、社外の相手とのやり取りについて尋ねました。

 

「費用がかさむため、やり取りする社外の相手や業務を限定している」31.2%、「費用が見合わないため、社外とはシステム上でやり取りしていない(紙・メール・FAX等で対応している)」27.3%。合わせて58.4%が、費用を理由に社外との連携を制限していました。

 

一方、「社外の相手の分も費用を負担し、必要な相手とやり取りできている」は14.3%、「社外とのやり取りに追加費用がかからない仕組みのため、費用は課題になっていない」は16.2%にとどまります。

 

サプライチェーン全体でのDXが語られる一方で、その入口である「社外を巻き込む」段階が、ID単位の課金によって費用の壁に阻まれている――そうした構図が浮かび上がります。

87.0%が、導入後に「想定していなかった費用」を経験

■業務システムの導入後に「想定していなかった費用」が発生した経験があるものをすべてお答えください。

 

 

「特にない」は7.8%にとどまり、87.0%が導入後に想定していなかった費用を経験していました。想定外費用は例外ではなく、むしろ標準的に発生していると考えるべき数字です。

 

1位の「既存システムとの連携開発費」39.0%と、2位の「帳票や入力画面のカスタマイズ費用」37.0%は、性質が共通しています。いずれも「そのシステムを自社の業務で実際に使えるようにするための費用」です。カタログに記載された月額料金には含まれず、要件を詰めた段階ではじめて姿を現します。

 

3位の「利用人数の増加に伴う追加ライセンス費用」29.9%は、前述のID課金の問題とそのまま地続きです。人が増えれば費用が増える構造が、結果として「増やさない」という判断を招いています。

05

【独自調査】導入の決め手と、見送りになった理由

決め手の1位は「現場から使いたいという声」23.4%

■直近で業務システムの導入を申請または決裁した際、最終的に決め手になったものはどれですか。

 

 

費用に関する調査でありながら、決め手の1位が「現場の声」だった点は興味深い点です。金額の妥当性を示すこと(工数の金額換算22.1%、費用が下がる17.5%)とほぼ拮抗しています。

 

一方で、「実際の画面で動くところを見せた」5.8%、「小規模に試した結果を示した」5.2%はいずれも少数でした。現場の納得が決め手になるにもかかわらず、現場に触ってもらう機会は十分の与えられていないのではないでしょうか。

見送りの1位は「予算がなかった」ではなく「費用対効果を数値で示せなかった」

■業務システムの導入を検討したものの、見送りになった理由として当てはまるものをすべてお答えください。

 

 

見送りの最大の理由は「予算が確保できなかった」14.4%ではなく、「費用対効果を数値で示せなかった」30.1%でした。お金がなかったから断念したのではなく、説明できなかったから通らなかったのです。

 

2位以下に並ぶ「現場が使いこなせないと判断された」22.2%、「既存システムとの棲み分けを説明できなかった」21.3%、「基幹システムと連携できなかった」19.9%も同様に、価格そのものではなく説明責任にかかわる項目です。

「決裁に時間がかかり、話が立ち消えになった」11.1%

見送り理由の6位に挙がったこの項目は、費用の問題ではなく、社内の意思決定プロセスの問題です。検討そのものは進んでいたにもかかわらず、決裁に時間がかかるあいだに機運が失われ、案件が消滅しています。

 

承認・決裁の遅さがどれほど深刻かについては、同じ221名への調査をもとにした別記事「稟議とは?決裁との違い|221人調査で判明した稟議フローの各社の実態」で詳しく解説しています。決裁まで2日以上かかるものが61.1%、書類がいまどこにあるかを即座に把握できている管理職は16.2%という結果でした。

06

【PoC事例】現場で語られた「費用」のリアル

当社では、ノーコード・クラウドデータベース「Slopebase」の実証検証(PoC)を通じて、複数の企業から業務システムの費用に関する実情を伺ってきました。調査で見えた構造は、現場の言葉としても繰り返し語られています。
※各社の許諾の範囲で、企業名は非開示とし、業種・規模のみ記載しています。

