是正処置とは?修正・予防処置との違いと是正処置報告書の書き方【ISO9001:2015対応】

本記事は2026/08/10に更新しております。
是正処置とは?修正・予防処置との違いと是正処置報告書の書き方【ISO9001:2015対応】

トラブルが起きたので報告書を書く。原因と対策を記入し、関係者に回覧して押印をもらう。全員の押印がそろったところで完了——多くの職場で、この流れが定着していると思います。

 

ところが、この運用をきちんと続けているにもかかわらず、同じ不具合が繰り返される。そして監査では「記録はあるが、有効性の確認がない」と指摘される。書類は整っているのに、再発は止まらない。

 

本記事は、まず是正処置という用語の定義と手順を整理したうえで、報告書の様式をどう直せば再発防止として機能するのかを解説します。

01

まずは結論!是正処置とは「原因に手を打つこと」。押印の数は再発防止と関係がない

結論を先に述べます。是正処置とは、不適合が起きた原因を取り除き、同じ原因での再発を防ぐ処置のことです。目の前の不良品を廃棄したり交換したりする「修正」とは別物で、原因に手を打っていなければ是正処置として成立しません。

そのうえで、実務上の要点をもう1つ挙げます。問題は回覧の速さではなく、押印欄のうち実際に判断している人が何人いるかです。実案件では、押印欄が14個ある報告書のうち、実質的に「承認」の意味を持つのは1個だけで、残る13個は「内容を確認した」という記録でした。判断している人が実質1人であれば、押印を14個集めても内容の精査は増えません。

 

必要なのは、押印欄を決裁・承認・確認・通知の4つに分解すること、有効性レビューを様式に組み込むこと、保存記録を検索できる分類軸で持つこと——この3点です。

 

この記事を読み終えたとき、あなたは自社の是正処置報告書の押印欄を4分類に分け、有効性レビューの欄を追加した様式を、作成できるようになっているでしょう。

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02

是正処置とは|修正・予防処置との違いを実務で線引きする

まず用語を整理します。ここを曖昧にしたままだと、「対策を打ったつもりが、実は何も打てていなかった」という事態が起きます。

品質管理の国際規格をもとにしたJIS Q 9001:2015(品質マネジメントシステム-要求事項)では、箇条10.2に「不適合及び是正処置」が規定されています。「不適合」とは、決められた要求事項を満たしていない状態のこと。製品の規格外れ、手順違反、書類の不備などが含まれます。

修正・是正処置・予防処置の違い

用語 対象 目的
修正(応急処置) 起きた不適合そのもの 目の前の状態を正す 不良品を選別・廃棄する、交換品を出す
是正処置 不適合の原因 同じ原因で再発させない 検査工程の順序を変える、設備の設定値を固定する
予防処置(※) 潜在的な不適合 発生そのものを防ぐ 類似工程へ水平展開する

 

この3つのうち、審査で最も多い指摘は、「修正」を「是正処置」として記録していることです。

 

「該当ロットを廃棄した」「担当者に注意喚起した」——これらはいずれも修正であって、是正処置ではありません。目の前の不良品はなくなりますが、次に同じ条件がそろえば、また同じ不良が出ます。是正処置として成立するには、原因そのものに手を打っていることが必要です。

※重要|ISO9001:2015に「予防処置」の条項はありません

上の表に※を付けた理由を説明します。2015年の改訂で、ISO9001から「予防処置」という独立した要求事項はなくなりました。旧版(ISO9001:2008)では箇条8.5.3に予防処置が規定されていましたが、2015年版ではこの条項が削除されています。

 

では予防の考え方がなくなったのかというと、そうではありません。箇条6.1「リスク及び機会への取組み」として、マネジメントシステム全体に組み込まれる形に変わりました。つまり、「問題が起きそうな箇所を事前に特定して手を打つ」という活動は、特別な手続きではなく、計画段階から日常的に行うべきものとして位置づけ直されたわけです。

