見積・納品・請求の3つのデータを見積番号でつなぎ、書き写しの作業をなくす
設計した3つのデータは、Slopebaseでは「トラン」(伝票1件ごとのデータを入れる表)として作りました。項目数は、見積データが106項目、納品データが99項目、請求データが96項目です。いずれも明細を20行まで持ち、1行あたり内容・数量・単価・金額の4項目、合わせて80項目を明細に使っています。マスタ(取引先や商品など、繰り返し使う基本情報を入れる表)は使わず、3つのトランだけで構成しました。
前の工程のデータから次の工程のデータを作るきっかけになるのは、「納品書データへ連携」「請求書データへ連携」というセレクト項目(決められた選択肢から選ぶ項目)です。初期値は「0:未連携」で、担当者がこれを「1:連携」に切り替えると、データフロー(データを別の表へ自動で受け渡す機能)が動き、次のトランに新しいデータが作られます。
見積データから納品データへは、請求先、ユーザ名、システム名、見積内容、合計金額(税抜)、消費税金額、備考、明細20行分、見積番号が自動で入ります。納品データには新しい納品番号が振られ、担当者が書き足すのは納品日や支払条件といった実績の値だけです。納品データから請求データへも同じ形で引き継がれます。
納品書・請求書の生成を効率化させるポイントは、見積管理にあります。見積管理については見積管理の脱Excel・システム移行事例をご参照下さい。
3つのトランは見積番号でつながっているため、カラムリンク(共通の番号をもとに複数の表を並べて表示する機能)を使えば、1件の見積に対する見積・納品・請求のデータを1つの画面に並べて表示できます。拠点ごとのファイルを1つずつ開かなくても、どの見積がいまどこまで進んでいるかをその場で確認できます。また、各トランにはファイルを添付できる項目も用意し、発行した書類を1件ごとのデータと一緒に保存して、過去の書類としていつでも見返せるようにしています。
社内で回す伝票と取引先の署名が要る確認書を、伝票番号の参照でつないで電子化した設計は、伝票番号の参照でつなぐ電子伝票の設計で紹介しています。


カラムリンクで見積・納品・請求を一覧表示
出典:弊社のPoCで実装したSlopebaseの画面(一部の情報を伏せています)