事例1:「ユーザー無制限で月10万円。でも新規の対象は70〜100名」(製造業/グループ正社員520名・準社員1,850名)

この企業では、有給申請のワークフローを既存システムで運用していました。担当者の言葉は率直でした。「ユーザー無制限で利用しているが、使い勝手が良くないし、10万円/月支払っている」。

 

注目すべきは、金額が「1人あたりいくら」ではなく「月10万円」という総額で語られている点です。契約形態はユーザー無制限であるにもかかわらず、費用は総額として認識されています。

 

そして、新たに構築を検討していた燃料申請ワークフローの対象人数は70〜100名。グループ全体では2,000名を超える規模でありながら、まずは一部の部門に限定した導入を想定していました。検討の動機は「安価に申請ワークフローを作成したい」というものです。

 

→ Q14「年間の総額が予算上限に収まるかどうか」24.0%、そして「1人あたり単価」を重視するのは8.4%という調査結果と、そのまま一致します。

事例2:「全社員が使いたい。でもシステムにお金を掛けられない」(製造業/従業員約70名)

紙とハンコで運用しているトラブル報告書を電子化したい、という相談でした。要件として最初に挙げられたのが、この一文です。

 

「全社員がワークフローを使用したく、システムにお金を掛けられない」。

 

あわせて「コストを抑えつつ紙運用のワークフローから脱却したい」とも語られました。

 

全社利用と低コストの両立が、機能要件よりも先に来る前提条件になっていました。

 

→ Q15「費用を理由に対象者を絞っている/導入していない業務がある」60.4%を、そのまま言語化した回答です。

事例3:「取引先を巻き込むとコスト高になりすぎる」(化学メーカー/従業員約400名)

この企業はIT部門主導で複数の業務課題を検討しており、社内には既にノーコードツールが導入されていました。それでも別のサービスを検討した理由が、これです。

 

「社内的にはkintoneがあるので、kintoneでの実装が選択肢の一つだが、取引先を巻き込むとコスト高になりすぎる」。

 

想定されていた利用者は4層でした。

 

①自社の社員

②関係会社への出向者

③関係会社の現地社員

④社外のお客様

 

コンプライアンス関連の案内先だけでも、国内海外あわせて20社にのぼります。社内で完結する業務であれば既存ツールで足りるものの、社外を含めた瞬間に人数が跳ね上がり、費用が意思決定を止めていました。

 

さらに、社外とのやり取りの設計を検討するなかで「営業の共有アカウントを作る、といったことも考えられる」という発言もありました。

 

→ Q17「費用を理由に社外との連携を制限している」58.4%、そしてQ16「1つのIDを複数人で共有した」39.6%――ID共有という選択が生まれる瞬間が、そのまま記録されています。

事例4:「POSに組み込んでいるため、変更するのに費用がかかる」(卸売業・小売業/従業員571名・26店舗)

この企業では、店舗の発注・仕入・商品移動・廃棄・中古買取といったデータを、すべてPOSシステムに組み込んで管理していました。担当者はこう述べています。

 

「すべてPOSシステムに組み込んでいる。そのため変更するのに費用がかかる」「業務機能だけを外出ししたいが、コストがかかるのが課題」

 

連携方式についてはCSVでのやり取りを想定していましたが、「現状、基幹システムでAPIを利用した実績はない」段階で、構想にとどまっていました。

そして意思決定については、「POS変更に伴う必要な開発やコストをプレゼンして、降りるか降りないか」に委ねられており、判断は数年先という見通しでした。

 

→ Q18「既存システムとの連携開発費」39.0%、Q20「基幹システムと連携できなかった」19.9%、「費用対効果を数値で示せなかった」30.1%を、同時に体現している事例です。

事例5:帳票5種・100項目超――見積時には見えない実装量(ソフトウェア開発/従業員約150名)

この企業では、見積・受注・請求の管理をExcelマクロで運用していました。電子化にあたって必要になったのは、見積書・注文書・受領書・納品書・請求書・検収書という複数の帳票です。