 

実務上、これは次のことを意味します。

 

  1. 内部監査や外部審査で「予防処置の記録を見せてください」と求められることは、原則としてありません
  2. 代わりに問われるのは、リスクをどう特定し、どう対応を計画し、その有効性をどう評価したかです
  3. 「予防処置報告書」という様式を残している場合、規格対応としては不要ですが、社内の改善活動の記録として運用する分には差し支えありません

 

用語として「予防処置」を使うこと自体が誤りではありませんが、ISO9001:2015の要求事項として説明するのは誤りです。社内文書や説明資料でこの区別が曖昧になっているケースは多いので、一度確認しておくことをおすすめします。

是正処置の全体手順(6ステップ)

是正処置の全体像は、次の6段階です。自社の運用がどこまで整備されているかを確認するのに使ってください。

 

① 不適合の特定と応急処置(修正)

② 原因分析

③ 対策の立案と実施

④ 有効性の確認(レビュー)

⑤ 水平展開

⑥ 記録の保存

 

「水平展開」とは、ある工程で見つかった問題と同じ構造が他の工程にもないかを点検し、まだ問題が起きていない工程にも先回りして対策を適用することです。

 

本記事が重点的に扱うのは②④⑥の3つです。運用が形骸化するのは、ほぼこの3箇所に集中するためです。①③は目の前で困っている以上、誰かが必ず動きます。しかし②の原因分析は掘り下げが甘くなりやすく、④の有効性確認は様式に欄がなければ実施されず、⑥の保存は「保存すること」自体が目的になって使われなくなります。

 

是正処置の6ステップ

補足|業種によって重なる制度

食品製造業の場合は、厚生労働省のHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理も関係します。HACCPとは、原材料から出荷までの各工程で危害要因を分析し、特に重要な工程を継続的に監視・記録する衛生管理の手法です。

 

厚生労働省が示す手順には、衛生管理の実施状況を記録して保存することに加え、衛生管理計画や手順書の効果を定期的に検証し、必要に応じて内容を見直すことが含まれています。記録を残すだけでは足りず、効果を振り返る工程まで求められている、ということです。この点は、後述する「有効性レビュー」と直結します。

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03

押印は集まっているのに、なぜ是正処置が再発防止につながらないのか

ここから、実際の記録に基づく話に入ります。

以下で扱うのは、当社が2026年から9社と進めている業務システムの導入前検証(PoC=Proof of Concept。本格導入前に、実際の業務データや帳票を使ってシステムに載るかを試す取り組み)の記録です。対象9社は製造・卸売・小売・建設・商社・ソフトウェア開発・教育の各業種、従業員規模は15名から2,300名。このうち、紙のトラブル報告書を対象にした製造業1社を取り上げます。

 

項目 記録内容
業種 製造業(乳製品)
従業員規模 50〜100名規模
対象業務 トラブル報告書の起票・回覧・是正処置の記録
情報システム体制 情報システム担当1名
既存の運用 紙での手書き・押印。システムは未導入
品質マネジメント 記録保持の仕組みあり。保存年限は永年
検証ステータス 検証完了・導入は未決定
観測時期 2026年7月

 

この企業の報告書には押印欄が14個あります。ここだけ聞くと、いかにも時間がかかりそうです。ところが、起票から最終押印までの実日数は1〜2日。決して遅くありません。

 

なぜ14個も押印欄があるのに速いのか。理由を確認したところ、14個のうち実質的に「承認」の意味を持つのは1個だけで、残る13個は「内容を確認した」という記録だったのです。

 

確認は判断を伴いません。判断を伴わないということは、差し戻しも発生しません。だから回覧は速く回っていたわけです。そして、速く回っているということは、14人が内容を精査しているわけではないということでもあります。

 

