工事台帳とは?記載項目と作り方|エクセルの限界と脱Excelで詰まる5つの設計論点(テンプレート付)

本記事は2026/08/10に更新しております。
工事台帳とは?記載項目と作り方|エクセルの限界と脱Excelで詰まる5つの設計論点(テンプレート付)

工事台帳のExcelファイルが重く、開くだけで時間がかかる。店舗ごとにブックが分かれているため、全社の数字を出すには月末に手作業で集める必要がある。マクロを触れる人が社内に1人しかいない——建設業の管理部門でよく聞く状態です。

 

本記事は、まず工事台帳の基本(何を記録する帳票か、なぜ必要か、どんな項目を載せるか、Excelでどう作るか)を整理したうえで、Excel運用が壊れていく5つのサインと、システムへ移行するときに必ず議論になる設計上の論点を解説します。テンプレートはフォーム入力なしでダウンロードできます。

01

まずは結論!工事台帳の限界は「重さ」ではなく、目安値と実績値が同居していること

結論を先に述べます。Excel運用の本当の限界は、ファイルが重いことではありません。「関数で自動計算した目安値」と「手入力で上書きした実績値」が、同じセルに同居していることです。

Excelでは、数式が入っているセルに数値を直接打ち込めば、数式は消えて値だけが残ります。ところが、システムでは、計算項目と手入力項目を同じ列に置くことができません。項目を作る時点で「これは計算で出す」「これは人が入れる」のどちらかを決める必要があるからです。つまり、脱エクセルを目指したシステム移行で最初に詰まるのは、機能の不足ではなく、この構造の違いです。移行前にやるべきことは、現行のExcelで数式が上書きされているセルを洗い出すこと。ここから始めてください。

 

この記事を読み終えたとき、以下のことが実現できるはずです。

 

  1. 工事台帳に載せるべき項目と、法令上の要件を確認できる
  2. 自社の工事台帳が、重さ・分割・突合のどこで壊れているかを特定できる
  3. 期をまたぐ工事の粗利を正しく出す台帳の持ち方が理解できる
  4. 移行の第1段階に載せる業務と項目を確定できる

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02

工事台帳とは|目的と、経営事項審査・税務調査で求められる理由

工事台帳とは、工事現場ごとに取引内容を記録し、原価を集計するための帳票です。「工事管理台帳」「工事原価台帳」「工事原価管理帳」とも呼ばれます。1件の工事について、いくらで受注し、いくら原価がかかり、いつどれだけ入金されたかを一覧できるようにしたもので、基本的には元請業者(発注者から工事を請け負った建設業者)が作成します。

建設業の原価管理が一般的な製造業などと比べて複雑なのは、工事ごとに工期が異なり、資材価格や労務費が期中に変動し、原価の項目数も多いためです。工事台帳を作ることで、工事単位の採算がはじめて把握できるようになります。

工事台帳を作成する3つの目的

  1. 工事別の採算管理:工事ごとの収支・利益率を把握し、赤字工事や無理な受注を避ける。過去実績が蓄積されるため、次の見積精度も上がります
  2. 経営事項審査(経審)への対応:公共工事を発注者から直接請け負う際に受ける審査で、工事台帳の提示を求められます
  3. 税務調査への対応:建設業は工事の金額が大きく、売上計上基準も複数あるため、工事ごとの原価と売上の対応を説明できる資料が必要になります

 

つまり、工事台帳は「作ったほうが望ましい管理帳票」ではなく、実質的に作成が必須の帳票です。

会計上の位置づけ|未成工事支出金と完成工事原価

工事台帳に記録する原価は、会計上、次の2つのいずれかに区分されます。

 

  1. 未成工事支出金:
    まだ完成していない工事に投入した原価。決算日時点で工事が完了していない場合、費用ではなく資産として計上されます
  2. 完成工事原価:
    完成・引渡しが済んだ工事の原価。対応する完成工事高(売上)と同じ期に費用計上されます

 

そして、これらの原価は次の4区分で記録します。

 

区分 内容
材料費 工事に使う材料の仕入費用(引取運賃を含む)
労務費 自社が雇用する作業員の給与・賃金・手当。建設作業に従事する職員のみで、事務員は含みません
外注費 直接雇用していない下請業者・外注業者の作業員に支払う費用
経費 上記以外。事務員の給与、現場の光熱費、建設機械の使用料など

 

原価を4区分に分けているのは、工事別の採算を見るときに「どこにコストがかかったか」を把握するためです。合計額だけでは、外注比率が高いのか、労務費が膨らんだのかを判断できません。