 

設計を進めると、見積データを保持するテーブルだけで100項目を超える構成になりました。うち大半は、明細行を横持ちで保持するための項目です。同じ構造のテーブルを、納品書用・請求書用にも用意する必要がありました。

 

→ Q18「帳票や入力画面のカスタマイズ費用」37.0%が、検討段階では見えにくい実装量として現れる典型例です。「帳票を出力できます」という機能説明と、「自社の帳票を出力できるようにする作業量」は別物です。

 

07

TCO(総保有コスト)で比べる|月額だけを見てはいけない理由

TCO(総保有コスト)とは

TCOとは「Total Cost of Ownership」の略で、日本語では「総保有コスト」「総所有コスト」と訳されます。システムの導入から運用・保守、そして最終的な廃棄・移行までにかかる費用の総額を指す考え方です。

月額のライセンス料は、TCOの一部にすぎません。前章の調査で87.0%が想定外費用を経験していたのは、この「一部」だけを見て判断していたためです。

買い手の判断基準が「初期費用」26.6%と「年間総額」24.0%であり、「1人あたり単価」がわずか8.4%だったことを思い出してください。買い手はもともと総額で判断しようとしています。TCOという物差しは、その判断を正しく行うための枠組みです。

業務システムのTCO内訳チェックリスト

見積書に載りやすい費目と、載りにくい費目を分けて整理しました。右端は、今回の調査で「想定外だった」と回答された割合です。

 

費目 見積に載りやすいか 想定外だったと回答した割合
初期費用(導入費) ○ 載る
月額・年額のライセンス費 ○ 載る
既存システムとの連携(API・データ連携)開発費 × 載りにくい 39.0%
帳票・入力画面のカスタマイズ費 × 載りにくい 37.0%
利用人数の増加に伴う追加ライセンス費 △ 単価のみ 29.9%
データ量・保存容量の超過分 × 載りにくい 29.2%
オプション・プラグイン料金 △ 一覧のみ 20.8%
導入支援・教育・マニュアル整備 × 載りにくい 14.9%
保守・サポートの年額費用 ○ 載る 12.3%

 

見積書に載りにくい4費目(連携開発、カスタマイズ、容量超過、導入支援)は、いずれも「自社で使えるようにするための費用」です。ベンダーが隠しているわけではなく、要件が固まらないと算出できないという性質のものが多い。だからこそ、検討段階でこちらから確認する必要があります。

3年TCOの試算例|従量課金とユーザー課金を並べてみる

構造を具体的に示すため、同じ業務を3つのパターンで試算してみます。


【前提】対象業務:申請・承認業務/対象者100名(うち日常的に使うのは20名、残り80名は月数回の利用)/期間3年

 

※以下は費用構造の違いを示すための試算例です。実際の金額はサービスや要件により異なります。

 

費目 ID課金:100名全員に配る ID課金:20名に絞る 従量課金
初期費用 30万円 30万円 30万円
ライセンス費(3年) 360万円 72万円 108万円
連携開発費 100万円 100万円 100万円
帳票カスタマイズ費 80万円 80万円 0円(内製)
3年TCO 合計 570万円 282万円 238万円
実際に使える人数 100名 20名 100名
1人あたり3年コスト 5.7万円 14.1万円 2.38万円

 

この試算で注目していただきたいのは、真ん中の列です。費用を抑えるためにIDを20名に絞ったところ、総額は570万円から282万円に下がりました。ところが「1人あたりの3年コスト」は5.7万円から14.1万円へと、2.5倍に跳ね上がっています。

 

連携開発費やカスタマイズ費といった固定的な費用は、使う人数を絞っても減らないためです。IDを絞るという判断は、総額を下げる一方で、投資効率を大きく悪化させます。

 

しかも、IDを持たない80名分の業務は消えるわけではありません。調査結果のとおり、その分は紙・メール・Excelで運用されるか(31.2%)、承認者だけがIDを持ち代理入力される(32.5%)ことになります。二重運用のコストは、この試算表には表れていません。