連携セレクトの切り替えで納品データを自動作成
出典:弊社のPoCで実装したSlopebaseの画面(一部の情報を伏せています)
申請フローとデータフローで入力を減らす4つの入力経路の使い分け
見積データに情報を入れる方法は1つではありません。今回の設計では、入力の方法を4つ用意し、場面に応じて使い分けています。
1つ目は、申請フォームからの自動入力です。営業担当が申請フローの見積依頼フォームに内容を入れて申請し、決裁が終わると、入力した内容がデータフローで見積データへ自動で入ります。このとき見積依頼番号も自動で入るため、どの依頼から作られた見積かを後から確認できます。申請は差し戻しもできます。
2つ目は、見積依頼書の添付による申請です。営業担当は申請フォームに詳しい項目を入れず、作成済みの見積依頼書(Excel)を添付して申請し、総務部門の担当者がその内容を見積データへ入力します。依頼の窓口が1つになり、対応漏れを防ぎながら依頼の履歴を残せるのが利点です。
3つ目は、前の工程からの自動入力です。先ほど説明した連携の仕組みにより、納品データと請求データの大半の項目はこの方法で自動的に入ります。
4つ目は、計算による自動入力です。総合計金額は、合計金額(税抜)と消費税金額を足した値が自動で入ります。
実際の項目例と、決めておくべき型と値域
項目の型は、自動採番・日付・文字列・文字列(複数行)・整数・小数・セレクト・ファイルの8種類を使い分けています。3つのデータに持たせた主な項目を、共通項目と個別項目に分けて表1にまとめました。共通項目は見積データで一度入力すれば、納品データと請求データへ自動転記されます。
表1 見積・納品・請求データの共通項目と個別項目
青い行は共通項目(3つのデータで同じ内容を持つ項目。納品データと請求データでは、前の工程のデータから自動転記されます)、オレンジの行は個別項目(その書類だけで使う項目)です。
| 区分 |
項目 |
項目タイプ |
値域・入り方 |
| 見積データトラン(106項目) 共通項目の入力元 |
| 共通 |
見積先(納品・請求データでは請求先)・ユーザ名・システム名 |
文字列 |
見積依頼書の内容を入力 |
| 共通 |
見積内容 |
文字列(複数行) |
見積依頼書に書かれた詳細をそのまま貼り付け |
| 共通 |
明細1〜20(内容・数量・単価・金額) |
内容・数量は文字列、単価・金額は整数 |
数量は「一式」「2ライセンス」も可 |
| 共通 |
合計金額(税抜)・消費税金額 |
整数 |
入力 |
| 共通 |
備考 |
文字列(複数行) |
入力 |
| 個別 |
見積番号 |
自動採番 |
登録時に重複しない番号を自動で付与 |
| 個別 |
見積日・納品予定日・検収予定日・支払予定日・メンテナンス開始予定日 |
日付 |
カレンダーから選択 |
| 個別 |
見積有効期限 |
セレクト |
発行日より1ヶ月〜3ヶ月 |
| 個別 |
見積依頼番号 |
文字列 |
申請フローから自動入力 |
| 個別 |
納品書データへ連携 |
セレクト |
0:未連携/1:連携(1で納品データを自動作成) |
| 納品データトラン(99項目) 見積データから自動転記 |
| 共通 |
請求先・ユーザ名・システム名・見積内容 |
文字列 |
見積データから自動転記 |
| 共通 |
明細1〜20・合計金額(税抜)・消費税金額・備考 |
見積データと同じ |
見積データから自動転記 |
| 共通 |
見積番号 |
文字列 |
見積データから自動転記 |
| 個別 |
納品番号 |
自動採番 |
登録時に重複しない番号を自動で付与 |
| 個別 |
納品日・支払条件 |
日付 |
実績に応じて人が入力 |
| 個別 |
請求書データへ連携 |
セレクト |
0:未連携/1:連携(1で請求データを自動作成) |
| 請求データトラン(96項目) 納品データから自動転記 |
| 共通 |
請求先・ユーザ名・システム名・見積内容 |
文字列 |
納品データから自動転記 |
| 共通 |
明細1〜20・請求金額(税抜)・消費税金額 |
納品データと同じ |
納品データから自動転記 |
| 共通 |
見積番号・納品番号 |
文字列 |
納品データから自動転記 |
| 個別 |
請求書番号 |
自動採番 |
登録時に重複しない番号を自動で付与 |
| 個別 |
請求日・支払条件 |
日付 |
実績に応じて人が入力 |
出典:弊社が携わった要件定義・基本設計の内容をもとに作成
なかでも判断が分かれやすいのが数量です。ソフトウェアのライセンスや保守を扱う業務では、数量に「一式」や「2ライセンス」のような単位付きの値が入ります。数値型にすると、こうした書き方ができなくなります。そこで数量はあえて文字列型にし、金額の計算に使う単価と金額は整数型にしました。見積内容は複数行の文字列にして、見積依頼書に書かれた詳細をそのまま貼り付けられるようにしています。見積有効期限は自由入力にせず、「発行日より1ヶ月」から「3ヶ月」までのセレクトにしました。

見積データの項目定義
出典:弊社のPoCで実装したSlopebaseの画面(一部の情報を伏せています)
業務フローの中であえてシステム化しなかった箇所とその理由
すべてを自動にしたわけではありません。今回の設計では、次の3つをあえて人の手に残しています。
1つ目は、次の工程へ進める判断です。見積データから納品データへ、納品データから請求データへの連携は、登録しただけでは動かさず、担当者が内容を確かめてから「1:連携」に切り替えたときだけ動く設計にしました。金額や明細に誤りがあるまま請求まで流れてしまうことを防ぎ、確認した人の操作として履歴を残すためです。
2つ目は、添付による依頼の受け付けです。すべての営業担当に申請フォームの全項目を入力してもらうのが理想ですが、使い慣れた見積依頼書の形のまま依頼したい場面もあります。依頼の窓口と履歴を1つにすることを優先し、添付された見積依頼書の内容を総務部門が入力する経路を残しました。
3つ目は、実績の日付です。納品日、請求日、支払条件は、実際の納品や取引先とのやり取りが決まってから人が入れます。予定日から自動で決めてしまうと、実績と食い違ったときに直す手間が増えるためです。
あわせて、各トランの使い方はSlopebaseのストーリー機能にマニュアルとして登録しました。注意点が担当者の頭の中に残らず、最新のマニュアルを探す手間もなくなります。入力の形式をそろえたことと合わせて、管理簿を扱える人が限られてしまう状態を解消することにつながります。
