業務棚卸しのやり方|221人調査で「一覧で終わった」26.7%【ワークシート付】

本記事は2026/11/05に更新しております。
業務棚卸しのやり方|221人調査で「一覧で終わった」26.7%【ワークシート付】

業務棚卸しとは、部署で行っている業務をすべて洗い出し、業務ごとの量・担当・やり方・課題を整理することです。業務の削減やシステム化、人員配置の見直しなどを考える出発点になります。

 

ところが、業務の一覧を作ったところで手が止まってしまう、という声は少なくありません。2026年10月、バックオフィス部門のリーダー・管理職221人に実施した当社の調査では、直近3年間に業務棚卸しを実施した部署は92.3%でした。一方で、「実施したが、業務の一覧を作っただけで終わった」は26.7%あり、業務の削減・統合やシステム化までつながったのは10.9%にとどまりました。

 

本記事では、業務棚卸しの目的と項目、やり方の手順、業務量の測り方を解説します。そのうえで、一覧で終わらせないための判定の基準と、判定した結果を要件の整理や導入前の検証(PoC)につなげる方法まで紹介します。判定の列とプルダウンを備えた「業務棚卸しワークシート(Excel)」も無料で配布しています。

01

まずは結論!業務棚卸しは「判定と次の行動」まで決めて終わらせる

業務棚卸しを一覧で終わらせず、業務の削減やシステム化につなげるには、次の3つが鍵になります。

 

  1. 始める前に、ゴール(何時間減らすか、システム化の候補をいくつ選ぶか)を決める
  2. 業務名と担当だけでなく、件数・時間、ミスの多さ、対応できる人数、転記の有無まで書く
  3. 業務ごとに「やめる・まとめる・入れ替える・簡単にする・システム化・残す」を判定し、次の行動と担当、期限を決める

 

今回の調査では、業務棚卸しを「実施する」ことより、「結果を次の行動につなげる」ことに課題がある実態が見えました。

 

調査でわかったこと 数字
直近3年間に業務棚卸しを実施した部署 92.3%(204人/221人)
実施したが、業務の一覧を作っただけで終わった部署 26.7%(59人/221人)
実施した204人のうち、「一覧で終わった」「途中で止まった」部署 36.3%(74人)
実施した204人のうち、業務の削減・統合やシステム化までつながった部署 11.8%(24人)

 

業務棚卸しで「システム化」と判定した業務は、自社の実際のデータで試してから進めると、判断を誤りにくくなります。ノーコード・クラウドデータベース「Slopebase(スロープベース)」では、Excelや紙で管理している業務を自社の流れのままクラウド上に組み立てられ、実際のデータを使った無償PoC(導入前の検証)にも対応しています。

 

まずは本記事の「業務棚卸しワークシート(Excel)」で、部署の業務を書き出すところから始めてください。

02

業務棚卸しとは?目的と、似た言葉との違い

業務棚卸しは、在庫の棚卸しや業務フロー図、引き継ぎ書と混同されることがあります。ここでは、業務棚卸しの意味と目的を確認したうえで、似た言葉や文書との違いを整理します。

業務棚卸しとは

業務棚卸しとは、部署やチームで行っている業務を一つ残らず洗い出し、業務ごとに「どのくらいの量があるか」「誰が担当しているか」「どんなやり方か」「どんな課題があるか」を整理することです。「業務の棚卸し」とも呼ばれます。

 

在庫の数を数える「棚卸し」と同じ言葉を使いますが、意味は異なります。業務棚卸しでは、モノではなく業務を数え、一覧にして見直します。本記事で扱うのは、業務の棚卸しです。

業務棚卸しの目的

業務棚卸しの目的は、大きく次の4つです。目的によって、洗い出す項目やゴールが変わります。

 

目的 具体例 とくに重視する項目
業務の削減・統合 誰も使っていない報告資料をやめる。部署ごとの備品発注をまとめる 業務の必要性、似た業務の有無
属人化の解消 1人しか対応できない請求業務を、2人以上で回せるようにする 対応できる人数、手順の記録の有無
システム化の候補選び 件数が多く転記の多い入金消込をシステムに移す 件数と時間、ミス・手戻り、転記の有無
人員配置・引き継ぎ 異動に備え、担当業務の一覧と作業時間を把握する 担当者、頻度、締め日、作業時間