工事台帳と、建設業法上の「帳簿」は別物

混同されやすい点を整理します。建設業では、工事台帳とは別に建設業法上の「帳簿」の備付け義務があります。

 

建設業法第40条の3は、営業所(本店を含む)ごとに営業に関する事項を記載した帳簿を備え、保存することを定めています。具体的な記載事項は建設業法施行規則第26条に規定されています。

 

対象 保存期間 起算点 対象者
帳簿および添付書類 5年間 工事目的物の引渡し時 建設業者(営業所ごと)
帳簿のうち、発注者と直接締結した住宅を新築する建設工事に係るもの 10年間 同上 同上
営業に関する図書(完成図、発注者との打合せ記録、施工体系図) 10年間 同上 発注者から直接請け負った元請業者

 

注意点を2つ補足します。1つは、保存期間の起算点が「作成日」ではなく「工事目的物を引き渡したとき」であること。もう1つは、営業に関する図書の10年保存義務を負うのは元請業者に限られることです。また、帳簿は営業所ごとに保存する必要があり、本店で一括保管することはできません。紙だけでなく電子データでの保存も認められています。

 

整理すると、工事台帳と建設業法上の帳簿は目的が異なる別の書類です。ただし記載内容には重なる部分があります。台帳の項目を設計するときは、まず法令上の記載事項を確認し、そのうえで自社の管理項目を足していく順序で進めてください。逆の順序だと、後から法定項目を追加することになり、過去データの遡及入力が発生します。

工事台帳に載せる基本項目

実務上、最低限そろえておきたい項目は次のとおりです。

 

  1. 工事番号/工事名/発注者/施工場所
  2. 契約日/着工日/完工予定日/完工日/引渡日
  3. 契約金額/変更契約の履歴/完工金額
  4. 原価(材料費・労務費・外注費・経費の4区分)
  5. 請求日/入金予定日/入金日/入金額/未収残高
  6. 担当者/店舗・拠点

 

「未収残高」は、請求済みでまだ入金されていない金額のことです。この項目があることで、工事台帳がそのまま売掛の管理にも使えるようになります(後述します)。

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03

工事台帳をエクセルで作る|基本構成と作り方

Excelで作る場合、シートは3つに分けるのが基本です。1枚のシートにすべてを詰め込むと、集計の追加や項目の変更のたびに全体を触ることになります。
シート 単位 内容
明細 1工事1行 契約・原価・入金の実績
集計 期・店舗・担当ごと 明細を集計した数値
マスタ 発注者、担当者、原価科目

 

「マスタ」とは、繰り返し使う固定情報を一覧にしておくシートのことです。発注者名や担当者名を毎回手入力すると表記がゆれるため、マスタから選ぶ形にします。

 

工事台帳の3シート構成

作成の手順(5ステップ)

  1. マスタシートを先に作る:
    発注者、担当者、店舗、原価科目(材料費・労務費・外注費・経費)を一覧化します
  2. 明細シートの列を確定する:
    前掲の基本項目を左から「識別情報→日付→金額→原価→入金」の順に並べます
  3. 入力規則を設定する:
    発注者・担当者・店舗の列は、マスタを参照するプルダウンにします
  4. 集計シートをピボットテーブルまたはSUMIFSで作る:
    明細から自動集計させ、手入力は行いません
  5. 丸めの位置と期の定義を設定シートに書く:
    後述しますが、この2つを文書化しておかないと、後で数字が合わなくなります

設計の初期に決めておく2つのルール

前述の建設業の企業の設計では、明細シートが「期・店舗・顧客・担当」単位、集計シートが「期・店舗・担当」単位でした。よく見ると、集計側には「顧客」がありません。明細に存在する切り口が集計側にないと、「この顧客の年間受注額は?」という問いに、その場では答えられません。

 

数値の扱いも、設計の初期に決めておいてください。同社では、丸め(端数処理)は小数点第2位で四捨五入、金額は千以上〜1億未満の範囲で運用されていました。

 

ここで、実案件から確認できた範囲をはっきりさせておきます。この企業の管理表で扱われていたのは、成約金額・原価・粗利・利益率までの粒度で、原価を材料費・労務費・外注費・経費の4区分に分ける運用は行われていませんでした。

 

本記事で示した4区分は、前述の完成工事原価報告書の区分に基づく一般的な設計です。実案件から得られたのは、期の定義・丸めの位置・集計単位という、様式そのものではなく「様式の外側にあるルール」のほうでした。そして移行で揉めるのは、たいていこちら側です。