TCOを下げる3つの観点

①ID数に依存しない費用構造を選ぶ
全員が時々使う業務であれば、人数が増えても費用が跳ねない構造を選びます。これは費用の問題であると同時に、「使わせない判断」を発生させないための設計でもあります。

 

②連携・カスタマイズを内製できる仕組みを選ぶ
想定外費用の1位と2位(合計で回答者の約7割が経験)は、いずれも外部への開発委託によって発生します。ノーコードで自社の担当者が構成を変更できれば、この費目そのものを圧縮できます。

 

③社外を含めた業務全体で試算する
社内だけで試算すると安く見えても、取引先や協力会社を含めた途端に成立しなくなるケースがあります(Q17:58.4%)。最初から「最終的に誰まで使うのか」を含めて試算してください。

08

自社はどちらを選ぶべきか|判定チェック表

ここまでの内容を、実際の判断に使える形にまとめます。

判定マトリクス(利用人数 × 利用頻度)

  毎日使う 週に数回使う 月に数回使う
〜10名 ユーザー課金でも可 どちらでも可 従量課金が有利
〜50名 要試算 従量課金が有利 従量課金が有利
〜100名 要試算 従量課金が有利 従量課金が有利
100名超/社外を含む 要試算 従量課金一択 従量課金一択

 

判断の軸は単純です。「1人あたりの利用量が少ないのに、使う人数が多い」業務ほど、ユーザー課金は不利になります。申請・承認・報告・回覧といった業務は、まさにこの条件に当てはまります。

ユーザー課金(ID課金)が向いているケース

  1. 少人数が毎日使う専門業務(会計、設計、CAD、開発ツールなど)
  2. 利用者が固定されており、増減がほとんどない
  3. 社外の相手を巻き込む必要がない
  4. 費用を固定して予算化することが最優先

従量課金が向いているケース

  1. 全社員が「時々」使う業務(申請・承認・報告・回覧・アンケートなど)
  2. 取引先・協力会社・グループ会社を含めてやり取りしたい
  3. 拠点や店舗が多く、対象人数が数百名規模になる
  4. 繁忙期と閑散期で利用量に差がある
  5. 人員の増減が頻繁にある(パート・アルバイトの比率が高いなど)
  6. まずは小さく試し、うまくいけば広げたい

判断を誤りやすい3つのポイント

①「まずは一部門から」が、部分最適のサイロを生む
スモールスタート自体は正しい判断です。問題は、費用を理由に「広げられないスモールスタート」になってしまうことです。調査では24.7%が「部署単位・拠点単位で導入を見送った」と回答しています。試すのは一部門でも、広げたときに費用が成立するかを先に確認してください。

 

②IDを絞ると、必ず紙とExcelが残る
IDを持たない人の業務が消えるわけではありません。31.2%が「IDを持たない人の分は紙・メール・Excelで運用した」と回答しています。電子と紙の二重運用は、紙だけの状態よりも手間が増えることがあります。

 

③代理入力は、申請者の記録を失わせる
「承認者だけがIDを持ち、申請は代理で入力した」32.5%という運用は、コスト面では合理的に見えます。しかし、誰が申請したのかという記録が残らなくなるため、内部統制や監査対応の観点では本末転倒です。

 

自社の場合はどちらが安くなるか、料金シミュレーションで確認できます
利用人数と想定処理件数を入力すると、3年間のTCOを試算します

 


▶ 料金シミュレーターを使ってみる 


 

09

費用対効果を数値で示すための3ステップ

導入が見送られる最大の理由は「費用対効果を数値で示せなかった」30.1%でした。ここでは、その説明を組み立てる手順を示します。

ステップ1:削減できる工数を金額に換算する

決め手の2位(22.1%)が使っている手法です。計算式はシンプルです。

 

年間削減額 = 対象業務の年間件数 × 1件あたりの削減時間 × 人件費単価(時給換算)