 

目的が決まらないまま始めると、どこまで細かく洗い出せばよいかが決まらず、作業が長引きます。最初に目的を1つか2つに絞ってください。

業務棚卸しと業務フロー図・引き継ぎ書の違い

業務棚卸しは、部署の業務を「横に広く」一覧にする作業です。一方、業務フロー図は、1つの業務を「縦に深く」たどり、流れと担当を図にするものです。業務棚卸しで改善やシステム化の候補を選び、その業務について業務フロー図を描く、という順番で組み合わせると効果的です。業務フロー図の描き方は業務フロー図の書き方で解説しています。

 

また、業務棚卸しの一覧は、担当交代のときの引き継ぎ書の「担当業務の一覧」にそのまま使えます。引き継ぎ書の書き方は引き継ぎ書の書き方をご覧ください。

03

【独自調査】221人に聞いた、業務棚卸しの実態

ここからは、当社が実施した独自調査の結果をもとに、バックオフィス部門で業務棚卸しがどのように行われ、どこで止まっているのかを見ていきます。

調査概要

項目 内容
調査対象 経理・総務・人事・営業事務などバックオフィス部門で、直近3年以内に業務改善・システム導入・Excel業務の見直しに関わったリーダーもしくは管理職の方:221人(全国)
調査期間 2026年10月14日
調査方法 インターネット調査
調査主体 株式会社NTTデータビジネスブレインズ(自社調査)

※すべての回答データではなく、回答が有効なデータを集計しています。

※構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。

直近3年で業務棚卸しを実施した部署は92.3%

■直近3年間で、あなたの部署で業務の棚卸し(業務を洗い出し、量・担当・必要性を整理すること)を行いましたか。結果として最も近いものをお答えください。

 

業務棚卸しの実施状況と結果を聞いた設問の横棒グラフ。実施し一部の業務の改善につながった48.0%、実施したが業務の一覧を作っただけで終わった26.7%、実施し業務の削減・統合やシステム化につながった10.9%、実施したが途中で止まった6.8%、実施していないが必要だと感じている4.5%、わからない1.8%、実施しておらず必要性も感じていない1.4%。

 

最多は「実施し、一部の業務の改善につながった」48.0%でした。「実施したが、業務の一覧を作っただけで終わった」26.7%、「実施し、業務の削減・統合やシステム化につながった」10.9%、「実施したが、途中で止まった」6.8%と続きます。「実施していないが、必要だと感じている」は4.5%、「わからない/答えられない」は1.8%、「実施しておらず、必要性も感じていない」は1.4%でした。

 

実施した部署を合わせると92.3%(204人)です。業務棚卸しは、バックオフィス部門ではすでに広く行われている取り組みだといえます。一方で、業務の削減・統合やシステム化までつながった部署は、全体の10.9%にとどまりました。

実施した部署の36.3%が「一覧で終わった」「途中で止まった」

業務棚卸しを実施した204人に絞ると、結果の内訳は次のとおりです。

 

業務棚卸しを実施した204人の結果を示したドーナツグラフ。一部の業務の改善につながった52.0%、一覧を作っただけで終わった28.9%、削減・統合やシステム化につながった11.8%、途中で止まった7.4%。

 

実施した204人のうち、「業務の一覧を作っただけで終わった」は28.9%(59人)、「途中で止まった」は7.4%(15人)でした。合わせて36.3%(74人)の部署で、業務棚卸しが改善の行動につながっていません。「一部の業務の改善につながった」は52.0%(106人)で、削減・統合やシステム化まで進んだのは11.8%(24人)です。

 

業務棚卸しに時間をかけても、3つに1つは一覧を作るか途中で止まるところで終わっています。改善につながった部署でも、多くは「一部の業務の改善」にとどまり、業務そのものを減らしたり、システムに移したりするところまでは届いていません。