 

丸めの位置を決めずに運用を始めると、集計値と明細値が1円単位で合わなくなります。明細それぞれで四捨五入した合計と、合計してから四捨五入した値は一致しないためです。金額が大きくなるほど、この差は目立ちます。

 


本記事の設計をそのまま反映した工事台帳テンプレート(Excel・4シート)です。

 

工事台帳テンプレート

 

明細・工事別原価集計・入金予定/消込・設定シートの構成で、原価4区分と、計算項目・入力項目を分けた設計になっています。移行時に議論になる箇所が、あらかじめ整理された状態から始められます。
▶ 工事台帳テンプレートをダウンロード(Excel/フォーム入力不要・そのまま保存できます)


 

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04

いまの工事台帳は、どの段階で壊れているか|Excel運用が限界に来る5つのサイン

ここからは、Excel運用の限界と移行の話に入ります。

以下で紹介するのは、当社が建設業1社と行った導入前検証の記録です。この検証は、2026年から9社(製造・卸売・小売・建設・商社・ソフトウェア開発・教育/従業員15名〜2,300名)と進めている取り組みの一部で、本格導入の前に実際の業務データや帳票を使ってシステムに載るかを試すもの、いわゆるPoC(Proof of Concept=概念実証)です。

 

まず、自社の現在地を確認してください。次の5つのうち3つ以上に当てはまるなら、移行を検討する段階に来ています。

サイン1|ファイルが重く、破損の不安がある

マクロ(Excelの操作を自動化する簡易プログラム)を長年使い込んだブックは、開くだけで数十秒かかることがあります。前述の建設業の企業でも、「Excelがマクロを使いすぎて重くなっている」ことが、システム化を検討する直接のきっかけでした。

重さ自体は我慢できたとしても、問題はその先です。ファイルが破損したとき、復旧できる人が社内にいません。

サイン2|店舗・拠点ごとにブックが分かれている

全社の集計を出すために、月末に各店舗のファイルを集めて手作業でコピー&ペーストしている——これは分割による弊害です。作業時間がかかるだけでなく、貼り付け位置のずれや、旧版のファイルを集計してしまうといったミスが起きやすくなります。

サイン3|同じ数字を2箇所以上に入力している

工事台帳に入力した金額を、売掛管理表にも入力している。どちらか一方を直し忘れると、その時点で数字が合わなくなります。そして厄介なことに、合わなくなったこと自体には気づきにくく、月次の突合で初めて発覚します。

サイン4|関数の結果を手入力で上書きしている

冒頭で述べた、最も見落とされているサインです。日常的にやっているため、問題だと認識されていないことがほとんどです。詳しくは後述の「目安値と実績値を混ぜない設計」で扱います。

サイン5|作った人以外がマクロを直せない

異動や退職によって、誰も中身を触れないブックが残ります。動いているうちはよいのですが、業務の変更に合わせて直す必要が出たとき、対応できません。結果として、システムのほうに業務を合わせる(=非効率な手作業を続ける)ことになります。

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期をまたぐ工事を、工事台帳でどう表現するか

建設業の工事台帳で最初に迷うのが、決算期をまたぐ案件の扱いです。着工が3月、完工が翌年5月といった工事を、どちらの期の数字として扱うのか、という問題です。

前述の建設業の企業では、「期」の定義が独特でした。会計年度ではなく、全完日(工事がすべて完了した日)を基準に期を判定しています。年度をまたぐ案件についてはブックを切り替えず、「◯月期」を継ぎ足していく運用です。

 

  内容
利点 工事単位で原価と売上が必ず対応する。工事別の粗利が正確に出る
欠点 会計上の期間損益と一致しない。決算時に組み替えが必要

 

補足すると、「粗利」は売上から原価を引いた利益のこと。「期間損益」は、その会計期間内に発生した収益と費用を対応させて計算する、会計上の利益のことです。

 

完了日を基準にすれば、1件の工事にかかった原価と、その工事から得た売上が必ず同じ期に入るため、工事別の粗利がきれいに出ます。一方、会計は期間で区切って損益を出すため、完了日基準の数字をそのまま決算に使うことはできず、組み替え作業が発生します。ここで前述の未成工事支出金が関係してきます。決算日時点で未完成の工事の原価は、資産として繰り越す必要があるためです。

 