この構造が分かると、次のことが言えます。電子化して「速くする」ことを目的にしても、この構造は何も変わりません。すでに速いからです。

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04

是正処置報告書とトラブル報告書は何が違うか

現場では「トラブル報告書」「不具合報告書」「是正処置報告書」といった名称が混在しています。名前が違うだけで中身は同じ、というケースも珍しくありません。しかし、本来この2つは目的が異なる文書です。
  トラブル報告書 是正処置報告書
書くタイミング 発生直後 原因究明の後
書く人 発見者・担当者 原因分析の責任者
目的 事実を早く共有する 再発防止策を決めて記録する
求められる速度 速さ優先 正確さ優先
承認の重さ 確認中心 決裁が必要

 

この2つは求められる速度が正反対です。トラブル報告書は「まず知らせる」ことが目的なので、多少不正確でも早いほうがよく、是正処置報告書は「原因に手を打つ」ことが目的なので、時間をかけてでも正確さが必要になります。

 

この2つを1枚の様式にまとめると、必ず運用が歪みます。

 

前述の製造業の企業は、まさにその状態でした。運用は次の8ステップになっています。

 

  1. トラブル発生
  2. 報告書を作成・出力
  3. 事務所のホワイトボードへ貼り出し
  4. 各管理者が確認し、日付を記入
  5. 全員記入後に、記入者へ返却
  6. 原因・再発防止策を記入し、上長が確認・押印
  7. 管理職へ回覧し、押印
  8. 全員の押印をもって完了

 

流れを追うと、構造がはっきりします。同じ1枚の紙が、まず「発生を知らせる」ために1周し(3〜5)、その後に原因と対策を書いてからもう1周します(6〜8)。

 

現場の担当者からは、負担として次の3点が挙がっていました。

 

  1. 1枚の紙で2回回覧すること
  2. 紙を印刷しないといけない手間
  3. 手書きで記載しないといけないこと

 

一方で、社内の期限は「発生日より3日以内に記載」「記載日より原則7日以内に完了」と定められており、実際のリードタイムは1〜2日でした。期限は十分に守られています。つまり、遅さは、この企業の課題ではありません。

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05

是正処置報告書の書き方|原因欄を「確認不足」で終わらせない

報告書の様式のなかで、最も形骸化しやすいのが原因欄です。「確認不足」「注意喚起した」という言葉で埋まっている報告書は、書いた時点では完成して見えますが、再発防止にはまったく寄与しません。

手順1|事象と原因を分けて書く

起きたこと(事象)と、そうなった理由(原因)を混同しないでください。

 

「検査で不良を見逃した」——これは事象です。何が起きたかを述べているだけで、なぜ起きたかは含まれていません。原因は「なぜ見逃したか」の側にあります。記入時に一度、「これは起きたことか、それとも理由か」と自問してみてください。

手順2|「人」で止まらない

「担当者が確認を怠った」というところまで掘り下げたら、そこで止めないでください。

 

人の注意力に原因を置いた瞬間、対策は「気をつける」「注意喚起する」しか出てこなくなります。もう1段、掘ってください。

 

  1. なぜ確認を怠ったのか → 確認項目が20個あり、時間内に終わらない
  2. なぜ時間内に終わらないのか → 前工程の遅れが常態化し、検査に使える時間が圧縮されている

 

ここまで来ると、対策の性質が変わります。「検査項目に優先順位を決める」「前工程の着手時刻を変える」といった、仕組みを変える話になります。仕組みを変えれば、担当者が誰であっても同じ結果になります。

手順3|なぜなぜを止めてよい地点を決める

一方で、「なぜ」を掘り続けると、どこまでも遡れてしまいます。止める地点の判断基準は1つです。

 

「自部門または自社の権限で変更できる要素」に到達したら止めてください。

 

「業界の慣行だから」「取引先の都合だから」というところまで遡ってしまうと、確かに真の原因かもしれませんが、自分たちでは変えられません。変えられないものを原因として書くと、対策が実行できず、報告書は結局そこで止まります。

