ここからは、当社が実施した独自調査の結果をもとに、バックオフィス部門の引き継ぎ書がどのような状態にあるのかを見ていきます。
調査概要
| 項目 |
内容 |
| 調査対象 |
経理・総務・人事・営業事務などバックオフィス部門で、直近3年以内に業務改善・システム導入・Excel業務の見直しに関わったリーダーもしくは管理職の方:221人(全国) |
| 調査期間 |
2026年10月14日 |
| 調査方法 |
インターネット調査 |
| 調査主体 |
株式会社NTTデータビジネスブレインズ(自社調査) |
※すべての回答データではなく、回答が有効なデータを集計しています。
※構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。
「引き継ぎ書だけで業務を進められた」は10.0%
■直近3年間に、異動・退職・休職などで業務の引き継ぎを受けた(または行った)際、引き継ぎ書(引き継ぎ資料)の状態として最も近いものをお答えください。

最多は「引き継ぎ書はあったが、口頭での補足が多く必要だった」43.9%でした。「引き継ぎ書はあったが、内容が古く実態と違っていた」26.7%、「引き継ぎ書だけで業務を進められた」10.0%、「引き継ぎ書はなく、ほぼ口頭だけで引き継いだ」9.0%と続きます。「直近3年間に引き継ぎの経験はない」は5.0%、「引き継ぎ自体がほとんどなかった」は4.5%、「わからない/答えられない」は0.9%でした。
引き継ぎ書があった人は、合わせて80.5%(178人)です。引き継ぎ書を作ること自体は、多くの職場で行われています。一方で、引き継ぎ書だけで業務を進められたのは全体の10.0%(22人)です。引き継ぎを経験した198人に絞っても、11.1%にとどまります。
引き継ぎ書があった人の87.6%が「不十分」と回答
引き継ぎ書があった178人の内訳は、次のとおりです。

引き継ぎ書があった178人のうち、87.6%(156人)が「口頭での補足が多く必要だった」または「内容が古く実態と違っていた」と答えています。内訳は、口頭の補足が多かった人が54.5%(97人)、内容が古かった人が33.1%(59人)です。
この2つの答えは、引き継ぎ書の弱点を別々の角度から示しています。口頭の補足が多いのは、引き継ぎ書に書かれていない情報があるためです。内容が古いのは、引き継ぎ書が業務の変化に追いついていないためです。本記事では、この2つの弱点をそれぞれ解消する書き方を、後半で詳しく解説します。
引き継ぎ書が不十分になる背景:手順が1〜2人の頭の中にある
引き継ぎ書が不十分になる背景には、ふだんの業務の手順が、そもそも文書になっていないことがあります。同じ調査では、部署で最も重要なExcel・紙の業務について、手順を説明できる人が2人以下の部署が62.4%(n=221)ありました。また、業務の手順やルールの記録場所として最も多かったのは「Excelファイル内のメモ・コメント欄」で、57.5%(n=221、複数回答)でした(詳しくは「業務可視化ツールの選び方」)。
また、営業事務でのExcelによる属人化も発生している調査もあります。(詳しくは弊社調査の【2026年調査】営業事務のExcel属人化の実態|221人中64.2%が「前任者の謎マクロ・関数」に苦労をご覧ください)
手順が1〜2人の頭の中や、Excelのメモ欄に分散していると、引き継ぎの直前にそれを一気に書き起こすことになります。限られた期間で書き起こすため、判断基準や例外の対応が抜け、口頭の補足が増えていきます。
前任者が作ったExcelファイルも、引き継ぎの壁になります。当社が営業事務経験者221人に行った別の調査では、「誰が作ったか分からない謎のマクロ・複雑な関数」の解読や修正に苦労した経験がある人が64.2%(「よくある」「たまにある」の合計)にのぼりました(詳しくは「営業事務のExcel属人化の実態」)。
マクロで動いている管理簿は、引き継ぎ書に手順を書いても、後任者が中身を読み解けなければ使い続けられません。マクロで書類を連動させていた管理簿を、データの構造に置き換えた事例を以下の業務カタログで公開しています。

調査からわかったこと:課題は「作ること」より「引き継ぎ書だけで回せる中身」
同じ調査では、引き継ぎ書のほかに、業務フロー図と業務棚卸しの状態も聞いています。3つの結果を並べると、共通の傾向が見えてきます。
| 設問 |
「作った・実施した」の割合 |
「実態どおりに使えている」の割合 |
| 引き継ぎ書 |
引き継ぎ書があった:80.5% |
引き継ぎ書だけで業務を進められた:10.0% |
| 業務フロー図 |
ほぼすべての業務で作成:63.8% |
ほぼすべての業務で作成し、実態と一致:11.3% |
| 業務棚卸し |
直近3年で実施:92.3% |
実施し、業務の削減・統合やシステム化につながった:10.9% |
※割合はいずれも221人に対する比率です。
引き継ぎ書も、業務フロー図も、業務棚卸しも、「作ってはいる」職場が多数です。一方で、実態どおりに使える状態まで届いているのは、どれも約1割でした。
業務フロー図を実態とズレない状態に保つ方法は業務フロー図の書き方で、担当業務の一覧を作る方法は業務棚卸しのやり方で紹介しています。