どちらが正しいということはありません。管理目的なら完了日基準、会計目的なら会計年度基準というだけの話です。重要なのは、台帳の「期」が何を基準にしているかを明示しておくこと。移行の際は、この定義を要件定義書の冒頭に書いてください。

 

なお、未完工の案件について、同社では未入金の契約〜完工金額を合計し、入金予定日が属する期で集計していました。まだ完了していない工事は完了日で期を判定できないため、入金予定日で代用しているわけです。独自の運用ですが、資金繰りを見るうえでは合理的な考え方です。

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目安値と実績値を混ぜない設計|関数と手入力の同居問題

ここが、この記事の中核です。

前述の建設業の企業の売掛管理表には、次の運用がありました。日付や金額を関数で「目安値」として自動表示し、実績とズレたら手入力で上書きする。

 

たとえば、入金予定日を「請求日+60日」という数式で自動表示しておき、取引先から「今月は月末締めの翌々月払いで」と連絡が来たら、その日付を直接打ち込んで上書きする、といった使い方です。

 

Excelでは、これが問題なくできます。しかしシステムでは、同じ項目を「計算項目」と「入力項目」の両方にすることはできません。項目を定義する時点で、どちらかを選ぶ必要があります。

 

設計 利点 欠点
A 計算項目と入力項目を別の列に分ける 目安と実績が両方残り、差異が見える 列が増えて横長になる
B 入力項目のみにし、初期値として計算値をセットする 画面が簡潔 後から目安値を確認できない
C 計算項目のみにし、例外は別テーブルで管理 データが正確 例外処理の運用が増える

 

A案は、「入金予定日(計算)」と「入金予定日(実績)」の2列を持つ形です。当初の見込みと実際の予定日がどれだけずれたかを、後から検証できます。ただし画面が横に伸びます。

 

B案は、列は1つのままにして、新規作成時に計算結果を初期値として入れておき、必要なら書き換えてもらう形です。画面はすっきりしますが、書き換えられた後は当初の見込み値が残りません。

 

C案は、原則を計算だけで通し、例外的なケースだけを別の場所に記録する形です。データとしては最も整いますが、例外が発生するたびに登録という一手間が増えます。

 

同社の設計では、A案を採ると項目数が増えて画面が横長になる点が、実際に課題として挙がっていました。

判断基準は「差異を後から検証する必要があるか」です。検証する必要があるならA案、必要ないならB案。C案は、例外が月に数件以下の場合に限って現実的です。

移行前にやること

移行を検討し始めたら、まず現行のExcelを開いて、数式が入っているはずのセルに直接値が入っている箇所を探してください。

 

条件付き書式で「数式でないセル」に色を付ける設定にすれば、上書きされた箇所が一目で分かります(ISFORMULA関数を使った条件付き書式が便利です)。

 

色が付いた箇所が、移行時に必ず議論になる項目です。事前に洗い出しておけば、ベンダーとの打合せで「ここは実績で上書きすることがあります」と即答でき、設計のやり直しを防げます。

 

数式と手入力が混在している状態

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店舗ごとに分かれた工事台帳エクセルを、どう1つにするか

拠点別・店舗別にブックが分かれている場合、統合作業に入る前に、まず分割されている理由を特定してください。理由によって解き方がまったく違うためです。
分割の理由 解き方
権限(他店の数字を見せたくない) 1テーブルに統合し、閲覧権限で制御する。ファイルを分ける必要はない
運用(同時に開けない、重い) システム化そのもので解消する
歴史的経緯(昔からそうしている) 統合してよい。ただし現場の合意形成に時間を要する

 

1行目が重要です。Excelでは「見せたくないなら、ファイルごと分ける」以外に現実的な手段がありませんでした。しかしシステムでは、データは1つにまとめたまま、「この人にはこの店舗の行だけを表示する」という制御ができます。権限が理由の分割は、システム化と同時に不要になります。

 

前述の企業では、店舗ごとに分けると明細12ブック・集計12ブックになる構造でした。合計24個のファイルを、月末に突き合わせる作業が発生します。

 

統合の順番は、①明細を1テーブルに統合 → ②集計を明細から自動生成 → ③店舗別の閲覧権限を設定、の順です。

 

集計から先に統合しようとすると、明細の粒度が揃っていないことが後から判明して手戻りします。たとえば、A店は工事1件を1行で管理し、B店は工程ごとに分けて複数行で管理していた、といった違いです。集計値だけを見ていると気づけませんが、明細を並べれば一目で分かります。