手順4|対策に「誰が・いつまでに」を書く

「ルールを周知する」「手順書を見直す」とだけ書かれた対策は、ほぼ実行されません。実施者(氏名)と期限(日付)を必ず入れてください。この2つがあるだけで、実行率は大きく変わります。

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06

押印欄を4つに分解する|決裁・承認・確認・通知

ここからが、この記事の中核です。

前述の製造業の企業のトラブル報告書には、押印欄が14個あります。役職としては社長から各課長までが並びます。ヒアリングでその内訳を確認したところ、回答は次のとおりでした。

 

発生報告時に14名全員、最終確認者は全員押印、承認は社長

 

つまり、実質的に承認の意味を持つのは1個だけで、残る13個は確認です。

 

ところが、紙の様式ではこの違いがまったく見えません。押印欄は、決裁だろうと確認だろうと、同じ大きさの四角として横一列に並ぶためです。見た目が同じなので、「承認者が14人いる」と誤認されます。そして電子化を検討する段になると、この誤認がそのまま設計に持ち込まれます。

 

そこで、押印欄を次の4種類に分解してください。

 

種別 意味 差し戻し権限 止まるか 設計上の扱い
決裁 最終的に可否を決める あり 止まる 必ず直列。1名に絞る
承認 内容に責任を持つ あり 止まる 直列。段数を最小化する
確認 内容を把握する なし 止まらない 並列化できる
通知 決定を知らせる。操作不要 なし 止まらない 完了後の自動通知に置き換えられる

 

「直列」とは、前の人が処理を終えないと次の人に回らない順番待ちの形のこと。「並列」とは、複数の人に同時に回り、それぞれが自分のタイミングで処理できる形のことです。

 

差し戻し権限がある人は、内容を精査して可否を判断するため、その人が処理を終えるまで先へ進めません(=直列にせざるを得ない)。逆に、差し戻す権限がない人は、内容を把握することが目的なので、順番を待つ必要がありません(=並列にできる)。

 

先の企業の場合、この分類に当てはめると決裁1・確認13という構成でした。この13個を並列の確認に変え、さらにそのうち一部を「完了後に自動で通知する」形に置き換えれば、押印という行為そのものを大きく減らせます。

 

ここで順序が重要です。紙の様式をそのまま電子化してしまうと、14個の押印がそのまま14ステップの承認フローになります。しかも電子化すると、「誰のところで止まっているか」が可視化されるぶん、かえって督促の手間が増えることさえあります。先に分解し、それから電子化してください。

自社の様式で分類する4手順

所要15分程度です。

 

  1. 報告書を1枚印刷する(電子ファイルのまま眺めるより、紙のほうが押印欄の並びを俯瞰しやすいためです)
  2. 押印欄の一つひとつに、決裁/承認/確認/通知のどれかを書き込む
  3. 迷ったら「この人が差し戻したことが過去にあるか」を思い出す。一度もなければ、それは確認です
  4. 直列でなければならない欄が2個以下になるまで、分類を見直す

 

実際にやってみると、多くの場合、直列が必要なのは1〜2個だけだと分かります。

 

承認者は14人ではない

 

承認ルートの分岐設計については、部門をまたぐ複雑な承認ルートを柔軟に設計・変更できる活用法、申請フローの仕組みについては申請フロー機能もあわせてご覧ください。

 


本記事で解説した押印欄4分類ワークシートと、有効性レビュー欄つきの是正処置報告書テンプレート(Excel)です。

 

是正処置報告書テンプレート

 

記入例つきなので、そのまま自社の様式検討にお使いいただけます。なお、有効性レビュー欄は本記事の提案としてテンプレートに加えた項目で、実案件の様式に同じ欄があるかどうかは未確認です。

▶ 是正処置報告書テンプレートをダウンロード(Excel/フォーム入力不要・そのまま保存できます)