 

【計算例】申請業務
年間3,000件 × 削減0.5時間/件 × 3,000円/時間 = 年間450万円

 

ここで重要なのは、「1件あたりの削減時間」を推測ではなく実測にすることです。現状の申請から決裁までの日数、催促にかかっている時間、差し戻しの発生率――これらを1〜2週間でも計測すれば、根拠のある数字になります。

 

また、削減対象には「承認者の時間」も含めてください。承認者が3人以上いる企業が64.4%であることを踏まえると、申請者の工数だけを見積もると効果を大幅に過小評価することになります。

ステップ2:現場の「使いたい」を先に取る

決め手の1位は「現場から使いたいという声が上がった」23.4%でした。一方で、それを引き出す手段であるトライアル(5.2%)や画面デモ(5.8%)は、ほとんど使われていません。

 

見送り理由の2位が「現場が使いこなせないと判断された」22.2%であることを考えると、この順序は逆です。数値を積み上げてから現場に見せるのではなく、先に現場に触ってもらい、その反応を稟議の材料にするほうが通ります。

ステップ3:TCOで比較表を作る

見送り理由の3位「既存システムとの棲み分けを説明できなかった」21.3%、4位「基幹システムと連携できなかった」19.9%への対応でもあります。

 

前章のTCO内訳チェックリストを使い、見積書に載らない費目まで含めた3年分の比較表を作成してください。「現状維持のコスト」を必ず1列目に置くことがポイントです。何もしない場合にもコストは発生し続けているという事実を、同じ土俵の上に載せます。

 


▶ TCO比較表テンプレート(稟議添付用)をダウンロードする


 

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従量課金で、全社・社外まで広げるなら

ノーコード・クラウドデータベース「Slopebase(スロープベース)」は、本記事で挙げた費用の課題に応えるサービスです。

 

料金は月額30,000円〜の従量課金制です。利用人数に応じて費用が跳ね上がる構造ではないため、「費用を理由に使わせる人を絞る」という判断を発生させずに全社展開できます。

 

外部の取引先や協力会社と必要な範囲だけ情報を共有できる「ゲストユーザー機能」を備えており、社外を巻き込む業務でも費用が青天井になりません。

また、プログラミング知識がなくても業務データベースや帳票・入力画面を構成できるノーコード設計のため、想定外費用の1位・2位である連携やカスタマイズを外部委託に頼らず内製化できます。承認フローやWebAPI連携にも対応しており、既存の基幹システムとのデータ連携も視野に入れた構成が可能です。

 

まずは1つの業務からスモールスタートし、現場の反応を確かめてから広げていくことができます。

 

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従量課金・ユーザー課金に関するよくある質問

※本セクションはFAQPage構造化データを実装してください。

Q. 従量課金と定額課金は、どちらが安いですか?

A. 利用量と利用人数によって変わるため、一概には言えません。判断の目安は「1人あたりの利用量が少なく、使う人数が多い」かどうかです。この条件に当てはまる業務(申請・承認・報告など)では従量課金が有利になりやすく、少人数が毎日集中して使う業務では定額課金やユーザー課金が有利になることがあります。3年程度のTCOで比較することをおすすめします。

Q. ユーザー課金(ID課金)とは何ですか?

A. 発行したアカウント(ID)の数に単価を掛けて料金が決まる方式です。「1ユーザーあたり月額◯◯円」という形で提示されます。費用が読みやすい反面、利用者を増やすと費用が正比例して増えるため、全社展開や社外連携との相性はよくありません。

Q. IDを複数人で共有してもよいですか?

A. 多くのサービスでは利用規約により禁止されています。加えて、誰が操作したのかというログが意味をなさなくなるため、内部統制や監査対応の面でもリスクがあります。ただし実態としては、当社調査で39.6%が「1つのIDを複数人で共有した」と回答しており、ID課金の費用圧力が規約違反を誘発している状況がうかがえます。共有を検討する状況にあるのであれば、費用構造そのものの見直しを検討すべきタイミングです。

