案件管理ツールは多種多様であり、製品分類によって得意とする領域が異なります。自社の課題に合ったツールを選ぶための分類と選定軸を提示します。
SFA・CRM型(商談進捗・予実分析に強み)
SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)をベースとした案件管理ツールは、見込客の獲得から受注に至るまでの営業プロセスの可視化と、個々の営業担当者の活動履歴管理、将来の売上予測や予実管理に特化しています。
どの商談がどのフェーズに何件あり、見込み金額がいくらあるかをビジュアル化するパイプライン管理に非常に優れており、営業部門全体における標準的な動きの定義や、組織的な営業力の底上げを目指す企業に力を発揮します。
一方で、見積書や請求書の作成といった帳票処理や、受注後の詳細な業務フロー管理、基幹システムへのデータ受け渡しなどを苦手とする製品が多く存在します。営業活動の可視化と分析を最優先とする組織に向いている反面、見積から請求までの一連の事務作業までカバーしたい場合は、他ツールとの連携が必要となります。
業務データベース型・ノーコード型(柔軟な項目設計・帳票出力・承認フロー)
業務データベース型やノーコードツール型の案件管理システムは、自社独自の入力項目や業務フロー、承認ルールをプログラミングなしで自由に設計できる柔軟性が最大の特長です。
見積書や納品書、請求書などのPDF帳票を社内規定のレイアウト通りに出力できる機能や、社内の多段階承認ワークフローを簡単に構築できる機能を備えています。標準的なSFAの型に自社の業務を当てはめることが難しい企業や、自社特有の取引条件・管理項目が多い企業、そして見積から受注・請求までの事務手続きをスムーズに一元化したい企業に非常に効果的です。
自社の業務にぴったり合ったシステムを低コストかつ短期間で構築できる一方、初期の設計を曖昧にしたまま構築を進めるとデータ構造が乱立しやすくなるため、あらかじめ明確なデータ設計を行っておく必要があります。
自社に合わせたシステム構築の手法については、ノーコード開発で業務システムを内製化する実践ガイドをご覧ください。
プロジェクト管理型(長期工程・複数担当のタスク管理)
プロジェクト管理型のツールは、案件が受注した後の工程管理、作業タスクの分配、ガントチャートやカンバンボードによる進捗管理に特化しています。
建設業や設備工事、ITシステムの受託開発、各種コンサルティング業務のように、1つの案件に対してデザイナー、エンジニア、現場監督など複数の担当者が関わり、納品までに数ヶ月から数年といった長期間を要するビジネスモデルに適しています。
工程ごとの遅延検知や、特定担当者への作業負荷の偏りを防ぐリソース調整に強みを持ちます。ただし、商談段階の売上予測や見積管理といった、受注前の管理機能は弱いため、営業プロセスの管理を行いたい場合はSFAや業務データベースツールとの併用を検討する必要があります。
選定でつまずきやすい3点
ツールの選定時、比較表のスペックだけでは見落としがちな重要ポイントが以下の3点です。
1. 既存の基幹システムとの連携性
案件管理ツール上で受注や請求の処理が完了した際、既存の会計システムや販売管理システムへデータを受け渡せるかを確認します。自動連携(API連携)やCSV出力によるスムーズな受け渡しができないツールを選んでしまうと、結局は担当者が基幹システムへ同じデータを手打ちで打ち直す二重入力作業が残存し、導入効果が半減します。
2. 社外連携の可否とコスト
取引先、代理店、外部の協力会社を、見積の提出や承認フロー、案件の進捗共有に巻き込む運用を行う場合、アカウント権限の柔軟性と追加コストの検証が不可欠です。社外の閲覧用ユーザーにまで高額なライセンス費用が発生するツールを選定すると、全社展開や外部連携の段階で運用予算がオーバーする事態に陥ります。
3. 項目追加や設定変更の容易さ
組織変更や新商品の投入、法改正などに伴い、運用の途中で管理項目や承認フローを変更する機会は必ず訪れます。項目の追加やフローの変更を行う際、外部の導入ベンダーへ都度改修を外注しなければならない製品は、改修費用が膨らむだけでなく、修正完了まで数週間を要して現場の業務を止める原因となります。情報システム部門や現場の管理担当者が、画面上で即座に設定を変更できる内製化のしやすさを選定軸に置くことが重要です。