 

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07

是正処置の有効性レビューを記録に組み込む

監査で「記録はあるが、有効性の確認がない」と指摘されるのは、担当者が確認をサボっているからではありません。多くの場合、様式にレビュー欄がないためです。書く場所がなければ、記録は残りません。

前述の企業についても、是正処置の有効性レビューを誰がいつ行っているか、報告書に該当欄があるかは未確認です。そして、これは特殊な例ではありません。発生・原因・対策の3欄で完結している様式は非常に多く、「対策が効いたかどうか」を書く場所が最初から存在しないケースが一般的です。

 

対処は単純で、次の4欄を様式に追加するだけです。

 

追加する欄 記入内容 記入者
レビュー予定日 対策実施日から何日後に確認するか 対策の実施責任者
レビュー実施日 実際に確認した日 レビュー実施者
レビュー結果 同種の不適合が再発していないか レビュー実施者
未達の場合の再処置 効果がなかった場合、次に何をするか 対策の実施責任者

 

このうち、運用が続くかどうかを左右するのが1行目です。レビュー予定日を、対策を書いた時点で記入させてください。

 

後から「そろそろ確認しよう」と思い出す運用は、まず続きません。日常業務に追われるうちに忘れられ、次に思い出すのは監査の直前です。対策を書いているその瞬間に「◯月◯日に確認する」と書いてしまえば、予定として残ります。

 

レビューまでの間隔は、同種の不適合が発生する周期の2倍程度を目安にしてください。月に1回程度発生していた不適合なら、2ヶ月後に確認します。1周期分だけでは「たまたま起きなかった」のか「対策が効いた」のかを区別できないためです。

内部監査で指摘されやすい3パターン

  1. 修正(応急処置)を是正処置として記録している
  2. 有効性の確認記録がない
  3. 対策の実施責任者と期限が書かれていない

 

この3つは、いずれも様式に欄を追加するだけで防げます。担当者の意識を変える必要はありません。書く場所を作れば、書かれるようになります。

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08

永年保存した是正処置報告書を、探せる状態にする

前述の企業では、報告書の保存年限が「永年」と定められています。ところが、ヒアリングでは次の回答が返ってきました。

同様のケースで探すのには時間を要している

 

紙のまま保管されているため、類似のトラブルが起きたときに過去の報告書を探し出せず、結果としてほとんど参照されていない状態です。

 

保存されているのに使われない記録は、再発防止に寄与しません。過去に同じ原因で不適合が起きていたとしても、それを見つけられなければ、毎回ゼロから原因分析をやり直すことになります。

 

ポイントは、保存する前に「どの軸で分類すれば後から引けるか」を決めておくことです。保存してから分類しようとしても、記入者はもういません。

 

分類軸は、次の候補から3つまで選んでください。多くすると記入負担が増え、結局「その他」ばかりが選ばれるようになります。

 

  1. 発生工程 / 対象設備・ライン / 不適合の区分(異物・規格外・表示・数量)
  2. 原因分類(設備・材料・方法・人・測定) / 顧客・出荷先の別 / 影響範囲(社内で止まったか、社外へ出たか)

 

選んだ3軸は、様式の先頭にプルダウン(選択肢から選ぶ形式)として固定してください。自由記述にすると、同じ工程を指しているのに「充填」「充てん」「じゅうてん」と表記がゆれ、検索しても引っかからなくなります。

システム化を検討する判断ライン

  1. 過去の報告書を参照する頻度が、月1回以上ある
  2. 分類軸を2つ以上組み合わせて探したい場面がある(「この設備で、かつ異物の案件」といった検索は紙では実質不可能なため)
  3. 保管場所が複数の建屋・拠点に分かれている

 

逆に、参照頻度が年に数回で、保管場所も1箇所なら、分類軸をプルダウン化した紙の様式で十分に機能します。

 