調査からわかったこと:課題は「実施すること」より「結果を行動につなげること」

同じ調査では、業務棚卸しのほかに、業務フロー図と引き継ぎ書の状態も聞いています。3つの結果を並べると、共通の傾向が見えてきます。

 

設問 「作った・実施した」の割合 「実態どおりに使えている」の割合
業務棚卸し 直近3年で実施:92.3% 実施し、業務の削減・統合やシステム化につながった:10.9%
業務フロー図 ほぼすべての業務で作成:63.8% ほぼすべての業務で作成し、実態と一致:11.3%
引き継ぎ書 引き継ぎ書があった:80.5% 引き継ぎ書だけで業務を進められた:10.0%

※割合はいずれも221人に対する比率です。

 

業務棚卸しも、業務フロー図も、引き継ぎ書も、「作ってはいる」「実施してはいる」部署が多数です。一方で、実態どおりに使える状態や、次の行動まで届いているのは、どれも約1割でした。本記事の後半では、業務棚卸しを一覧で終わらせないための判定の基準と、システム化につなげる方法を解説します。

 

業務フロー図を実態とズレない状態に保つ方法は業務フロー図の書き方で、引き継ぎ書を引き継ぎ書だけで回せる内容にする方法は引き継ぎ書の書き方で紹介しています。

04

あなたの部署の業務棚卸しはどの段階?セルフ診断

自部署の業務棚卸しがどの段階にあるかを、次の表で確かめてください。調査の選択肢と対応させているので、221人のうち何%が同じ段階にいるかもわかります。

 

段階 状態 同じ段階の回答者 次にやること
0 実施しておらず、必要性も感じていない 1.4% 本記事の「業務棚卸しの目的」で、自部署に当てはまる目的があるかを確かめる
1 実施していないが、必要だと感じている 4.5% 目的とゴールを決め、範囲を1部署・1チームに絞って始める
2 実施したが、途中で止まった 6.8% 粒度をそろえ直し、件数の多い業務から先に書き切る
3 実施したが、業務の一覧を作っただけで終わった 26.7% 一覧に判定の列を足し、業務ごとに判定と次の行動を決める
4 実施し、一部の業務の改善につながった 48.0% 判定で「システム化」になった業務を選び、要件の整理と検証に進む
5 実施し、業務の削減・統合やシステム化につながった 10.9% 効果を測り、年1回の定期的な棚卸しで見直しを続ける
目標 定期的に棚卸しを行い、判定と行動が毎回回っている (調査の対象外) 業務量や担当が日々の記録から自動で集計される仕組みにする

※「わからない/答えられない」1.8%は表から除いています。

 

段階3の部署は、すでに一覧という材料を持っています。ゼロからやり直す必要はなく、判定の列を足して業務ごとに結論を出すだけで、段階4以上に進めます。

05

業務棚卸しで洗い出す項目

業務棚卸しの一覧には、次の項目を入れます。業務名と担当だけの一覧では、判定ができずに「一覧で終わる」原因になります。判定に使う項目まで、最初から入れておいてください。

 

区分 項目 書き方のポイント
基本 業務名・分類 「請求書発行」「入金消込」のように、1行に1つの業務を書く。大・中分類(経理、売掛金など)も付ける
基本 担当者 主担当の名前。複数いる場合はすべて書く
基本 頻度 毎日・毎週・毎月・四半期・年1回・随時から選ぶ
量 月間件数・1件あたりの時間 わかる範囲で数字を入れる。月間の作業時間は、件数×時間で計算する
やり方 運用手段 Excel・紙・メール・システムなど、何で回しているか
判定に使う 必要性 必要・要確認・不要。誰がその結果を使っているかで判断する
判定に使う 似た業務・重複 ほかの担当や部署に同じような業務があるか
判定に使う ミス・手戻りの多さ 多・中・少。差し戻しや修正の頻度で判断する
判定に使う 対応できる人数 1人・2人・3人以上・手順が文書化されている、から選ぶ
判定に使う 転記・再入力 ほかのファイルやシステムからデータを打ち直しているか
判定に使う 例外の多さ いつもと違う対応がどのくらい発生するか
結論 判定・理由・次の行動・担当・期限 判定の区分と理由、次にやること、誰がいつまでに行うかを書く

