原因の切り分けができたら、次は実際に軽量化に入ります。ここでは効果が大きく、かつファイルや数式を壊してしまう副作用の小さい順に進める方法を解説します。ファイルの作り替えやツール移行ではなく、今あるファイルを安全に軽くすることに集中します。
作業前に必ず取るバックアップと効果測定の記録方法
作業を始める前に守るべきルールが二点あります。
まずは、元ファイルを別名で退避し、日付入りの世代を残してから作業すること。直接元ファイルを編集し、途中で数式が壊れてしまった場合、取り返しがつきません。
もう一点は、着手前のファイルサイズと、ファイルを開く・保存するのにかかる秒数を記録しておくことです。
この記録には二つの意味があります。一つは軽量化の効果を確認すること、もう一つは後述の社内説明の材料としてそのまま使えることです。開くのに40秒かかっていたものが15秒になった、軽量化して3か月後には再び40秒に戻った、といった形で残せれば、問題を感覚ではなく事実として説明できます。
効果の大きい順に試す軽量化の具体手順
以下の対策を、一つ試すごとに保存して動作を確認しながら順に進めます。
【軽量化の対策一覧】
| 対策 |
効果 |
注意点 |
優先度 |
| 最終セル位置のリセット・未使用行列の削除 |
ファイルサイズを小さくできる |
削除後に上書き保存しないと反映されない |
高 |
| 条件付き書式の整理 |
再計算の負荷を軽減できる |
統合のしかたによっては意図した書式が変わる場合がある |
高 |
| 図形・コメントの削除 |
スクロール・保存の処理が軽くなる |
必要なコメントまで誤って削除する可能性がある |
中 |
| 揮発性関数・列全体参照の見直し |
再計算の対象範囲を縮小できる |
範囲を絞りすぎるとデータ追加時に計算漏れが起きる |
中 |
| 外部リンクの解除 |
更新時の待機やエラーを解消できる |
解除した数式は値として固定される |
中 |
| 保存形式の変更(xlsbで保存) |
読み書きの速度が上がる |
他部署の環境では開けなくなる場合がある |
低 |
具体的な操作手順は次の通りです。
● 最終セル位置のリセットと未使用行列の削除
CtrlキーとEndキーで確認した最終セルがデータ範囲より外にある場合、不要な行と列をまとめて選択し削除してから上書き保存する。保存して初めて内部データがリセットされる
● 条件付き書式の整理
ホームタブの条件付き書式からルールの管理を開き、重複したルールや細切れになった適用範囲を統合する
● 図形・コメントの一括確認と削除
オブジェクトの選択と表示を開き、見えない位置に残った図形やコメントをまとめて確認し削除する
● 揮発性関数と列全体参照の見直し
列全体を参照する数式を、実際に使っている範囲に限定し直す
● 外部リンクの解除
データタブのリンクの編集から、使われていないリンクを確認したうえで解除する。解除すると数式が値として固定される
● 保存形式の変更
xlsxからxlsb形式に変更する
条件付き書式の整理や図形・コメントの削除など、表内の各対策には手順としての操作性も伴います。特に外部リンクの解除は数式が値として固定される副作用があるため、必要なリンクかどうかを事前に見極めてから実行してください。保存形式の変更も、マクロや他部署の環境に影響する場合があるため、社内の運用ルールと照らし合わせたうえで判断します。
軽量化しても数か月で元に戻る場合に見直すこと
軽量化した直後は快適でも、数か月後にまた重くなるようであれば、ファイルの中身だけを直しても解決しません。原因は、ファイルを作る運用そのものにあります。
入力用シートと集計用シートを分けず混在させている、過去の履歴を同じブックに延々と積み上げている、列全体に書式を設定している、担当者が変わるたびにシートを追加している、といった運用がこれにあたります。
軽量化は掃除に似ています。掃除をしても、物を置くルールが変わらなければまた散らかります。ファイルを軽くする作業と、重くしないルールづくりは、セットで考える必要があります。