社内文書を検索できる状態にする方法については、ナレッジマネジメントとは?SECIモデルと実践4ステップストーリー機能でも扱っています。

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09

全社員に使わせる前提での費用の考え方

是正処置報告書を電子化する場合、利用者は品質管理部門だけではありません。不適合を発見した人が誰でも起票できることが前提になります。発見者が起票できないと、伝言してから誰かが代筆することになり、そこで情報が落ちるためです。

前述の企業では、検証開始時に次の要望が挙がっていました。

 

  1. 紙運用のワークフローからシステムへ切り替えたい
  2. 全社員にワークフローを使わせたいが、システムに費用をかけられない

 

ヒアリングでこの判断基準を確認したところ、見ていたのは1人あたりの単価ではなく、総額の上限でした。1人あたりの単価がいくら安くても、全社員分を積み上げた総額が上限を超えれば、そこで見送りになります。

 

この構造は、社内説明の仕方に直接影響します。社内で費用を説明するときは、単価ではなく「総額と、その総額が何人分か」を書いてください。「1人月額◯円」という書き方をすると、決裁者は必ず頭のなかで人数を掛け算します。そして掛け算の結果に驚いて、話が止まります。

ユーザー課金か、従量課金かを先に確認する

料金体系は大きく3つに分かれます。

 

課金体系 費用の決まり方 有利になる条件
ユーザー課金 利用者の人数 × 単価 対象者が少なく、全員が日常的に使う
定額(ユーザー数無制限) 人数・利用量にかかわらず一定額 対象者が非常に多く、利用も頻繁
従量課金 データ量や処理件数など、使った量 対象者は多いが、1人あたりの利用が少ない

 

是正処置報告書は、全社員がアカウントを持つ一方で、実際に起票するのは月に数件という運用になりやすい業務です。この条件では3行目に該当することが多くなりますが、起票件数が非常に多い企業では試算結果が変わります。逆に、品質管理部門の数名だけで完結させる運用であれば、ユーザー課金でも総額は小さく収まります。

 

判断の分かれ目は、対象人数と実際の利用頻度の差です。見積を依頼する前に「この製品はユーザー課金か、定額か、従量課金か」を確認し、3つすべてで試算してください。

 

アカウント数に比例して固定費がふくらむ構造そのものの見直し方についてはSaaSの固定費が膨らむ企業がとるべき対策、具体的な料金体系については料金ページをご確認ください。

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今日から着手する順番

  1. 今日:様式を1枚印刷し、押印欄を決裁/承認/確認/通知に分類する(所要15分)
  2. 今週:レビュー予定日・実施日・結果・再処置の4欄を様式に追加する
  3. 今月:分類軸を3つ決めてプルダウン化する。過去1年の報告書を10件ほど見返してから決めると、実態に合った軸になります
  4. 来月:新様式で1ヶ月運用し、レビュー欄の記入率を確認する。5割を切るようなら、予定日を記入しないと提出できない運用に変える
  5. その後:電子化を検討する。分解せずに電子化すると、紙の構造がそのままシステムに移るだけです

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よくある質問(FAQ)

 

Q1. 是正処置と是正措置は、どちらが正しいのですか?

どちらも使われます。JIS Q 9001の日本語訳では「是正処置」が使われており、ISO関連の文脈ではこちらが標準的です。一方、法令や行政文書では「是正措置」の表記が多く見られます。社内文書では、どちらか一方に統一しておくと、検索時の取りこぼしを防げます。

Q2. ISO9001:2015では予防処置が不要になったのですか?

「予防処置」という独立した要求事項がなくなった、というのが正確な理解です。旧版の箇条8.5.3にあった予防処置の条項は削除され、箇条6.1「リスク及び機会への取組み」として、計画段階からリスクを特定して対応する形に組み込まれました。予防の考え方そのものは残っており、むしろマネジメントシステム全体に広がっています。

Q3. 是正処置は、すべての不適合に対して実施しなければなりませんか?