 

本記事のワークシートでは、これらの項目を1行にまとめています。判定に使う項目を入力すると、「推奨判定」の列に判定の目安が自動で表示されます。

06

業務棚卸しのやり方6ステップ

ここからは、業務棚卸しの進め方を6つのステップで説明します。1部署の業務を対象にした場合、目安として約1〜2か月で一巡できる進め方です。

 

業務棚卸しの進め方を6つのステップで示した図。目的・範囲・ゴールを決める、業務を洗い出す、業務量を測る、やり方と課題を書く、判定する、次の行動を決めて定期的に見直す、の順に並んでいる。

ステップ1:目的・範囲・ゴールを決める

最初に、何のために業務棚卸しをするのか、どの部署・チームの業務を対象にするのかを決めます。あわせて、「月20時間分の作業を減らす」「システム化の候補を3つ選ぶ」のように、終わったときのゴールを数字で決めてください。ゴールが決まっていると、一覧を作ったあとに何を判定すればよいかが明確になります。

 

範囲は、最初から全社に広げず、1部署・1チームから始めるのが確実です。

ステップ2:業務を洗い出す

担当者ごとに、毎日・毎週・毎月・年1回の業務をすべて書き出してもらいます。カレンダーや過去1か月のメール、作業日報を見ながら書くと、抜けが少なくなります。

 

ここでつまずきやすいのが、業務の細かさ(粒度)です。「経理業務」では大きすぎ、「請求書の宛名を確認する」では細かすぎます。「入金消込」「請求書発行」のように、始まりと終わりがあり、1人が一続きで行う単位をそろえてください。

 

業務のリストアップから見える化までの進め方は業務プロセス改善で組織全体の生産性を向上~『見える化』から始めるステップ~でも紹介しています。

 

なお、2026年10月の当社調査では、システム化の検討で最も時間がかかった工程として「現状の業務の整理・洗い出し」を挙げた人が19.8%(n=207)いました(詳しくは業務効率化ツールの種類と選び方)。洗い出しに時間をかけすぎないよう、期限を決めて進めることが大切です。

ステップ3:業務量を測る

業務ごとに、月間の件数と1件あたりの時間を記入します。月間の作業時間は「件数×1件あたりの時間」で計算できます。業務量の数字があれば、どの業務から手を付けるべきかを、感覚ではなく数字で決められます。測り方は、次の章で詳しく説明します。

ステップ4:やり方と課題を書く

業務ごとに、運用手段、ミス・手戻りの多さ、対応できる人数、転記・再入力の有無、例外の多さを記入します。担当者に記入してもらったあと、管理職が一覧を見て、記入の基準がそろっているかを確かめてください。

 

このステップでは、同じ業務でも担当者によってやり方が違うことが見えてきます。違いを見つけたら、その場でどちらかに決めず、一覧の備考に書き残しておきます。

ステップ5:判定する

業務ごとに、「やめる」「まとめる」「入れ替える」「簡単にする」「システム化」「残す」のいずれかを判定します。判定の基準は、後半の「一覧で終わらせない判定の基準」で詳しく説明します。

 

判定は、担当者だけでなく管理職も入って行います。「やめる」「まとめる」の判定は、担当者だけでは決めにくいためです。

ステップ6:次の行動・担当・期限を決め、定期的に見直す

判定した業務ごとに、次にやること、担当、期限を決めます。たとえば「月次の売上報告資料を経営会議の資料とまとめる。担当:Cさん。期限:約2か月後の会議まで」のように書きます。

 

最後に、効果を測る時期と、次の棚卸しの時期を決めます。業務は時間とともに変わるため、年1回は定期的に見直してください。

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業務量の測り方|感覚ではなく「件数×時間」で

業務棚卸しでは、業務量を数字で把握することが欠かせません。同じ調査では、業務量を定期的に計測・記録している部署は27.6%(n=221)にとどまりました(詳しくは「業務可視化ツールの選び方」)。多くの部署では、業務量を感覚でしか把握できていないのが実情です。

 

業務量は、次の3つの数字で表します。

 