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脱Excelの第1段階に何を載せるか

全部を一度に移行しようとすると、要件が膨らんで頓挫します。

前述の9社のうち商社(300〜500名規模)では、社内から「やりたいことが増えると高額になって頓挫するのではないか」という懸念が実際に出ており、対象帳票を3種類に絞る判断が行われています。この判断自体が、プロジェクトを前に進めた要因になっています。

第1段階に載せる業務の3条件

  1. 現行データがすでに構造化されている(Excelの表になっている)
  2. 関与する部門が少ない(合意形成にかかる時間が短く、決めたことが覆りにくいため)
  3. 月間の件数が多い(同じ作業の繰り返しが多いほど、効果が実感されやすいため)

 

工事台帳の場合、多くは「明細の入力と、工事別原価の集計」が第1段階になります。すでにExcelの表になっており、管理部門で完結し、毎日入力が発生するためです。

 

一方、見積作成や発注管理まで含めると、営業部門・購買部門が関与することになり、合意形成に時間がかかります。第2段階以降に回すのが現実的です。

 

なお、前述の建設業の企業は情報システム部門が存在せず、業務部門数名で運用しています。9社を見渡しても、5社は情報システム部門が実質1名以下でした。情シスがいないことは、移行を諦める理由にはなりません。対象業務が部門内で完結していれば、業務部門だけで進められます。

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売掛金管理・入金消込までつなげる

工事台帳だけを移行し、売掛管理表をExcelに残すと、二重管理が発生します。同じ工事の金額を、システムとExcelの2箇所に入力することになるためです。

1つのデータで持つ設計

工事台帳の明細に、次の項目を追加してください。

 

  1. 請求日/請求金額/請求書番号
  2. 入金予定日/入金日/入金額
  3. 未収残高(計算項目)
  4. 消込ステータス(未/一部/完了)

 

「消込(けしこみ)」とは、入金があったときに、その入金がどの請求に対応するかを突き合わせて、売掛金の残高から消していく作業のことです。ステータスを持たせておくと、一部だけ入金された案件がひと目で分かります。

この項目群を工事台帳の明細に持たせれば、工事台帳がそのまま売掛管理表として機能します。工事と売掛を別テーブルにする必要はありません。

消込で例外になる3パターン

  1. 振込名義が請求先と異なる(親会社名義での入金など。どの請求に充てるかを人が判断する必要があります)
  2. 1回の入金に複数の請求が含まれる(1件の入金を複数の請求に分けて消す仕組みが要ります)
  3. 一部入金で、残額が翌月に繰り越される(残額をどう表示し、いつ督促するかを決めておく必要があります)

 

この3つを決めずに移行すると、システムは入っているのに例外処理だけ手作業が残る、という状態になります。

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脱エクセルを目指したシステム移行のロードマップ(90日)

  • 1〜2週目:
    現行Excelの棚卸し。数式が上書きされている箇所を特定し、期の定義と丸めの位置を文書化する
  • 3〜4週目:
    第1段階の対象業務を1つに絞る。明細の項目を確定する
  • 5〜8週目:
    明細テーブルを作り、過去1期分のデータを移行して数字が合うか検証する
  • 9〜12週目:
    集計と権限を設定し、1ヶ月並行運用する

このうち、過去1期分での検証を飛ばさないでください。ここを省くと本稼働後に数字の不一致が発覚し、原因究明に何倍もの時間がかかります。そして、現行と数字が合わない原因のほとんどは、期の定義か丸めの位置です。

 

移行前に決めておく項目の洗い出し方については、要件定義書のサンプルと書き方|必要項目一覧と決まらない項目の埋め方で詳しく扱っています。

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よくある質問(FAQ)

 

Q1. 工事台帳の作成は法律で義務づけられていますか?

工事台帳そのものを直接義務づける条文はありません。ただし、経営事項審査で提示を求められ、税務調査でも使用される場合があるため、実質的には作成が必須です。また、これとは別に建設業法第40条の3による帳簿の備付け・保存義務があり、こちらは営業所ごとに5年間(発注者と直接締結した新築住宅工事は10年間)の保存が明確に義務づけられています。

Q2. 工事台帳の保存期間はどれくらいですか?

工事台帳自体の保存期間の定めはありませんが、建設業法上の帳簿が引渡し時から5年間、営業に関する図書(元請業者のみ)が10年間です。加えて、税務上の帳簿書類は原則7年間の保存が必要になります。実務上は、もっとも長い期間に合わせて10年保存とし、電子データで持つのが管理しやすい形です。

Q3. 工事台帳は元請だけが作ればよいのですか?