必須ではありません。JIS Q 9001:2015の箇条10.2では、不適合の再発防止のために是正処置が必要かどうかを評価することが求められています。再発の可能性が低い一過性の事象にまで是正処置を実施すると、過剰な負担になります。重要なのは、評価した記録を残すことです。「是正処置は不要と判断した。理由は◯◯」と書いておけば、監査でも説明できます。

Q4. 有効性レビューは、いつ実施すればよいですか?

同種の不適合が発生していた周期の2倍程度が目安です。月1回程度発生していたなら2ヶ月後、四半期に1回なら半年後。1周期分だけでは、対策が効いたのか、たまたま起きなかったのかを区別できません。そして、レビュー予定日は対策を記入した時点で様式に書き込んでください。

Q5. 是正処置報告書の保存期間はどれくらいですか?

ISO9001に具体的な年数の定めはなく、組織が自ら定めることになっています。実務では3年〜永年まで幅がありますが、製品の使用期間、法令上の保存義務、顧客との契約条件を踏まえて決めるのが一般的です。永年保存とする場合は、本記事で述べたとおり、保存前に分類軸を決めておかないと参照できない記録になります。

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まとめ|押印を減らすのではなく、判断の所在を明示する

是正処置とは、不適合の原因に手を打ち、同じ原因での再発を防ぐ処置です。「不良品を廃棄した」「注意喚起した」は修正であって是正処置ではありません。また、ISO9001:2015に予防処置の独立した条項はなく、箇条6.1「リスク及び機会への取組み」に統合されています。

トラブル報告書と是正処置報告書は目的が違うため、1枚の様式にまとめると、同じ紙が2周する構造が生まれます。押印欄は、実案件では14個のうち実質的な承認が1個だけでした。決裁・承認・確認・通知の4つに分け、確認は並列化し、通知は自動化してください。直列にする必要があるのは、通常1〜2個です。

 

有効性レビューは、レビュー予定日・実施日・結果・再処置の4欄を様式に追加し、対策を書いた時点で予定日を記入させてください。保存した記録は、分類軸を3つに絞ってプルダウン化すれば、後から引き出せるようになります。

 

着手は今日、様式1枚の押印欄を分類するところからです。所要15分で、自社の構造が見えます。

 


是正処置報告書テンプレート(Excel)をご用意しています。

 

是正報告書テンプレート

 

有効性レビュー欄を組み込んだ報告書様式、押印欄4分類ワークシート、記入例の3点セットです。分類軸の選定リストも含みます。

▶ 是正処置報告書テンプレートをダウンロード(Excel/フォーム入力不要)

 


 

紙の様式をそのまま電子化すべきか、分解してから移行すべきかを検討する段階では、バックオフィス業務の課題整理と、ノーコードでの実現範囲をまとめた資料もあわせてご覧いただけます。

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※本記事の実案件に関する記述は、当社が2026年から実施している導入前検証(9社・2026年8月時点で完了1社)のヒアリング記録に基づきます。社名・具体的な金額は伏せています。数値は担当営業が先方から聴取した申告値であり、実測ログではありません。検証の完了報告ではありません。

 

出典:一般財団法人日本規格協会 JIS Q 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項/厚生労働省 HACCP(ハサップ)

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この記事を書いた人

Slopebase編集部
監修
田中雅人(ITコンサルタント)

ソフトウェアメーカー取締役、IT上場企業の取締役を経て、現在、合同会社アンプラグド代表。これまでに、Webサイト制作、大規模システム開発、ECサイト構築、SEM、CRM等のWebマーケティングなど、IT戦略全般のコンサルティングを30年以上実施。現在は、大手上場企業から中小企業まで、IT全般のコンサルティングを行っているかたわらWebマーケティングに関するeラーニングの講師、コラム執筆なども実施。

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