数字 測り方 例(入金消込)
月間件数 システムの処理件数、Excelの行数、メールの件数などから数える 月200件
1件あたりの時間 担当者が数件を計ってみて、平均をとる。例外の多い業務は、通常と例外を分けて計る 1件3分
月間の作業時間 月間件数×1件あたりの時間÷60 200件×3分÷60=月10時間

 

正確に測る必要はありません。最初は1週間だけ件数と時間をメモし、月の数字に換算する方法でも十分です。大切なのは、全業務を同じ物差しで並べることです。

 

件数が数えにくい業務は、「月に何日、何時間くらいかかっているか」を担当者に聞き、時間だけを記入しても構いません。空欄のままにすると判定ができないため、目安の数字を入れてください。

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業務棚卸しでつまずきやすい点と対策

業務棚卸しが途中で止まったり、一覧で終わったりするのには、典型的な理由があります。代表的な4つと、その対策を紹介します。

業務の細かさがそろわない

担当者ごとに書く業務の細かさが違うと、一覧を比べられず、判定ができません。洗い出しを始める前に、記入例を1〜2行見せて、細かさの基準を共有してください。本記事のワークシートの「記入例」シートを、そのまま見本として使えます。

担当者ごとにやり方が違う

同じ業務でも、担当者によって手順や判断が違うことがあります。同じ調査では、業務改善に取り組み始めたときに最初につまずいたこととして、「担当者ごとにやり方が違っていた」を挙げた人が50.7%(n=221、複数回答)で最多でした(詳しくは「業務可視化ツールの選び方」)。

 

業務棚卸しの段階では、やり方の違いを無理にそろえず、「違いがある」ことを記録しておきます。判定のあとで、その業務の業務フロー図を担当者ごとに描き比べると、標準にすべきやり方が見えてきます。標準化の進め方は業務プロセス標準化の進め方で解説しています。

日々の業務が忙しく、時間がとれない

業務棚卸しは、日々の業務と並行して進めることがほとんどです。全員で一斉に長時間かけるのではなく、「1人30分×2回で書き出す」「件数は1週間だけメモする」のように、1回の負担を小さく区切ってください。範囲を1チームに絞ることも効果的です。

一覧を作ったところで満足してしまう

調査で最も多かった止まり方が、この「一覧で終わった」でした。一覧を作ることが目的になると、判定と次の行動が決まらないまま、ファイルが保存されて終わります。

 

対策は、ステップ1でゴールを数字で決めること、一覧に判定の列を最初から入れておくこと、判定の会議の日程を最初に押さえておくことの3つです。

 

見える化の結果を改善の行動と金額の成果までつなげる考え方は『業務フローの見える化』をコスト削減につなげる、バックオフィス管理職の次の一手も参考になります。次の章で、判定の基準を詳しく説明します。

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一覧で終わらせない判定の基準

業務棚卸しの一覧ができたら、業務ごとに判定を行います。判定の区分は、業務改善の考え方として知られる「ECRS(イーシーアールエス)」の4つに、「システム化」と「残す」を加えた6つです。

判定の6区分

判定 意味 当てはまる業務の例

やめる

(Eliminate:排除)

業務そのものをなくす 誰も読んでいない定例の報告資料、二重のチェック

まとめる

(Combine:結合)

似た業務や重複する業務を1つにする 部署ごとに行っている備品発注、似た内容の集計表

入れ替える

(Rearrange:交換)

順番・担当・時期を変える 月末に集中する作業を月中に分散する、承認を並列にする

簡単にする

(Simplify:簡素化)

手順を短くする。手順書やチェック表を作る 承認段数を減らす、入力項目を減らす、手順を文書にする
システム化 データと手順をシステムに移す 件数が多く、転記やミスが多い請求書発行や入金消込
残す 今のやり方を続け、定期的に点検する 件数が少なく、ミスや属人化の心配が小さい業務

 

ECRSの4つの考え方は、業務効率化フレームワーク実践ガイドでも詳しく解説しています。ECRSを含むフレームワークを使って、現状分析から改善施策まで進める流れは業務プロセス改善の実践フレームワークで解説しています。