工事台帳は基本的に元請業者が作成するものですが、下請業者も自社が請け負った工事の原価管理は必要です。また、建設業法第40条の3の帳簿備付け義務は、元請・下請を問わず建設業者に課されます。ただし、営業に関する図書(完成図・打合せ記録・施工体系図)の10年保存義務は、発注者から直接請け負った元請業者に限られます。

Q4. エクセルの工事台帳とシステム、どちらを選ぶべきですか?

本記事で挙げた5つのサインのうち、3つ以上に当てはまるかどうかが目安です。特に「関数の結果を手入力で上書きしている」「拠点ごとにブックが分かれている」の2つに該当する場合は、Excelのままでは解決しません。逆に、工事件数が少なく1拠点で完結しているなら、Excelでも十分に機能します。

Q5. 原価の4区分(材料費・労務費・外注費・経費)は必ず分ける必要がありますか?

分けてください。合計額だけでは、外注比率が高いのか労務費が膨らんだのかを判断できず、次の見積に活かせません。また、完成工事原価報告書の作成時にもこの区分が必要になります。迷いやすいのは労務費と経費の線引きで、建設作業に直接従事する職員の給与が労務費、事務員の給与は経費です。

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まとめ|構造の違いを先に潰してからシステム移行する

工事台帳は、工事現場ごとに原価を集計する帳票で、経営事項審査と税務調査への対応の面からも実質的に作成が必須です。原価は材料費・労務費・外注費・経費の4区分で記録し、未完成の工事分は未成工事支出金、完成した工事分は完成工事原価として扱います。建設業法上の帳簿とは別の書類ですが、記載内容には重なる部分があるため、法令上の記載事項を先に確認してから自社の管理項目を足してください。

Excel運用の限界のサインは5つ。ファイルの重さ、拠点別のブック分割、同じ数字の二重入力、関数の上書き、マクロの属人化です。このうち移行時に最も詰まるのは、関数で出した目安値を手入力で上書きしている箇所でした。A案(列を分ける)B案(入力のみ)C案(計算のみ+例外管理)から選ぶ必要があり、判断基準は「差異を後から検証する必要があるか」です。

 

期をまたぐ工事については、「期」の定義が会計年度なのか完了日基準なのかを先に明示してください。拠点別ブックは、分割の理由が権限・運用・歴史のどれかによって解き方が変わります。第1段階は「明細の入力と工事別原価の集計」に絞り、売掛と入金消込は同じテーブルに含めて二重管理を防いでください。

移行の前に、まず現行Excelで数式が上書きされているセルを探すこと。そこから始めてください。

 


工事台帳テンプレート(Excel・4シート)をご用意しています。

 

工事台帳テンプレート

 

明細・工事別原価集計・入金予定/消込・設定シートの4構成。原価4区分に対応し、計算項目と入力項目を分けた設計で、期の定義と丸めの位置を設定シートで管理できます。移行前チェックリストも付属します。
▶ 工事台帳テンプレートをダウンロード(Excel/フォーム入力不要)

 


 

拠点別に分かれたExcelの統合や、情報システム部門がいない体制での進め方を検討する段階では、バックオフィス業務の課題整理と、ノーコードでの実現範囲をまとめた資料もあわせてご覧いただけます。
▶ 業務効率化に役立つ資料をダウンロードする(資料請求)

 

 

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経理・財務部門の課題と活用例
要件定義書のサンプルと書き方

 

※本記事の実案件に関する記述は、当社が2026年から実施している導入前検証(9社・2026年8月時点で完了1社)のヒアリング記録および設計資料に基づきます。社名・具体的な金額は伏せています。検証の完了報告ではありません。

 

出典:国土交通省 建設業法施行規則(抄)第26条

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※バックオフィス業務とは経理や総務、人事、法務、財務などといった直接顧客と対峙することの無い社内向け業務全般を行う職種や業務のこと

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この記事を書いた人

Slopebase編集部
監修
田中雅人(ITコンサルタント)

ソフトウェアメーカー取締役、IT上場企業の取締役を経て、現在、合同会社アンプラグド代表。これまでに、Webサイト制作、大規模システム開発、ECサイト構築、SEM、CRM等のWebマーケティングなど、IT戦略全般のコンサルティングを30年以上実施。現在は、大手上場企業から中小企業まで、IT全般のコンサルティングを行っているかたわらWebマーケティングに関するeラーニングの講師、コラム執筆なども実施。

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