IT資産管理を確実に行うためには、管理対象を明確に区分した上で、必要最小限かつ業務に直結する管理項目を網羅した台帳を設計しなければなりません。企業のIT環境は、ハードウェア、ソフトウェア、保守契約、クラウドサービスなど多岐にわたる資産で構成されており、資産の特性ごとに最適な項目を設定する必要があります。
必須項目の設計
管理の第一歩として、台帳に必ず含めるべき必須項目を定義します。対象となる資産の種類に応じて、共通して管理すべき基本情報と、個別の固有情報を整理しておくことが重要です。
ハードウェア(PC・モバイル・サーバーなど)
端末の個体識別と所在の把握が最優先です。必須項目には、社内で個別に採番する資産ID、メーカー名、モデル名、製造番号(シリアルナンバー)、OSのバージョン、スペック情報を設定します。さらに、端末を現在使用している利用者名、および設置場所や保管場所を示す所在情報を明記します。購入日、リース期間、保守終了日などの日付情報も、機器のリプレイス計画を立てるために欠かせません。
ソフトウェアライセンス
所有しているライセンスの権利関係を明確にする項目を設けます。ソフトウェアの名称、ベンダー名、購入日、ライセンスの種類、契約番号、購入したライセンス数を記録します。また、ライセンスキーも台帳に紐づけておくことで、監査などの際に速やかに提示が可能になるでしょう。キー自体は閲覧権限を厳しくし、必要最小限の担当者だけが参照できるようにしてください。
保守・サポート契約/クラウドSaaS契約
保守サポート契約や近年急増しているSaaSなどのクラウドサービス契約は、更新を適切に行うために専用の項目を設計します。サービス名称、契約締結日、次回の更新期限、契約期間、利用料金、契約数、支払方法に加え、提供ベンダーの窓口連絡先を記載します。更新期限の項目は、契約の解約や自動更新の防止を判断するためのトリガーとなるため、最も正確な入力が求められる項目です。
ライセンスと実利用の突合
台帳上に記録されているソフトウェアのライセンス数と、社内の端末にインストールされて実際に使用されているライセンス数が一致しているかを定期的に確認する突合業務は、コスト最適化とライセンス違反防止の両面において極めて重要です。
具体的には、ライセンスの保有数(契約数)と、従業員ごとの実インストール数(または利用アカウント数)を並べて比較できる仕組みを設計します。突合を行う際は、以下の2つの視点で過不足を発見します。
過剰ライセンスの発見(コスト削減)
アカウントを付与されているにもかかわらず、長期間ログインしていない利用者を洗い出します。未使用のアカウントを削除し、必要に応じて契約数を削減することで、不要なIT支出を抑えることができます。
不足ライセンスの発見(リスク回避)
ライセンスを購入・登録しないままインストールされている、あるいは社内の制限を超えて利用しているソフトウェアを特定します。無断利用は契約違反となり、メーカー側から是正や追加費用を求められることもあります。
台帳上の契約データと、端末やアカウント管理から取得した利用状況を定期的に照合・突合し、不一致が発生した際に担当者へ通知が届く運用環境を整備することが、適正な資産管理の現実的なゴールです。専用のエンドポイント管理ツールと台帳DBを組み合わせる場合もありますが、まずは「契約と利用者を同じIDで追える台帳」を作ることが先決です。資産管理ツールの導入効果と選定の観点も、台帳設計の判断材料になります。