判定は「やめる」から順番に考える

判定は、効果の大きい順に考えます。最初に「その業務はなくせないか」、次に「まとめられないか」、その次に「順番や担当を変えられないか」を考えます。そのうえで、残った業務について「簡単にする」か「システム化」か「残す」かを判断します。

 

いきなり「システム化」から考えると、本来やめられる業務までシステムに移してしまうことがあります。やめられる業務をやめてからシステム化を考えると、システム化の範囲も費用も小さくできます。

 

業務棚卸しの判定の流れを示した図。左側は、必要か、似た業務があるか、順番や担当を変えられるかを順に問い、やめる・まとめる・入れ替えるに振り分ける流れ。右側は、月間の作業時間と、ミス・転記・属人化の大きさの2軸で、システム化の候補、簡単にする、残すに分けるマトリクス。

判定マトリクス:業務量×ミス・属人化で決める

「やめる」「まとめる」「入れ替える」に当てはまらなかった業務は、2つの軸で判定します。横軸は月間の作業時間、縦軸はミス・転記・属人化の大きさです。

 

  1. 作業時間が多く、ミス・転記・属人化も大きい:システム化の候補
  2. 作業時間は少ないが、ミス・転記・属人化が大きい:簡単にする(手順書やチェック表を作る)
  3. 作業時間は多いが、ミス・転記・属人化は小さい:簡単にする、または一部を自動化する
  4. 作業時間が少なく、ミス・転記・属人化も小さい:残す(年1回点検する)

 

本記事のワークシートでは、月間の作業時間が10時間以上で、ミスが多い・転記がある・対応できるのが1人のいずれかに当てはまる業務を「システム化候補」と表示します。基準の時間は、部署の規模に合わせて変えてください。

 

判定に迷ったときは、ほかの業務をどう判定し、どう設計したかを見るのも有効です。業務カタログでは、業務ごとの要件とシステム設計を、外した案や見送った判断まで公開しています。

 

業務カタログトップ

 

 

「一覧で終わる棚卸し」と「行動につながる棚卸し」の分かれ目

一覧で終わる棚卸しと、行動につながる棚卸しの違いは、作業の量ではなく、始める前の準備と終わり方にあります。

 

一覧で終わる棚卸しと行動につながる棚卸しを、目的、洗い出す項目、判定、次の行動、その後の5つの観点で比べた図。行動につながる棚卸しは、ゴールを数字で決め、判定に使う項目を入れ、判定と理由、担当と期限を決め、効果の測定と年1回の見直しを行う。

 

観点 一覧で終わる棚卸し 行動につながる棚卸し
目的 とりあえず全部洗い出す 「月20時間減らす」「システム化の候補を3つ選ぶ」とゴールを数字で決める
洗い出す項目 業務名と担当だけ 件数・時間、ミス、対応できる人数、転記の有無まで書く
判定 行わない 業務ごとに判定と理由を書く
次の行動 決めない 次にやること、担当、期限を決める
その後 ファイルを保存して終わる 効果を測り、年1回見直す

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業務棚卸しワークシート(Excel)

本記事の内容をもとに、そのまま使える「業務棚卸しワークシート(Excel)」を用意しました。業務可視化ツールの選び方で配布している「業務見える化シート」が現状を書き出すためのシートであるのに対し、このワークシートは業務ごとに判定し、次の行動を決めるためのシートです。

 

シート名 内容
使い方 記入の手順、色の意味、判定の進め方
ワークシート 業務を1行ずつ書き出し、判定までを記入する表。判定の列はプルダウンで選べる。推奨判定と月間の作業時間は自動で計算
記入例 バックオフィスの6業務の記入例
判定の基準 6つの判定区分と、推奨判定の条件
集計 判定ごとの業務数、月間の作業時間、削減見込みを自動で集計

 

業務棚卸しワークシートの記入例を表にした図。請求書発行、入金消込、月次の売上報告資料、備品購入申請の承認、部署別の残業時間集計、勤怠締めの6業務について、担当、頻度、月間件数、1件あたりの時間、月間時間、ミス、対応できる人数、転記、判定、次の行動を記入している。

※記入例は、書き方を説明するための仮想のモデルケースです。

 