Q. TCO(総保有コスト)とは何ですか?

A. Total Cost of Ownershipの略で、導入から運用・保守・移行までにかかる費用の総額を指します。月額ライセンス料だけでなく、初期費用、連携開発費、カスタマイズ費、追加ライセンス、教育費、保守費などを含めて算出します。当社調査では87.0%が導入後に想定外の費用を経験しており、月額だけで判断することのリスクを示しています。

Q. 従量課金は費用が読めないのでは?

A. 完全従量制であればその懸念はあります。ただし業務システムの多くは「基本料金+一定量まで込み、超過分のみ従量」というハイブリッド型を採用しており、通常の利用範囲では月額がほぼ固定になります。契約前に、想定利用量における月額と、上振れした場合の上限を確認しておけば、予算化は十分に可能です。

Q. 取引先とシステム上でやり取りすると、費用は増えますか?

A. 課金方式によります。ユーザー課金の場合、社外の相手にもIDを発行する必要があるため費用が増えます。当社調査では58.4%が費用を理由に社外との連携を制限していました。一方、社外向けのゲストアカウントに追加費用がかからない仕組みや、従量課金の仕組みであれば、社外を含めても費用が跳ね上がりません。

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まとめ|費用構造が、業務の範囲を決めている

本記事では、従量課金の仕組みとユーザー課金(ID課金)との違いを整理したうえで、業務・管理系部門の管理職221名への調査から実態を見てきました。

浮かび上がったのは、業務システムの費用が「いくら払うか」の問題にとどまらず、「誰が使えるか」「どこまで業務をつなげられるか」を決めてしまっているという実態です。

 

60.4%が費用を理由に使うべき人に使わせておらず、88.3%がID課金を理由に本来とは違う使い方を経験し、58.4%が社外との連携を費用で制限していました。そして87.0%が、導入後に想定していなかった費用に直面しています。

 

とりわけ象徴的なのが、判断基準のズレです。多くのクラウドサービスは「1人あたり月額◯◯円」という単価で提示されるのに対し、費用面で1人あたり単価を最重視する買い手はわずか8.4%。買い手は初期費用と年間総額、すなわち総保有コストで見ています。この非対称が、追加ライセンス(29.9%)や連携開発費(39.0%)といった「あとから出てくる費用」への備えを難しくしています。

 

また、導入が見送られる最大の理由は「予算がなかった」14.4%ではなく「費用対効果を数値で示せなかった」30.1%でした。一方、決め手の1位は「現場から使いたいという声が上がった」23.4%です。数字で語れず、現場の実感も得られないまま検討が進むことが、最も多くの案件を止めています。

 

ID数に依存しない費用構造を選ぶこと、社外を含めた業務全体でTCOを試算すること、そして小さく試して現場の声を得ること。この3点が、業務システムの費用を「制約」から「投資判断」へと変える鍵になります。

 

調査データの利用について
本記事に掲載した調査データは、出典を明記いただければ引用・転載いただけます。
出典表記例:株式会社NTTデータビジネスブレインズ「業務・管理系部門221名への業務システムの費用に関する調査」(2026年8月実施)

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Slopebaseとは

バックオフィス業務の
支出管理を支援する、
ノーコード・クラウドデータベース

Slopebase スロープベース

※バックオフィス業務とは経理や総務、人事、法務、財務などといった直接顧客と対峙することの無い社内向け業務全般を行う職種や業務のこと

この記事を書いた人

Slopebase編集部
監修
田中雅人(ITコンサルタント)

ソフトウェアメーカー取締役、IT上場企業の取締役を経て、現在、合同会社アンプラグド代表。これまでに、Webサイト制作、大規模システム開発、ECサイト構築、SEM、CRM等のWebマーケティングなど、IT戦略全般のコンサルティングを30年以上実施。現在は、大手上場企業から中小企業まで、IT全般のコンサルティングを行っているかたわらWebマーケティングに関するeラーニングの講師、コラム執筆なども実施。

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