記入例では、件数が多く転記もある請求書発行と入金消込が「システム化」、誰も使っていない残業時間の集計が「やめる」と判定されています。判定のあとは、判定ごとの合計時間を「集計」シートで確かめ、ステップ1で決めたゴールに届くかを確認してください。

 

ワークシートダウンロード

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業務棚卸しの結果をシステム化につなげる方法

調査では、業務棚卸しを実施した204人のうち、業務の削減・統合やシステム化までつながったのは11.8%でした。判定で「システム化」となった業務を、実際の導入までつなげるには、次の順番で進めます。

 

業務棚卸しからシステム化までの流れを示した図。業務棚卸しと判定、システム化候補の業務フロー図、要件の整理、自社データでのPoC、導入と定着、次の棚卸しでの効果確認の順に進み、効果確認から次の棚卸しへ戻る循環になっている。

システム化の候補を1つに絞る

「システム化」と判定した業務の中から、最初に取り組む業務を1つ選びます。月間の作業時間が長く、転記やミスが多い業務ほど、効果が見えやすくなります。複数の業務を一度にシステム化しようとすると、要件の整理に時間がかかり、検討が止まりやすくなります。

 

システム化の手段(既製品のクラウドサービス、ノーコードツール、Excelマクロの改修など)の比べ方は、業務効率化ツールの種類と選び方で解説しています。

候補の業務を業務フロー図にする

選んだ業務について、今の流れを業務フロー図にします。業務棚卸しの一覧では見えなかった、部署間の受け渡しや承認の待ち、差し戻しが見えてきます。業務フロー図は、このあとの要件の整理の土台になります。描き方は業務フロー図の書き方を参考にしてください。

やりたいことを要件として整理する

業務棚卸しの一覧と業務フロー図をもとに、システムで実現したいことを整理します。業務棚卸しで記入した件数・時間・ミス・例外の情報は、そのまま要件の根拠や、効果を測る数字になります。要件の書き方は要件定義書の書き方で解説しています。

Excelとメールで回していた業務を、要件定義・基本設計まで進めて実際にシステムへ移した事例を、業務カタログで公開しています。実際の要件定義・基本設計の内容を確かめられます。

 

業務カタログ「見積管理の脱Excel・システム移行事例」へのバナー。24帳票の見積もりを自動化した事例の要件定義・基本設計の内容を公開していることを紹介している。

 

自社の実際のデータで試してから決める

要件が整理できたら、導入を決める前に、自社の実際の業務データで試します。サンプルのデータでは、自社の例外処理や項目の多さを確かめられないためです。業務棚卸しで記入した「例外の多さ」が大きい業務ほど、実際のデータで試すことが大切です。検証項目の作り方や合否の決め方はPoC設計の進め方で解説しています。

次の業務棚卸しで効果を確かめる

導入したあとは、次の業務棚卸しで、その業務の件数・時間・ミスがどう変わったかを確かめます。効果が数字で見えると、次の業務のシステム化や改善にも取り組みやすくなります。業務棚卸しは一度きりではなく、年1回の見直しとして続けてください。

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「システム化」と判定した業務を、自社のデータで試すなら

業務棚卸しで「システム化」と判定した業務を、まず小さく試す方法があります。ノーコード・クラウドデータベース「Slopebase(スロープベース)」は、プログラミングの知識がなくても、Excelや紙で管理していた業務を、自社の流れのままクラウド上に組み立てられるサービスです。

 

業務棚卸しの判定項目に沿うと、次のように置き換えられます。

 

転記・再入力が多い業務:
Excelで管理していた業務データをクラウド上のデータベースに置き換え、部署をまたぐ受け渡しも同じデータで行えます。WebAPI連携にも対応しており、既存の基幹システムとのデータ連携も視野に入れた構成が組めます

 

対応できる人が限られる業務:
申請・承認の流れや入力画面を、自社の業務に合わせて設定できます。所属や職位による分岐など、例外の多い流れも自社仕様で設定できます。業務の背景や経緯は「ストーリー機能」に残せます

 

業務量を把握したい業務:
登録された業務データを、ダッシュボードでグラフや表に集計できます。次の業務棚卸しで、件数の変化を確かめる材料になります

 

料金は月額30,000円〜の従量課金制です。業務棚卸しで「システム化」と判定した業務のうち1つを選び、自社の実際のデータを使った無償PoC(導入前の検証)で試し、効果を確かめてから広げていくことができます。

 

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業務棚卸しに関するよくある質問

Q. 業務棚卸しとは、簡単にいうと何ですか?

A. 部署で行っている業務をすべて書き出し、業務ごとの量・担当・やり方・課題を一覧にして見直すことです。在庫の数を数える棚卸しと同じ言葉を使いますが、業務棚卸しではモノではなく業務を対象にします。業務の削減やシステム化、人員配置の見直しの出発点になります。

Q. 業務棚卸しでは、どんな項目を洗い出せばよいですか?

A. 業務名、担当者、頻度、月間件数、1件あたりの時間を基本に、判定に使う項目として、必要性、似た業務の有無、ミスの多さ、対応できる人数、転記の有無、例外の多さを入れます。最後に判定、理由、次の行動、担当、期限を書く欄を設けてください。

Q. 業務棚卸しには、どのくらいの期間がかかりますか?

A. 1部署・1チームを対象にした場合、目的の設定から判定と次の行動の決定まで、約1〜2か月が目安です。全社を一度に対象にすると、期間が延びて途中で止まりやすくなります。2026年10月の当社調査では、業務棚卸しを実施した204人のうち7.4%が「途中で止まった」と答えています。

Q. 業務棚卸しの結果が一覧で終わってしまうのはなぜですか?

A. 主な理由は、ゴールが決まっていないこと、一覧に判定の列がないこと、判定と次の行動を決める場がないことの3つです。当社の調査では、業務棚卸しを実施した204人のうち28.9%が「業務の一覧を作っただけで終わった」と答えています。始める前にゴールを数字で決め、判定の会議の日程を先に押さえてください。

Q. ECRSとは何ですか?

A. 業務改善の考え方で、Eliminate(やめる)、Combine(まとめる)、Rearrange(入れ替える)、Simplify(簡単にする)の頭文字をとったものです。効果の大きい「やめる」から順番に考えるのが基本です。業務棚卸しの判定では、この4つに「システム化」と「残す」を加えた6区分で判定すると、次の行動を決めやすくなります。

Q. 業務棚卸しは、どのくらいの頻度で行えばよいですか?

A. 年1回の定期的な見直しがおすすめです。予算の策定や期初の業務計画にあわせて行うと、人員配置やシステム投資の判断に結果を使えます。組織変更やシステムの入れ替えがあったときは、時期にかかわらず対象の部署で行ってください。

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まとめ|業務棚卸しは「判定と次の行動」で完了する

本記事では、業務棚卸しの目的と項目、やり方6ステップ、業務量の測り方、つまずきやすい点と対策、判定の基準、システム化につなげる方法を解説しました。

 

2026年10月、バックオフィス部門のリーダー・管理職221人への調査では、直近3年間に業務棚卸しを実施した部署は92.3%でした。一方で、実施した部署の36.3%が「一覧を作っただけで終わった」「途中で止まった」と答え、業務の削減・統合やシステム化までつながったのは11.8%にとどまりました。

 

業務棚卸しは、一覧を作ったところではなく、業務ごとに判定し、次の行動と担当、期限を決めたところで完了します。まずは本記事のワークシートで、ゴールを数字で決めてから業務を書き出してください。そして「システム化」と判定した業務を1つ選び、業務フロー図、要件の整理、自社データでの検証へと進めましょう。

 

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この記事を書いた人

Slopebase編集部
監修
田中雅人(ITコンサルタント)

ソフトウェアメーカー取締役、IT上場企業の取締役を経て、現在、合同会社アンプラグド代表。これまでに、Webサイト制作、大規模システム開発、ECサイト構築、SEM、CRM等のWebマーケティングなど、IT戦略全般のコンサルティングを30年以上実施。現在は、大手上場企業から中小企業まで、IT全般のコンサルティングを行っているかたわらWebマーケティングに関するeラーニングの講師、コラム執筆なども実施。

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